旅をともにする者
ヴァルグラン領内は要所に魔導鎧が常駐しており旅人は魔獣や野盗の危険から逃れて安心して旅ができる。
一般の人達でも徒歩で首都から南の聖地サウスヴァルグランへはとても安全に旅ができる。馬車で四日、徒歩でも六日程の距離。
ブラリッチ商会の荷馬車は基本的にほぼ荷物を積んでおり従者は歩きでついて行く。依頼人のアダは、恰幅が良い割に機敏でよく働く。
第一印象は貴族っぽい商人のおっさんだったが、従者達をよく労い自分の体を動かすしっかりした行商人の鑑のような人物だとよく分かる。
人間は見た目で決まると言うが、所作や行動も含めて見るものだと、俺のお袋が言っていたらしい。
直接教わった記憶は残っていないが、親父がお袋の教えとして何度も俺に教えてくれた言葉。
この教えは人を見ることだけじゃなく、全ての事柄を印象だけでなく本質を見ろと教えているんだと俺は解釈している。
銀蜘蛛の面々も、一見ではわからない部分がサウスヴァルグランまでの六日間で見えてきている。
冒険者ギルドの研修を真面目に受け旅の基本はできている。だが、本人達も自覚している様に経験が足りない。
まっ、その辺は今回俺ができる限り教えてやればいいのさ。
「ペイル、明日から目的地のウィステリスまでの夜の見張り順はどう考えている?」
サウスヴァルグランでは食料の補給だけをして、ほぼ素通りをする。
だが、多少の時間があったのでエルのおすすめカフェで銀蜘蛛の面々と一緒に軽食を取りながら打ち合わせをしている。
「僕達とラーグさんお二人の二交代で良いかと思っていました」
うん、パーティーで分けるのが基本だな。だが今回はせっかく俺たちが来たんだ、先輩として仕事をさせてもらおう。
「これはあくまで提案だが、交流を兼ねて俺とエルを分けて三人一組というのはどうだ?」
こうする事で、長い見張りの時間に自然と交流も出来るし立ち回りの打ち合わせなどが取れる。
「えっ、良いんですか? パートナーとのお時間をとってしまって」
俺は思わず飲んでいた紅茶を吹き出してしまう。こいつ、勘違いをして空気を読んだつもりだったのか。
むせている俺の横でエルはさらっと、
「心配無用、私は出来た女だ。ラーグに命令されれば寂しさも乗り越える」
ニヤニヤしながら俺にウィンクをしてドヤ顔で言い放つエル。
「何言ってやがる、俺たちはそういうんじゃねぇ。あくまでパーティーの仲間だ」
もう照れなくってもいいのに、と煽ってくるエルの口を無理やり閉じながら説明をする。
「なんかごめんよ、うちのリーダが変な気を回してさ。よければ連携を深める為にも提案を受けさせておくれよ」
斥候と副リーダーも兼ねているという槍使いのキシリアが他の二人の同意も取った上で声を上げる。
キシリアはペイルをしっかりと支える姐さんという感じでキップがいい。ヘルガと合流した時に紹介してやれば色々打ち解けるだろう。
銀蜘蛛を実質面で動かしている調整役だ。
「わたくしもエルさんから魔術のお話を聞いてみたかったので嬉しいです。やはり、別パーティーとして動いているときには声をかけづらいですしね」
術師のディルは、ここまでの旅でいくつかの生活魔術を使うエルにかなり興味を持っていたのは知っていた。
かなり幼い外見のエルに日中話しかけるのはかなり勇気がいるだろうと考えての提案だ。本人からも肯定されるのは嬉しいな。
「私も実は、ラーグさんの剣が気になってて色々話も聞きたかったですし」
女神官のパールはヴァルグラン国興しの神の双子神と呼ばれる鋼鉄を鍛える神の神官だと言うことは聖印で分かっていたが…………これは武器オタク系の人かもだな。
「んじゃ、始めの三日間は俺、ペイルとパールさん。エルとキシリアさんとデイルという分けでどうだい?」
ペイルが大きく頷き、他の皆も同意してくれる。
よし、今日の夜からヴァルグラン領内を出る。そこまで危険な地域では無い三日間のうちにキャラバンを守る算段をつけよう。
ヴァルグランを出たら油断は出来ない、準備はどれだけしてもしたりないからな。
まぁ、なるようにしかならないからこそ出来ることをするだけだ。




