WASSP
「母さん……わたしからもいい?」
「いいわよ、ヤコちゃん。あなたからの質問は久しぶりね」
ヤコは少し恥ずかしそうにしながら母さんを見る。
「サワ兄がほとんど聞いちゃったから、あたしのは、ほとんどどうでもいいことだけど……」
お前……父さんのことを聞くんじゃないだろうな?
ヤコは俺を一瞬見てウインクをしたが、そんな取り決め何もしてなかったから意図が分からん。
「聞きたいのはWASSP。あのホームAIがなんで離れにいるの? 本来ならここにいると思うんだけど」
「WASSPね。驚かないでほしいけど……大丈夫?」
「何が?」
俺もヤコも意味が分からない。ここまで来てさらに驚くようなことはあるのだろうか?
「WASSPはね、宇宙人さんの文明が作った宇宙戦艦なの」
「は?」
前回同様俺とヤコがハモる。いやいや、そういう驚きじゃなくて……異星人の宇宙戦艦だって?
「ち、ちょっと母さん! 異星人の宇宙戦艦がなんでうちの庭にいるんだよ」
「サワ君、落ち着いて」
「いや……え? いやいやいや……は??」
母さんは、俺とヤコが落ちつくのを静かに待っている。一通り驚きが過ぎていくのを待っていた母さんは、お茶を一口飲んでから静かに語り始めた。
「このことを話す時が来るなんてね……。WASSPはベテルギウスで発見された正体不明の宇宙船だったの。それをこの惑星……アリスト3にあるアリストシステム開発と、当時シリウスにあったハイドロメタルで解析することになったの」
「ハイドロメタルは知ってる……今はものすごく大きな企業だよ」
「そう、宇宙船とか作っている会社なの。謎の宇宙船があるけど中身が分からない。だからシステム開発をやっている会社と一緒に解析をし、NGC5694という銀河系外から来たことを突きとめて、そこまでいって帰ってきたのよ」
俺もヤコももう理解の範囲を超えていてポカーンとしている。
なんだこの母親。
「一通り役目を終えたけど、WASSPは私と仲が良かったので一緒に生活することにしたの」
「えーっと……母さん、WASSPは異星人の宇宙戦艦で、母さんと仲がいいから、今は倉庫として庭にいる……ということ?」
「そう、ヤコちゃんは理解が早いわね」
満面の笑みでヤコの頭を撫でる母さん。いや……えっと……ナニコレ?
「WASSPは、いつでも何でも質問に答えてくれると思うわ。母さんに聞いても分からないことがあれば、いつでもWASSPを頼ってあげて。ああ見えても寂しがり屋なのよ」
凄まじい一日だった……。「今まで聞かれなかったから」という理由で多くを語らない母親だと思ったが、聞くと想像を絶することが山ほど出てきた。母さんの人生はどうなっているんだ?
これについて、ヤコは混乱しまくっていて理解するというよりは、「知ってしまった」という感じだ。現役時代の母さんの話が、高校生の理解を越えている。オレもそうだが、ヤコは頭がおかしくなっているようだった。
「サワ兄……母さんはああ言っていたけど……何者なの?」
「わからん……それを聞いてみる?」
「い、いや……怖い。父さんのことは、半年たったら説明するって言ってたのよね?」
「うん……その時に全部教えてくれると思うよ。けど、父さんと母さんの謎が一気に出てきたら俺……どうなるか分からない」
「あたしも……母さんは、母さんよね?」
「そう思う」
「異星人じゃないよね?」
「違うと思う……宇宙人さんは異星人だから見た目で分かるけど……違うじゃん。だから人間だよ」
「そうよね。サワ兄……今日は一緒に寝ていい?」
「……」
「そういう意味じゃなくて、一人だと不安なの、一緒にいて」
「いいよ……というか、俺も不安なんだ」
ヤコと一緒に寝るのは小学生以来だろうか?
変な気持ちになる事は一切ないほどに、母さんの話のインパクトが強すぎて俺は寝ようにも寝れなかったが、ヤコはあれだけ「不安」とか言ってた割にさっさと寝た。
しかも、寝相が悪くて布団は取られ、ベッドから蹴り出されて散々だった。




