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鉄塊の国NEXT〜悠久の絆〜  作者: jetts


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揺蕩う煙亭の女主人

 宝物庫を後にした俺達は、来た時と同じく一週間程かけて北方山脈の遺跡からヴァルグラン王国の首都リヒトヴァルグランに帰還した。


 賑わう街並み、平民に混じりエルフやドワーフ、竜鬼人といった多数の種族が笑い合う日常。俺にとってはありふれた光景。


 他国を経由してヴァルグランに戻る度、感じる何とも言えない故郷という感覚。


 他国では異種族に対して排他的、貴族が横行し平民は労働の道具…………奴隷に犯罪は当たり前。


 幼い頃からヴァルグランで過ごした俺にとって違和感だらけ…………


 俺はいい国に預けられたもんだ、親父の判断に感謝だ。両親は冒険者で西大陸からの移民

だ。


 お袋は俺が幼い頃に亡くなった、それを期に親父は俺を養護院に預けた。


 お袋の顔はほとんど覚えていないが、親父から聞いた話でお袋の思い出は優しくも厳格な強い女性として深く残ってる。


 親父は帰ってくる度、優しく接してくれた。だから、捨てられたと言うよりは俺を真っ当に育てる為に預けたんだと子どもながらに納得できた。


 『人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり』


 ヴァルグランで言葉を習うと同時に教わる言葉は俺の故郷を的確に表してるな。


 「ラーグ、何ぼーっとしてるっスか。早く店に入るっスよ」


 ヘルガに声を掛けられて気が付いた、大きな建物『揺蕩う煙亭』の前に着いていた。


 大きな看板の横に俺の背丈ほどの黒い金属で作られた煙管(キセル)が飾られている。


 この建物は、冒険者の店でありヴァルグラン冒険者ギルドだ。四階建てという王国内でも高層建築で宿泊施設という側面もある複合施設。


 冒険者である俺の本拠地、しばらくぶりの凱旋だ。店内に入るといつも通りの何とも言えない気怠く甘い匂いが漂う。


 「おかえりぃ〜。おやぁ~、ラーグとヘルガ達かい。今回は中々な成果じゃないかい、おかえりを待っていたよぉ〜」


 俺らが入るなり甘ったるい声で話しかけてくる妙齢の美女リルヴァ。豊満な身体をタイトなドレスで包み黒い煙管を優雅にふかしながら声をかけてくる。


 「リルヴァ、いつもの席でいいかしら。空いてる?」


 エルがいち早く声をかける。エルはこの店の常連でヌシのような存在でかなりの有名人だ。


 「あぁ、丁度ショーちゃんもいるぞ。デーラ、お荷物を預かっていつもの個室にご案内しなさい」


 大体、俺等の身の回りを担当してくれるメイド服の可愛い小柄のデーラが俺達の武装や荷物を片手で抱え奥の個室に案内してくれる。


 …………いつも感じているが俺達の背嚢三つと武器類を片手で持つ……筋力なのか…………技術なのか…………そもそも出来てるのが不思議なんだよな


 一度どうして持てるか聞いた所メイドの嗜みだそうで、それ以後はそういうもんだと割り切ってる。


 デーラが、個室のドアを開け入室を促して笑顔で去っていく。


 室内はいつもの落ち着いた感じで大きなテーブルと六脚の椅子がある。その一つに桃色の短い髪型が合う、あどけない少女が座っている。


 エルとは双子らしく顔はそっくりだが、全体的に控えめなエルと明らかに違う。


 背が低いのに……ヘルガやリルヴァを凌駕してる……………俺も男だから気になり、つい見てしまう程。


 「ラーグ、ヘルガとエルのお守りありがとね。お帰りなさい、今回は大宴会開けそうだね」


 テーブル下にある大きな袋を指さすショーちゃん、恐らくあの金銀財宝を売った報酬だろう、確かに今日は宴だな。


 俺達は各々いつもの席に着く。エルは奥のショーちゃんの左隣、ヘルガも並んで座る。俺は出口の扉に近いエルの正面に腰掛ける。


 「計算通り遺跡があって良かったよ、もし見当違いならみんなに大迷惑だし僕の仕事無くなっちゃうよ」


 ショーちゃんはいわゆる情報屋だ。今回の様に古代の遺跡の場所を文献等から解析し、冒険者が手に入れた財宝で報酬を得る。


 嬉しそうなショーちゃんにエルが、いい子いい子と頭を撫でている。双子だから差はないが便宜上エルの方がお姉ちゃんらしい。


 微笑ましい姿を見ながら、今日は何を食おうかメニューを見ていると扉がノックされる。デーラが注文を取りに来たのだと思い、入っていいぜと声を掛けた。


 扉が開くと、モァっと煙と甘い香りを漂わせ煙管を燻らせる美女リルヴァが入って来る。


 いつもは個室に来ることなど滅多にない女主人リルヴァの登場に俺は慌ててしまう。


 そんな俺にはお構いなしに隣に座り、スッと俺の顔をまじまじと見た後、胸にかかるペンダントをチラリと見る。


 俺の顎にリルヴァの左手が伸び優しくタッチ。


 「良いものぉ〜、見つけたねぇ。おねぇさんにプレゼントとか、どぉかしら?」


 甘ったるく妖艶な誘い、これは普通断れないな。だがリルヴァの性格も、このペンダントの底しれない秘密も俺は理解してるつもりだ。


 「ふっ、リルヴァお遊びはやめてくれよ。命懸けで手に入れてんだ、わかってるんだろう」


 俺がそう言うと、やれやれといった感じではだけて露出している綺麗な肩をすくめるリルヴァ。


 この人の真意は読めないが、今回手に入れたペンダント…………隠しておいたほうが良さそうなことは分かった…………


 


 


 


 


 



 


 


 


 


 


 


 


 

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