母さんの提案
「母さん、おはよう」
「おはよう。昨日はちゃんと寝れた?」
「うん、しっかり勉強もできたから、今日のテストはばっちりだと思う」
「そう、サワ君はいつもしっかり準備をしているから偉いわね」
母さんは、いつも俺達よりも早く起きて朝の準備をしている。この当たり前の風景に、今日はユウカさんがいる。また変わったことになるかもしれない。
「ユウカさん、おはようございます」
「オー……はようございます」
寝ぐせ一つない、朝からバシバシにキメているユウカさんがやってきた。母さんそっくりなのが違和感ありまくりだが……話し方が全然違うのでそこだけが救いだ。
「ゆっくり寝れましたか?」
「あ、ああ。久しぶりのベッドでリラックスできた。本当にありがとう」
「ユウカさんのご両親は、お仕事が忙しいの?」
「今月は、ほぼ出張で帰ってこないと言っていた」
「そうですか……」
母さんが、悲しそうな顔をして俺を見た。その意味が分からず母さんを見ていると、静かに頷いた。そのジェスチャーの意味を教えてよ……。
母さんは、ユウカさんの方を見てからとんでもないことを言った。
「ユウカさん、一人暮らしは大変だと思うので、ここに住みなさい」
「え?」
今度はユウカさんと俺がハモる。ヤコがいないのが救いだが……。
「そ、それってどういうことだ……いや、どういうことですか?」
「ユウカさんが、一人で生活をするのは見てられないの。ここなら、私もいるし、サワ君もヤコちゃんもいる。ホームAIのWASSPもあるので寂しくないと思うわ」
ユウカさんが俺を見る。「私がここにいてもいいのか?」という、期待と不安の混じった表情だ。母さんも俺を凝視してくる。全く同じ見た目の二人からそれぞれ違った視線を向けられるとは……。
「へ、部屋も余っているし……ユウカさんが昨晩ぐっすり寝れたならいいんじゃないかな?」
「サワ! ありがとう!!」
ユウカさんが喜びのあまり抱き着いてきた。喜んでくれるのはうれしいけど……ヤコの意見は聞かなくていいのかな?
「ユウカさん、サワ君もそう言っているので決まりね。今日は学校帰りに必要なものをまとめて持っていらっしゃい。もし、大きな荷物があって一人では無理なら、私が運ぶので言ってくださいね」
ユウカさんは「ママン」と言って母さんの手を取って喜んでいる。喜び方が異様なので、もしかしたら……とんでもないボロアパート暮らしなのだろう。
ユウカさんと二人で朝食をとっていると、寝ぐせ爆発で目の下クマだらけのヤコが起きてきた。
「みんなおはよう……」
ユウカさんは寝起きからバシバシにキメていたが、ヤコはそれ以前の状態だった。昨晩、俺が部屋を抜け出してユウカさんのところへ行くのを阻止するために、金属バットを持って待機していたようなので仕方がない。
ヤコも一緒に朝食をとるが、食べ終わるころには身支度をしていないことに気が付いて、あわてて部屋に戻っていった。
待ってられないので、ユウカさんと一緒に登校するが……母さんに似ているのはもういいとして、こんなに美人だとは思わなかった。ある意味、まじまじと俺がユウカさんを見ていたので、彼女はそれがうれしかったのか、腕組みをした。というか、俺もなんかうれしい。
教室に着くまでの時間が、永遠に続くように感じてしまった。




