俺の太刀筋
「ラーグ、よくこの鱗の隙間を通したっスね。アチシでも難しいっスよ、前々から太刀筋が良かったけれど戦闘センスが飛び抜けてる…………っスよ」
手頃な大きさで使いやすそうな無傷のトカゲの鱗を剥ぎながら俺の切断跡に目を細め、珍しく毒舌抜きで褒めてくれる。
手放しで嬉しいが、ここまで精密な斬撃ができるようになった経緯を思い出すと…………
「ラーグ、苦虫を三十八匹噛み潰したような顔をしてるっスよ。アイツは容赦ないっスからね。アイツに師事した時、あっ…………ラーグ君アウト〜って思ったっもんっスよ」
あの過酷な修行を思い出し、相当な顔をしていたんだろう…………狂気の特訓…………まぁ、アレがなければ今の俺が無いわけだから結果オーライなんだがな。
「分かってたんなら、なんであの時止めてくんなかったんだよ」
照れ隠しにむちゃを言ってみる。
「バカ言うなっス。あんな、おも…………感動的な告白は止めれねぇっスよ」
あっ、やべぇそれは…………
「惚れました、きらめく剣閃と優雅な身のこなし。機能を極限まで貫いた感動的な美しさ。貴女の全てを頂きたい」
あぁあああああ。何処から聞いていたのか神様大好き病から復帰したエルが、絶妙に似ていないモノマネで話に参加してくる。
そうだよ〜、あの時はあまりにも理想的で俺が思い描く完成された演武を見て勢いで言っちまったんだよ…………
動きの全てに意味があり、流れの緩急と鋭さ。正確無比な一切の妥協のない剣風をなびかせる。確かに一目惚れなんだが………
プロポーズではなかったんだ……………でも完全に勘違いされて………
身体全体で拒否を表現されて、本気で思ってる人がいるから気持ちは受け止められないッピ、マスターは裏切れないッピと緊張感が削がれる口調で全力拒否され誤解を解くのが大変だった。
結局は稽古をつけてくれるようになったが、しばらくはあの時のやり返しで意地悪されていると思うぐらいキツかった。だが実の所、加減を知らないだけだった…………
…………ある日、人体が耐えられる限界について聞いた所、衝撃波を伴う音を置き去りにした正拳突きを見せてくれて一言「これくらいは出来るッピよね?」と言われた時のショックは今でも鮮明に覚えている。
冗談で無いことは訓練の半年で分かっていたが、あそこまで理解の違いがあるとは思わなかった。
それからは、とても合理的に俺が耐えられるギリギリで組まれたトレーニングは…………今までとあまり変わらず、あっ俺強くなってたって気がついたのもいい思い出だ。
「さーて、エルも復帰した。もう少し鱗と肉を取ったらあの扉の奥にレッツゴーっス」
ヘルガが手を休めずに、顔だけ扉を見据え声を掛けてくる。
この大蜥蜴は冒険者の基準で言う所の上級レベル、たった三人で討伐するものではない。そんな大物が守っている扉。
さぁて、どんなお宝があるのか楽しみだぜ。




