祝いと最高のご褒美
「ごめぇんよぉ〜、試すような事しちゃったぁ。ただぁね〜、目が聡いものもいるから気を付けるんだよ」
リルヴァの軽口に混じった鋭い一言に身が引き締まる。そりゃそうだな、三日間籠るほどの複雑な遺跡の最奥に安置されてた宝だ。
生半可な物じゃないのは分かってたはずなんだ、リルヴァはそれを教えに来てくれたんだろう。
「こちらこそ、今度安物ですまないがリルヴァにピッタリのペンダントを送らせてもらうよ」
軽口だが、御礼を込めた精一杯だ。忙しい中わざわざ卵の殻が取れたばかりの冒険者にギルドマスター直々の御指南だ……………さぁ、どんなデカい宝石つけたらいいのか分からねぇな。
「うふふ、期待してるねぇ〜ん。そうそう、今日顔出したのはそれだけじゃないよ。デーラ、もっといで」
リルヴァがニヤッと笑い、声をかけるとバターンとデーラを先頭に三人のメイドが室内に入り両手いっぱいに持った御馳走をテーブルに並べていく。
驚いていると、ヘルガとエルとショーちゃんが笑っている。んっ、三人は知ってた?
「ラーグ、気づいてないみたいだねぇ。今日は、お前の誕生日で冒険者二年目の記念日だよぉ~、おめでとう」
えっ…………あっ……そういや…………遠征で感覚が狂ってたか…………あんま気にしてないってのもあるけどな。
だが、祝ってもらうのは悪い気はしないな。
「おめでとうっス、ラーグ」
「おめでとうラーグ、術の師として成長が嬉しい」
「僕からもお祝いするよ。おめでとう」
「ラーグ、おめでとうッピ。」
いつもの三人の祝いの言葉に感謝だ…………んっ? 一人多くね………ってかこの口調と声は。
「久しぶりッピ、グレンが来たよーッピ」
振り向くと金属特有の鈍い光沢とゴムの様な靭やかな部品で構成される自立起動型魔導鎧、通称『メカムスメ』と呼ばれる存在が手を振っている。
メカムスメは建国神話に誕生したと言われ、魔王との戦いで大破。国興しの神が天界にお戻りになって製造方法が失われていた。
近年、魔導炉の小型化が進み再び製造されるようになった。事務、客引き、マスコットとしてヴァルグランの生活の一部になりつつある。
目の前のグレンカイザー師匠は、秘密ッピと教えてはくれないが恐らくはヴァルグラン軍の戦闘用メカムスメだと思う。
まぁ、師匠は師匠だから別に詮索はしない。
中々会うことが難しいので一年ぶりに会えたのは、俺にとって本当にご褒美だ。
「貴女の剣閃には遠く及ばないけれど、この二年生きてこれたのは師匠のおかげです。本当にありがとうございます」
椅子から立ち上がり師匠の前で跪いて、頭を下げる。心からの感謝を伝えたい、その気持ちだ。
「ラーグは相変わらずッピね、グレンは面倒くさい事言うの苦手だから祝いの気持ちは、これをあげるッピ」
跪いたまま師匠からの渡されたものを受け取る、ズシリと両手に感じる重量感。革の鞘が手に吸い付くように馴染む。
「師匠、この剣は?」
思わず見惚れてしまう黒い刀身の剣を鞘から抜きながら師匠に訊ねる。
「ラーグの使ってる量産V式両手剣の祖となる『コクトウムメイ』ッピ」
黒い金属を斬れ味優先で鍛えたであろう鋭い刃。波打つような綺麗な模様が浮かび上がっており、思わずため息が漏れてしまうほど美しい。
切断する事に特化した深い反り。程よい重さが両手に馴染む。間違いない、俺が今まで手にした剣の中で最高の一振りだ。
名有りの持つ剣を持つ、剣士なら誰もが憧れる。それをまだ、ひよっこが軍用装備の元になった逸品を賜り成し遂げる。
普通じゃない………これは、試されている………
「師匠、こんな凄い品を頂いていいのか?」
ゆっくりと鞘に納めながら訊ねと、師匠はニコニコと表情豊かに笑いながら俺の肩を叩く。
「鋭い剣戟を放つ様になったって、ヘルガに聞いたッピ。これを使いこなして、いつかグレンを超えるッピ」
嘘のつけない師匠の嬉しい言葉…………
『コクトウムメイ』こいつと必ず打倒師匠を成し遂げてやるぜ。




