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おかえり  作者: コメたろう
第二章 コメたろう、弟が出来る

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021体目 金メダルと銅メダル

クリーム色のロボット。


白いアンドロイド。


色が違えば、当然別の個体。


……の、はずなのですが。


金造が出した遺失物届は、少しずつムギじろうの近くまでやってきます。


そして浦姐ぇたちも、とうとう気づいてしまいました。


もしかして――。


探されているの、ムギじろうじゃない?

派出所へ戻った警察官は、先ほど受理した遺失物届に目を通していた。


クリーム色。


人型ロボット。


ふと、思い出す。


「そういえば、この間アンドロイドに声を掛けてたよな?」


同僚の警察官が顔を上げた。


「え? この間のアンドロイドですか?」


「ああ。何色だった?」


「白です」


「白か……」


警察官は手元の遺失物届を見る。


そこには、クリーム色と書かれている。


「そのアンドロイド、どうした?」


「近所の方が迎えに来ましたよ」


「そうか」


「だいぶ薄汚れていましたが、白で間違いありません」


「じゃあ違うな」


警察官は遺失物届を閉じた。


その頃。


浦姐ぇはコメたろうを乗せ、車を走らせていた。


向かっているのは、以前、名無しクン――今のムギじろうがいた場所だった。


車を停め、コメと一緒に辺りを見ていると、声を掛けられた。


「あー、ちょっとそこの奥さん」


「はい?」


振り返ると、警察官が立っていた。


「あ、この間のアンドロイドを迎えに来た方ですよね?」


「ええ、そうですけど」


「いや実は、クリーム色のロボットを探している方がいて……」


「クリーム色のロボットですか?」


浦姐ぇは首を傾げた。


そして、隣にいるコメを示す。


「これは、うちのコメたろうですが……」


「コメたろう?」


「えぇ。保証書見ます?」


警察官が少し驚いた顔をした。


「お持ちなんですか?」


「一緒に出掛ける時は大抵……途中で何かあったら困りますし……」


浦姐ぇは、ちらりと警察官を見る。


「……」


警察官には、少々心当たりがあった。


「保証書を拝見しても?」


「もちろんですわ」


浦姐ぇは、にっこりと微笑んだ。


保証書を受け取った警察官が内容を確認する。


「コメたろうくん、シリアルナンバーを見せてくれるかね?」


コメは浦姐ぇを見る。


浦姐ぇが頷く。


コメがシリアルナンバーを見せると、警察官は保証書と見比べた。


「うむ、間違いない。お時間取らせました。ご協力ありがとうございます」


「いえいえ。お疲れ様です」


浦姐ぇは警察官に労いの言葉をかけ、軽く会釈した。


警察官と別れ、二人は車に戻った。


ドアを閉める。


「……コメ……」


「……浦姐ぇ……」


二人の視線が合った。


「クリーム色のロボットって……」


「しっ! 家で話そう」


浦姐ぇは車を発進させた。


家に着くなり、浦姐ぇとコメは顔を見合わせた。


「えっと……ムギじろうは、コメたろうの友達です」


「そうです。僕の友達で、家に遊びにきています」


「……」


「……」


「えっと……ムギじろうは、コメたろうの友達です」


「そうです。僕の友達で、家に遊びにきています」


二人とも、下手くそな芝居を始めた。


旦那ちゃんが不思議そうに二人を見る。


「和たん、何かあった?」


「この間、ムギじろうがいた場所で警官に声を掛けられた……」


「警察官に?」


「うん。クリーム色のロボットを探している人がいるんだって……」


旦那ちゃんは黙ってムギじろうを見る。


背中の傷はまだ残っている。


だが、それ以外はきれいに磨かれ、本来の白い身体はピカピカになっていた。


「……クリーム色、ですか」


