デート
待っていた休日だ。ユウカさんと、父さんの出身地に行く。行くだけで思い出すようなものなのだろうか?
母さんは、何かきっかけがあるかもと言っていたが……この話をヤコにもして誘ったが、あいつは怒り出してしまったので、結局ユウカさんと二人で行くことになった。ユウカさんが言うには「ママンの気持ちを考えて、触れない方がいいと思っている」らしい。そうかもしれないし、もしかしたらヤコも触れたくなければ、知りたくもない闇になっているのかもしれない。
「サワ、ここからナムバへは列車だが……」
「そうだよ、どうしたの?」
「い、いや……列車に乗るのは久しぶりで……乗り方が分からんのだ」
「ほぇ?」
「お前についていく」
列車の乗り方が分からないってどういうことだ?
よく分からないが、列車に乗るのが不安なユウカさんは、俺の腕にしがみついている。
「そんなに怖い?」
「いや、怖くはないが……知っているものと違っていたらどうしようと思って」
ますます意味が分からんが、そうこうしているうちにチュモズ駅についた。
それまで不安だとか言っていたユウカさんは、俺から離れて「何も変わっていない!」と言って喜んでいる。
不思議ちゃんかな?
そのままナムバ駅で降り、宇宙港とは反対側にあるエリホへ向かって歩く。ここには綺麗な運河があり、おしゃれな飲食店や雑貨屋さんが並んでいる。せっかくなので、雑貨を見て回ったりするのだが……やっと気が付いた。これはユウカさんとのデートだ。
ふと彼女の顔を見ると、満面の笑みで雑貨を手にとっては「サワ、これいいぞ」と言いながら見せてくる。俺もそれを手にとって見てみたりして楽しい。
「エリホってほとんど商業地なのかな?」
「うーん……私の頃……いや、私の調べた情報だと、住宅街もあるらしいぞ」
「だよね、じゃないとこんなお店だらけの場所じゃ落ち着かないよ」
地図を見ながら、エリホの新興住宅街と思われるところまでやってきた。少し疲れたので、エリホ公園というのがあったのでそこで一休みする。
道路に囲まれた真四角の公園で、不思議と落ちついていてのんびりできる。その道路の向こう側には、いくつかの商店が並んでいたので、軽食を買ってきてベンチに座ってそれを食べる。
「このクレープ美味しいよ」
うまいからどうぞとユウカさんに差し出すと、恥ずかしそうにそれを頬張った。満面の笑みでその味を表現しつつ「これも」と差し出してくるユウカさん。俺も彼女と同じようにそれを少しだけもらい、二人で楽しんだ。
「ユウカさんは、このあたりまでよく来るの?」
「いや、エリホは初めてだ」
「そうなんだ。普段はどこに?」
「ち、チュモズだ」
「あら? んじゃ近所?」
「……」
なぜか照れているユウカさん。よく分からんが、この照れは「お前の家に住んでいる」を別の表現で言ったことに対して、俺が真面目に反応したからなのだろうか?
「そうそう、今住んでいるあの家、俺達が住む前は、軍のお偉いさんの家だったらしいよ」
「そうなのか?」
「母さんが言ってた。なんでも、NGC……銀河系外で戦死した人の実家だったらしくて、その人の実家が無人になるから、軍から母さんに管理を依頼されたんだって」
「そうだったのか……」
ユウカさんはベンチに座りながら地面を見ている。
「玄関の大きな壁には、その人の巨大な肖像画が飾られていたらしいよ。どんな人だったのか見たかったな」
「……」
「あれだけ大きなお屋敷だから、そういうすごい人だったんだと思う」
「ありが……とう」
ユウカさんの声は少し小さかったので聞こえにくかったが、「ありがとう」と言ったような気がした。




