波乱を呼ぶ秘宝
斥候のヘルガが遺跡の最奥の意外と質素な石の扉を丹念に調べている。
「罠が〜たんまり〜♪ でもでも、アチシの敵じゃ〜ないっス〜♫」
ヘルガが歌う時はなんでか危険度が高いんだよな~、無意識なのか知らないんだけど。
同じように感じているであろうエルが、そっと俺の前に立つ。情けない話だが剣士の俺は何かあった時の対処は、斥候や魔術師に比べると大きく劣る。
まぁ、適材適所って奴だ。戦闘時は前に出ればいいって事だ、今は、エルに甘えよう。
「飛ぶっス!」
ヘルガの焦った声。
バゴン!!
一瞬で床が抜けて蜥蜴が奈落に落ちていく。いち早く反応したエルが凝縮詠唱で浮遊し俺を抱きかかえ上昇。
ヘルガが右手の鞭を振るいエルの足に滑らかに蛇が絡みつくかの様にしっかりと固定される。相変わらず見事な鞭さばき、まるで鞭が生きているかのようだ。
全員が宙に浮き天井辺りを漂いながら眼下をみると、左右から床がすごい勢いでせり出して来て穴が閉じる。その後、天井からボトリと俺の太もも位太い蜥蜴が落ちてくる。
あっ、これが育つとアレになるのか。凄いな、繰り返しの罠と守護者が補充されるのか。
「すまないっス、ただこれはしくじりじゃなく時間経過っす。流石にこれは扉の罠じゃないんで見落としてたっスよ」
ゆっくりと扉の前に戻ると、エルが気配遮断の魔術を展開して蜥蜴に気が付かれない様に扉の罠解除をヘルガが行う。
程なく扉が開き速やかに三人で室内に入る。
中は金銀財宝溢れる宝物庫だった……………えっ、マジこれ一生遊んで暮らせるコース?
でもつまんねーから俺の取り分はほとんど俺を育ててくれたヴァルグラン養護院に寄付だな。
なんて考えてるとヘルガとエルが二人して呆然としていた。この二人が隙を見せるのは珍しい、余程のものがあったのだろう。
「ヘルガ……………これ最後の獣王のだよね………当たっちゃったよ…………しょうがないから、私が提案したプランでいいよね…………」
んっ、エルがすごい動揺をしている。
「うむ、仕方なしじゃな……………っスね」
んっ、ヘルガ今なんか声や感じが違ってたか。見たことないが、素が出たのか? それほど動揺する何かがあるんだな。
二人が見つめる先を見ると台座に置かれた三つのペンダント。
幾何学模様のチャームが付いたペンダントで、組み合わせられそうなデザインだな。
確かに魂が引き寄せられるような圧倒的な力を感じる。確実にアーティファクト…………神に準じる者が創った、力ある秘宝。
だが、プランだとか獣王、当たったとか…………二人はある程度この秘宝の目星がついているのか?
俺が迷っているとヘルガが先ほどの動揺が嘘のようにいつもの口調で話しかけてくる。
「ラーグ思いの外、宝がある遺跡だったっスね。金銀財宝はまとめてエルの空間跳躍で揺蕩う煙亭の私設倉庫に送っていいっスか?」
収穫物が多い時のいつものルーティン。問題ないのでOKと伝えると、財宝が瞬時に消え失せ中央の台座のペンダントといくつかの怪しい光を放つ宝石が残された。
魔法を宿した宝石が数百個、こいつは高値で取引される。これだけでも豪邸が建つな…………いらねーけど。
「ラーグ、いつものルールで等分だからあのペンダントも一つずつってことでいい? アレは微量だけど魂を守る力があるから、魔術への抵抗が上がる有用な物だよ」
エルが当たり前の事を言う、なんか違和感あるんだよな……………明らかに三個セットで使うものに見えるんだよ。
俺が気が付くぐらいだから、二人なら分かってるはず…………なのにあえて俺に渡す………意味があるんだろうな。なんか獣王とか言ってるし………
それでも渡してくるんだから意味は教えてくれないよな……………
考えても俺じゃ分からない。
さっきのヘルガの見たことのない雰囲気やエルの呟き…………納得はいかねぇが、とりあえず申し出を受け、ペンダントを手に取り首に掛ける。
うーん、なんか胸の上の辺りがスッとして温かい感じがする、効果はあるな。
二人はペンダントを厳重に布で包み、空間跳躍で何処かに飛ばす。
やはり、このペンダントは特別なんだな……………あまり深掘りしても仕方ないので、宝石拾いに参加する…………。
二人の真意はわからないが俺は俺で進もう。
先ずはこのクエストを終わらせてからだ。
久しぶりのふかふかのベッド、酒と美味いものも楽しみだぜ。




