学校案内
翌朝、俺もヤコもとんでもない顔で起きてきたようで、二人でその顔を見て仲直りした。母さんは、俺たち二人の顔を見て察したのか、何も言わず笑顔で「行ってらっしゃい」と送り出してくれた。
複雑な気持ちのままで教室に着くと、どう見ても母さんな見た目のユウカさんがいる。うーん……この人のおかげでひどい目にあったが、自分の過ちなので「こいつのせい」とか言えない。しかし、よく似ている。
「ちょっと、サワ兄! 何をじろじろ見ているのよ」
「ご、ごめん……」
ヤコの声で気が付いたユウカさんが、俺を見て母さんと同じ顔で微笑む。
「サワ、おはよう。どうしたんだ?」
や、やばい……母さんにそっくりだけど、雰囲気が違う……か、かわいい。
「あんたには関係ないわよ!」
ヤコが強引に俺の目を塞いだ。
「フフ、兄妹か……いいな」
俺は何も見えないが、ヤコとユウカさんがバチバチにやりあっている空気だけは感じる。というか、ヤコの手が力強く俺の目を押さえるので痛い。
「ヤコ、やめろ!」
「サワ兄、あいつのことなんか見ちゃダメ」
ヤコのやることも分からんでもないが、もう高校3年だ。こんなことをやっている方が恥ずかしいので、ヤコの手を振りほどいて「冷静にしろ」と一喝した。これを見たクラスメイトが「いつもの双子だ」と言ってくるが、もう知らん。
憮然としながら授業の準備をしていると、ユウカさんが頬杖をついて俺のことをじっと見ている。この人は何なんだ?
「サワ、購買まで一緒に来てくれないか?」
「え?」
あっと言う間に、俺の腕を掴んで歩き始めるユウカさん。これを見たヤコが、無言でついてくる。
「この学校は初めてだから、お前にいろいろ教えてもらいたい。いいか?」
「え……いいけど、なんで俺なの?」
「ふふ、お前を気に入っているからだ」
あまりにもド直球の言葉で動揺する。というか、すぐさまヤコが乱入してきた。
「ユウカさん、馴れ馴れしくしすぎよ。一体何を狙っているの?」
「フン、ヤコさんがついて来ていたとはな。私は誰の指図も受けん」
「ちょ、ちょっと馴れ馴れしいからどきなさいよ!」
ヤコは、ユウカさんが俺の腕を掴んでいる手を払おうとするが、ユウカさんは俊敏な動きでそれを回避する。
「ヤコさん、それではダメだな」
完全に学校案内ではなく、移動痴話げんかみたいな状態になっていて恥ずかしい。「お前らやめろ」と二人に言ったが、二人とも聞く耳を持たずになんかやっている。
購買に着いたので、適当に紹介をして物品の買い方とかも教えるが、なんでユウカさんは当たり前のことを知らないんだ?
「今日の昼ごはんにパンを買いたいのだが……どこにもないぞ」
「パンは、3限目の後の休憩時間に入荷するので今はないですよ」
「そうか……また来ないといけないのか」
ほんの少し悲しそうな顔をするユウカさん。うーん……やばいよ、この美人さん。
「もうわかったでしょ? サワ兄、帰るわよ」
「ま、まて、まだ買い物は終わっていない」
「早く買ってよね」
ユウカさんは、ノート3冊とシャープペンシルの芯を買い、レジで必要になる手順などを全部教え、教室に戻ってきた。ヤコは終始不機嫌で怖かったが……俺のせいだな。
授業中は何もなかったが、昼休みにひと悶着あった。
ユウカさんは、昼休みに入ってすぐに席を立って出て行ったので、これでゆっくり飯を食べられると思い、母さんが作ってくれた弁当を食べようと鞄から出す。その時、涙目のユウカさんが横に立っていた。




