母さんの戦歴
「え? 300万年前? 宇宙戦争?」
「坊ちゃん、いきなりですみません。私は、300万年前に作られた兵器で、同型機を修理していたのが宇宙人さんでした」
「い、いや……300万年て……すごい昔」
「はい、あの戦争で、私はこの頭脳を狂わされました。10万光年離れたベテルギウスまで、通常空間を移動させられたんです。私と同じ宇宙船が450機あり、すべてが300万年かけて移動しました」
「宇宙人さんは……300万歳なの?」
「いいえ、彼は冷凍睡眠装置を作って眠っていました。それを奥様が眠りから覚めさせて、人間社会に迎え入れたんですよ」
い、いや……か、母さん……ええ?
冷凍睡眠……人間社会に迎え入れた??
母さんは、そんなすごいことをしてるのに……なんで引退して、こんなところで不動産の管理人みたいなことをしているんだ?
「WASSP、全然呑み込めないんだけど……ごめん、母さんは、そんなことをしていたなら重要人物なんじゃないの?」
「はい、奥様は、あのプロジェクトで重要な役割を担いました。もっと他に優秀なメンバーもいたのですが、奥様はそこで立てた功績を置いて、あなたとヤコちゃんのためにここで子育てを選んだんです」
「NGC5694へ行ったと言ってたけど……その時に母さんは戦闘を経験しているの?」
「はい、私と同型の最終バージョンを10分で沈めました」
「ち、ちょっとまって……WASSPと同型の宇宙戦艦と戦って、10分で勝利したの? 母さんが?」
「はい、その時の兵器は倉庫にありますよ。ご覧になりますか?」
う、嘘だろ? 母さんが、宇宙戦艦を10分で沈めたってどういう事だ? しかも、その兵器がこの開かずの倉庫にあるって……母さんは何も言ってなかったぞ。というか……スケールがでかすぎて全部嘘であってほしい。WASSPがユーモアを出して最後に「嘘ぴょ~ん」と言ってくれ。頼む。
WASSPが、廊下の照明を波打つような感じで点灯させ、「その方向に歩いていけ」と言う。信じがたいことが今起きているが、好奇心もある。見るだけなら……。
扉の前までやってきたら、その扉がシュッと開き、内部の青色の照明が一斉に点灯した。
「坊ちゃん、見えますか? あれが、お母さまが使用した宇宙対応の203mm対戦車砲です」
そこには、やたらと巨大な大砲が鎮座していた。
いや……レーザー砲とかならわかるけど……対戦車砲?
「た、対戦車砲って……何?」
「現在はほぼ利用されていないものですが、巨大な弾丸を打ち出す兵器です。レーザー砲のスピードには劣りますが、空気のない宇宙空間で役に立つように仕立てられているんですよ」
「宇宙って空気ないよね……その……砲弾を打ち込んで勝てるものなの?」
「坊ちゃん、確か今週はテスト期間中ですよね」
「うん」
「なら、分かるでしょう。奥様は、レーザー徹甲弾、徹甲榴弾、水榴弾の順番で三点バースト射撃を行いました」
「??」
「簡単なことですよ。最初のレーザー徹甲弾で、相手の装甲を溶かして穴をあけ、そこに砲弾を飛び込ませる。この砲弾には、戦艦の内部冷却用のナトリウムが詰められました」
WASSPが全く分からないことを言い始めるが、近くにあった黒い壁に映像が表示され、この内容が絵として動画で表示された。
「第二弾もナトリウムが詰まっていますが、内部の火薬でこのナトリウムを蒸発させるようにしていました」
動画は、初弾のレーザーで外板に穴をあけ、そこに飛び込んだ砲弾が装甲をぶち抜き、内部の液体をそこにぶちまけた。そのあと、同じ場所に第二弾が入って爆発し、モワモワと水蒸気が広がった。
「第三弾がまた同じ場所に飛び込んで、中に詰まっている過酸化水素水が爆発と同時に広がります」
その動画は、水のようなものが広がった瞬間に画面が真っ白になった。
「坊ちゃん、ナトリウムと水の反応は勉強しましたよね?」
「う、うん……激しく反応するよ」
「そうです。空気がなくても反応します。また、過酸化水素水なので酸素が多めです。ナトリウムと水で水素ができます。水素と酸素が結合するのでさらに爆発します」
「……母さんが、これをやったの?」
「はい、奥様一人で立ち向かって勝利しました」
俺は……興味本位でWASSPに聞いただけだった。けど、とんでもないものを知ってしまった。母さんは、この巨大な大砲を操作して、宇宙戦艦を木っ端みじんにした。乗っていた人達……宇宙人さんの文明の人たち……皆殺しにした。母さん……嘘だよね?