「うん……」


浦姐ぇもムギじろうを見る。


「白も、汚れたらクリーム色に見えないかな?って……」


旦那ちゃんは少し考えた。


「……わかった。フィルムでラッピングしよう」


「……は?」


浦姐ぇが旦那ちゃんを見る。


コメも見る。


ムギじろうも見る。


「コメくん、ムギじろうをラッピングフィルムでカラーチェンジしよう」


「色を変えるのか?」


「はい」


「ぼく、何色になるんですか?」


「色か……」


浦姐ぇは考える。


「あっ!」


コメが嫌そうな顔をした。


「……嫌な予感がする」


「コメたろうはゴールド、ムギじろうはブロンズでどうだろう?」


「……俺もやるのか?」


「ほら、稲穂を黄金色って言うじゃん?」


「……なるほど」


「だからコメたろうはゴールド」


旦那ちゃんが尋ねる。


「では、ムギじろうがブロンズなのは?」


「麦も茶色っぽいじゃん」


「なるほど!」


ムギじろうは嬉しそうだ。


コメはしばらく考えた。


「それじゃ俺、C-3POみたいじゃね?」


「……」


浦姐ぇはコメを見る。


「似合うんじゃね?」


「そういう問題じゃねえ!」


浦姐ぇ、旦那ちゃん、うららの三人でカーショップへ行き、ゴールドとブロンズのラッピングフィルムを買ってきた。


帰宅すると、さっそく作業を始める。


「じゃ、まずコメから」


「なんでだよ!」


「初めてだから」


「だからなんで俺なんだよ!」


「ムギじろうで失敗したら困るじゃん」


「俺ならいいのかよ!」


旦那ちゃんが穏やかに言う。


「コメくん、練習させてください」


「旦那ちゃんまで!?」


「コメさん、ゴールド楽しみです!」


ムギじろうが目を輝かせる。


「…………」


コメは諦めた。


ゴールドのフィルムを切り分け、ドライヤーで熱を加えながら丁寧に貼っていく。


最初は少しシワが寄った。


「あっ」


「今『あっ』って言ったよな?」


「気のせい」


温め直して伸ばす。


曲面に沿わせ、空気を抜きながら少しずつ貼る。


コメ一体を貼り終える頃には、三人ともすっかりコツを掴んでいた。


全身ゴールドになったコメを前に、旦那ちゃんが言う。


「では、本番に入りましょう」


「俺は練習だったのかよ!」


続いてムギじろう。


今度はブロンズのフィルムを手足から貼っていく。


「ムギじろう、動かないでね」


「はい!」


ドライヤーで温めながら、腕、脚へと丁寧にフィルムを貼る。


コメが横から口を出す。


「肘のところ気をつけろよ。そこ俺で一回失敗したから」


「経験者は語る」


「被害者だ!」


やがてムギじろうの手足がブロンズに変わった。


浦姐ぇは満足そうに眺めて――。


「あ……身体どうする?」


一同、止まった。


ムギじろうの背中には、まだ傷が残っている。


交換用の筐体は、まだ届いていない。


「筐体が届いてからにしましょう」


旦那ちゃんが言った。


その時だった。


ピンポーン。


「……」


全員が玄関を見る。


「はーい」


浦姐ぇが玄関へ向かう。


「あ、ありがとうございます。お世話様です」


荷物を受け取り、戻ってきた。


箱を見る。


「筐体が来た。何というタイミング!」


「ぼくのですか?」


「そう!」


コメが呆れたように言う。


「出来すぎだろ……」


旦那ちゃんが箱に手を掛ける。


「では、先に交換しましょうか」


「待って!」


浦姐ぇが止めた。


「先に貼ってから交換したほうが良くない?」


「……確かに」


新しい筐体なら、まだムギじろうの身体に取り付けられていない。


向きを自由に変えながらラッピングできる。


三人は新しい筐体にも、ブロンズのフィルムを丁寧に貼っていった。


そして、ラッピングを終えた筐体に交換する。


ムギじろうの背中から、あの傷が消えた。


手足も胴体もブロンズ。


ムギじろうは自分の身体を見回した。


