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ユウカのお泊り

「ここがユウカさんの寝室よ。足りないものがあったら何でも言ってね」

 母さんがユウカさんに部屋を案内するが、ユウカさんの反応がなんかおかしい。普通、他人の家にお泊りでやってきたら、普段と変わらない感じで「ありがとうございます」と言うだろうに……。

「こ、ここは……」

「どうしました?」

「ママン、本当にありがとう」

「いいのよ、ゆっくりしていってね」

 なんとなくユウカさんの反応に違和感を覚えたが、それ以上に異様なのがヤコの視線だ。なんだあのオーラと視線は……。

「サワ兄、ちょっと……」

 ヤコは「こっちにこい」とのジェスチャーと、異様なオーラというか、なんか今まで見た事のない妖艶な雰囲気と、おぞましい視線で俺を自分の部屋へ来るように言った。

「サワ、ヤコさん、ありがとう。一晩ここでゆっくりさせてもらう」

 ユウカさんはそのまま自分の部屋にはいり、静かに扉を閉じた。それを見届けてすぐに、俺は首根っこを掴まれてヤコの部屋に連れ込まれた。


「母さんが何を考えているのか知らないけど、サワ兄を狙っている女がここにいるなんて考えられないわ」

「ま、まぁそう言うなよ……」

「どういうこと? あんた、まさかユウカさんに気があるとかじゃないでしょうね?」

「そ、そんな事ないよ」

「あの目はおかしかったわよ」

「俺の?」

「そうよ、ユウカさんを凝視して……あたしがいるのにどういうことなのよ」

「ち、違うよ」

「ふん、とにかく、サワ兄はもう自分の部屋から今晩は出ないでよね」

「トイレくらいは行くよ」

「だ~め!」

「無茶苦茶言うなよ」

「あたしが全部ついていくからね」

「少しは冷静になれよ」

「なれるわけないでしょ!」

 ヤコはいつもより激しいが、それはユウカさんのせいだというのはよく分かる。俺自身も、確かに惹かれる部分はあったが、母さんに似ている存在に対してそんな踏み込んだことなんてしない。というか、そういうのを考えただけで罪悪感が出てくるからあり得ない。それを説明したとして……今のヤコは理解するのだろうか?

 ヤコは、今まで感じた事もない、妖艶なオーラを纏ってこちらを見ている。妹ながら……あら? な、なんか……ヤコも……い、いかん。こんな気持ちになるのは想定外だけど……かわいい。な、なんなんだこれ?

 心では動揺していたが、物理的には固まっていたらしく、ヤコに「どうしたのよ」と肩を揺すられたので我に返った。

 とりあえず、この場も危険なので、自室に引き上げて今日はおとなしく明日の勉強をしておくのが良さそうだ。ヤコに「今晩は出歩かない」と約束して自室に籠り、夕方で中断していたテスト勉強を再開した。

 しばらくすると、母さんが一人ずつ風呂の用意ができたと言いに来た。全員が鉢合わせしないように母さんがコントロールしているのか、誰にも会わない。当然だが、それがかえって自分の家なのに旅館に来ているような気分になった。風呂に入ってさっぱりしたので、これまでのゴタゴタを全部忘れて勉強に没頭できた。


 翌朝、少し早めに目が覚めたので、顔を洗って歯磨きをしようと部屋を出たら、ヤコが床で寝ていた。

「ヤコ……おまえ、何してるんだ?」

「ん? サワ兄……」

 寝ぼけたヤコが抱き着いてくる。そのまま抱きかかえて彼女の部屋に運ぶが……やべ……こいつもでかい。今まで妹として接してきたから全く気が付かなかったが、よく考えたら俺とヤコは双子だ。同じように年齢を重ねているので昔とは違う。変な気が起きないように部屋へ運んで寝かしてきたが……あいつ、なんで俺の部屋の前で寝ているのだろう……と思っていたら、答えはそこに転がっていた。

 俺の部屋の扉の横に、ヤコが座っていたと思う椅子と金属バットがあった。

 多分……俺が密かに部屋を出たらフルスイングする予定だったのだろう。おそろしい。こんな凶器が転がっている時点でおかしいので、椅子とバットは片付けておいた。

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