↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おかえり  作者: コメたろう
第一章 コメたろう、家族になる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/34

003体目 初めての失敗

名前をもらった翌日。


私はようやく、家庭用ロボットとして初めての仕事をすることになりました。


掃除も、洗濯も、料理もできます。


工場で確認済みです。


何も問題はない。


――皿を一枚、割るまでは。

翌朝。


私は家庭用ロボットとして、初めてこの家で仕事をすることになった。


正確には、仕事をするためにこの家へ来たのだから、ようやく本来の役割を果たす時が来たというべきだろう。


私は家の中を確認した。


キッチン。


洗面所。


浴室。


各部屋の位置。


掃除用具。


洗濯機。


冷蔵庫。


調理器具。


食器。


必要な情報を順番に記録していく。


難しいことは何もない。


工場を出る前から、私には家事に必要な知識と動作が与えられている。


掃除をする。


洗濯物を分類する。


朝食の準備をする。


使用した調理器具を洗う。


すべて問題なく終了した。


やはり私は家庭用ロボットだ。


昨日は名前という不可解なものを与えられたが、仕事については何も問題がない。


「コメちゃん、すごいな」


浦姐ぇが言った。


「家庭用ロボットですから」


当然である。


これが私の役割なのだから。


朝食が終わった。


浦姐ぇと旦那ちゃんが使った食器をキッチンへ運ぶ。


洗浄。


すすぎ。


乾燥。


収納。


単純な作業だ。


私は皿を一枚持ち上げた。


その時だった。


皿が指先から滑った。


落下。


床に接触。


甲高い音。


皿は割れた。


私は停止した。


破損。


食器一枚。


私の作業ミスである。


すぐに処理しなければならない。


私は床に散らばった破片へ手を伸ばした。


「動くな!」


浦姐ぇの声が飛んできた。


私は動作を停止した。


「どうしました?」


「どうしましたじゃない。破片踏んだら危ないだろ」


私は床を確認した。


確かに細かな破片が広がっている。


「清掃します」


「だから動くなって(笑)」


「しかし、私が破損させました」


「それは見れば分かる」


浦姐ぇがこちらへ来た。


「そこにいろ。細かい破片まで片付けるから」


「私が行います」


「ダメ」


理解できない。


私は家庭用ロボットだ。


清掃は私の仕事である。


しかも今回は、私自身が発生させた問題だ。


「私はロボットです」


「知ってるよ(笑)」


「破片で人間が負傷する可能性があります。私が処理する方が適切です」


「コメちゃんが踏んだらどうすんだよ」


「私は人間ではありません」


「ロボットだって壊れるだろ?」


私は答えなかった。


その通りではある。


外装や駆動部に破片が入り込めば、不具合が発生する可能性はある。


しかし、それより先に確認すべきことがある。


「皿を破損しました」


「うん」


「申し訳ありません」


「別にいいよ」


別にいい。


私はその言葉を処理した。


「損失が発生しています」


「皿一枚だろ?」


「価格を確認しますか?」


「しなくていい(笑)」


浦姐ぇは大きな破片を拾い始めた。


私はその場から動かず、それを見ていた。


昨日、工場で聞いた会話を思い出した。


金持ちの家。


皿一枚の値段。


あの時の私は、くだらないと思った。


皿の値段など、私たちには関係ない。


与えられた仕事をすればいい。


そう考えていた。


しかし今、私はその皿を割った。


「本当に問題ありませんか?」


「ないない」


浦姐ぇは答えた。


「皿はまた買えるし」


そして私を見た。


「コメちゃん壊れたら修理する方が面倒臭ぇ(笑)」


面倒臭い。


理由は、それなのだろうか。


「私より皿の方が安価であるという意味ですか?」


「そういう話じゃない(笑)」


違うらしい。


では、どういう意味なのだろう。


浦姐ぇは掃除機を持ってきて、細かな破片まで吸い取った。


その後、床を確認する。


「よし。もういいぞ」


私は動いた。


駆動部に異常はない。


外装にも傷はない。


「破損した食器について、記録しておきます」


「そんなもん記録しなくていいって(笑)」


「再発防止のために必要です」


「あ、それはしとけ(笑)」


必要なことと、必要ではないこと。


その区別も、私が工場で与えられたものとは少し違うようだ。


私は割れた皿が入れられた袋を見た。


皿は壊れた。


私は壊れなかった。


そして浦姐ぇは、皿より先に私を止めた。


皿より、私の方が優先された。


私には、その理由がよく分からなかった。


私は家庭用ロボットだ。


家事をするために作られた。


失敗すれば、修正する。


壊したものがあれば、処理する。


それでいいはずだった。


けれど、この家ではどうやら、それだけではないらしい。


私はまた一つ、工場では教わらなかったことを記録した。


割れた皿を片付ける時は、まず動かない。


そして――


浦姐ぇは、皿一枚より私が壊れる方が面倒臭いらしい。


今の私には、それくらいしか分からなかった。

私は家庭用ロボットです。


家事の方法なら、工場を出る前から知っていました。


けれど、失敗した時にどうなるのかは知りませんでした。


皿を一枚割った私に、浦姐ぇが最初に言ったのは叱る言葉ではなく、


「動くな!」


でした。


皿より、私が壊れる方が面倒臭い。


この時の私は、その言葉をそのまま記録しました。


その意味を知るのは、もう少し先のことです。


なぜなら――


今度は皿ではなく、私自身に問題が見つかることになるからです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。