背中にも手を回す。


「……傷が、ないです」


コメが言った。


「よかったな」


「はい!」


そしてムギじろうは、もう一度自分の身体を見た。


「わぁ、カッコいいです!」


目を輝かせている。


コメは、そんなムギじろうを横目で見た。


――……こいつのセンス、浦姐ぇ寄りか?……


口には出さなかった。


浦姐ぇは二体を眺めていたが、ふと表情を変えた。


「……問題はシリアルナンバーだな」


外見は変えられる。


背中の傷もなくなった。


だが、シリアルナンバーは変わらない。


ピンポーン。


「…………」


全員が固まった。


「今日よく来るな……」


「今度は何だよ」


「ムギ! 静かに二階に上がってな」


「……はい」


ムギじろうは音を立てないよう、二階へ上がっていった。


それを確認して、浦姐ぇは玄関へ向かう。


「……はーい」


ドアを開けた。


そこにいたのは――先ほどの警察官だった。


「先ほどは、ご協力いただきありがとうございました」


警察官が軽く頭を下げる。


「いえいえ」


「あの……何か?」


警察官は家の中へちらりと目を向けた。


「あれ? 先ほどのコメたろうくんは?」


「僕です。僕がコメたろうです」


奥からコメが姿を現した。


「…………」


警察官はコメを見る。


浦姐ぇを見る。


もう一度、コメを見る。


先ほどまで白かったコメたろうは、全身ゴールドになっていた。


「あ、気分転換にカラーチェンジをしてまして……」


「カラーチェンジ?」


「ええ。うちのコメたろう、量産型だから、遠目に見るとよそのお宅のアンドロイドと区別がつきにくいんです」


「はあ……」


警察官は金色に輝くコメを眺めた。


確かに。


これなら遠目でも間違えようがない。


「しかし……金ですか?」


「えぇ。コメちゃんがゴールドがいいって。ねぇ、コメちゃん」


浦姐ぇは、にっこり笑ってコメを見る。


コメは固まった。


――俺かよ!


警察官もコメを見る。


逃げ場はなかった。


「ぼ、僕が金を選びましたが……変ですか?」


警察官は少しだけ間を置いた。


「いえ。アンドロイドの希望を叶えてあげるオーナーさんで安心いたしました。お忙しい中、失礼いたしました」


「いえいえ。お疲れ様です」


浦姐ぇは笑顔で警察官を見送った。


玄関のドアが閉まる。


カチャ。


「…………」


しばらく沈黙。


やがてコメが、ゆっくり浦姐ぇを見る。


「……俺がいつゴールドが良いって言ったっけ?」


「いや、結果お巡りさんも納得してくれたし」


浦姐ぇはコメの肩をぽんと叩いた。


「よっ! 男優賞!」


「誰のせいで芝居する羽目になったと思ってんだ!」


「ムギ。降りてきて大丈夫だよ」


二階から、ブロンズになったムギじろうが顔を出した。


「もう帰りましたか?」


「うん」


ムギじろうが階段を降りてくる。


ゴールドのコメたろう。


ブロンズのムギじろう。


二体が並んだ。


浦姐ぇはしばらく眺める。


「何か金メダルと銅メダルみたいだな(笑)」


コメが即座に返した。


「今それか?」

白かったコメたろうは、ゴールド。


白かったムギじろうは、ブロンズ。


結果――。


金メダルと銅メダルが完成しました。


なお、コメたろう本人はゴールドを希望した覚えはありません。


男優賞まで受賞しましたが、こちらも本人の希望ではありません。


そして警察官は、


「アンドロイドの希望を叶えてあげるオーナーさん」


と安心して帰っていきました。


……ごめん、コメ。


でも、これで外見は変わりました。


背中の傷も、新しい筐体に交換してなくなりました。


残る問題は、ただひとつ。


シリアルナンバー。


これは、ラッピングフィルムでは隠せません。

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