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19/21

他人の空似

 ユウカさんとの同居が始まって一か月ほど経過。最初は慣れない感じだったが、だいぶ落ち着いてきた。というのも、ユウカさんは外では積極的になるが、自宅にいる間はヤコよりおとなしい。また、俺がリビングでくつろいでいても、迫ってくるなどはなく、むしろヤコと女子トークをしているほどだ。

 だから、余計に外に出た時のギャップがすごいので……も、もしかして意図的にギャップ萌えを作っているのか?

 そんなある日、夕食後に期末テストに向けて勉強をしていると、ユウカさんが珍しく声をかけてきた。

「サワ、質問したいのだが、今いいか?」

「いいよ、どうしたの?」

「この質問へは答えなくてもいいのを、先に言っておくぞ」

「?」

「お前たちの父親はいるのか?」

「あ……」

「すまない、つい、気になってしまってな」

「母さんに以前聞いたんだけど、はぐらかされて……ヤコは俺がそれを聞いたのを知って激怒してぶたれたよ」

「フフ……ヤコさんさすがだな」

「まぁ、ヤコの意図も分かるけど。そんな感じで、幼少のころから母さんとヤコの三人だったよ」

「悪かった」

「ユウカさんのご両親は、仕事で忙しいの?」

「ま、まぁ……そんなところだ」

「父親がいるというのはどんな感じ?」

「親が二人いるという感じだな」

「……」

「……」

 二人で噴き出してしまった。全然答えになっていないけど、確かにそうだ。母さんが二人いるようなものか……って、ユウカさん、母さんにそっくりだから……。

「ユウカさん、俺から質問してもいい?」

「ん? いいぞ。どうした?」

「この質問へは答えなくてもいいのを、先に言っておくね」

 またユウカさんが笑う。かわいいけど……この質問はダメかな?

「母さんにそっくりなんだけど……なんで?」

「……」

 ユウカさんが黙ってしまった。

「ごめん……」

「いや、いい。もっと早くその質問が来ると思っていたんだ」

「そうなの?」

「ああ、どう見てもそっくりだろ?」

「う、うん。転校してきたとき、母さんが化けているとヤコと言ってたくらい」

「フフフ、ズバリと言おう。驚くなよ」

「……」

「他人の空似だ」

 ユウカさんのドヤ顔で「他人の空似だ」とか言うが、自分で言ってて笑っているから、妙にポンコツなドヤ顔になってて笑ってしまう。

 結局二人で爆笑して「答えになっていない」と「答えたぞ」の応酬で盛り上がってしまった。

「あらあら、リビングがにぎやかだから来てみたけど、お二人さん楽しそうね」

 母さんがやってきたが……やっぱりどう見てもそっくりだ。

「母さん、ユウカさんに『母さんに似ているのはなぜ?』と聞いてたところなんだ」

「まぁ、私も知りたいわ。ユウカさん、どうして私とそっくりなの?」

 ユウカさんは意表を突かれたのか、普段と全く見せない顔をした。

「オー……奥さん」

 彼女はなぜか奥さんとか訳の分からないことを言い出す。これがまた面白い。

「はいはい、奥さんは私ですね。どうしました?」

「いや……その質問がこちらに向けられるとは思いもしなかった」

「ふふ、こうやって同じ見た目に見える二人がいるのは面白いですね」

「で、母さんとユウカさんが似ている理由は?」

 俺が早く答えてと催促すると、母さんもオウム返しでユウカさんに「ユウカさんと似ている理由は?」と聞く。

「他人の空似だ」

 絶好のタイミングでオチをつけるユウカさん。全員で笑いこけた。

 一通り笑った後に、ユウカさんが真面目な顔になって、母さんに質問を投げつけた。

「ママン、サワとヤコさんが父親について知りたいと言っているぞ」

 母さんは彼女を見て頷いた。

「サワ君、知りたいのは分かっているわ。小さいころにほんの少しだけ一緒にいたことがあるんだけど、覚えている? 昔のことを思い出してみて」

 小さいころ……いや、記憶にないが……。

「それって俺が何歳の頃?」

「1歳くらいの頃よ」

「一番古い記憶でも3歳くらいの時の事しか覚えてないよ」

 母さんが自然な感じでユウカさんを見て「そう……まだ早かったようね」と言った。確かに……「早かった」と言った。どういう意味だ?

「母さん、『早かった』てどういう意味?」

「フフ、もうすぐ分かるの。そのために今確認したのよ」

「それって、俺が思い出すという事?」

「そうよ。今は完全に忘れていると思うの。けど、絶対忘れないほど強烈だから、思い出すのを待っているの」

「なんで、そんなの分かるの?」

「母親だからよ。私の大切なサワ君とヤコちゃん。あなたたちの成長は手に取るように分かるの。もうすぐ……あと少しだけ我慢して」

「母さんを悲しませたくないから我慢はするけど……ヒントない?」

 なぜかユウカさんがズッコケている。

「ヒントね……あなたの父さんは、ここ、アリスト3のナムバ出身よ」

「ナムバ……隣町じゃん」

「そう、休日にでも行ってくると思い出すかもしれないわ。今度、ユウカさんと行ってらっしゃい」

「うん、ナムバといっても広いけどどのあたりなの?」

「エリホ地区よ」

「エリホなんだ……分かった、次の休みの日にでも行ってくるよ」

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