ディナーの約束
「君たちにお任せして本当に良かった。これは少ないが受け取ってくれ」
アダが感謝を伝えてくれる。実際の所、商隊に何の被害が出なかったのは、贔屓目に見ても俺たちの働きが大きい。
少なくない額のボーナスを手渡しされ、ペイルと山分けをしてアダたちと別れ街の中に入っていく。
「銀蜘蛛のみんな、お疲れさん。さっき仲間の伝手を使ってレストランを予約したんだがディナーでもどうだい?」
ちょっと先走りだが、ヘルガに通信魔術でコンタクトを取って俺が行きたかったレストランの予約を取ってもらった。
『リーベエーゼン』
港町ウィステリスで百六十年以上続く老舗レストラン。昼は港町のリーズナブルな定食を提供、夜は金持ちの観光客や貴族相手の高級コースが食べられる。
中々予約を取るのが難しい店だが、今回もヘルガの恋人さんの謎のコネクションで特別室をおさえてもらえたんだ。
奢ってくれるとも言われたが流石にそれは断った。一応、金には困ってないので使う時は使わないとな。
「ラーグさんいいのですか?」
ペイルは銀蜘蛛の皆に了解を取ってから遠慮がちに聞いてくる。
「もちろんだ、お前たちの成長を祝わせてくれ。後、キシリアにはヘルガを紹介したいしな」
ディナー迄にはしばらく時間があるので一度宿に行き、用意をしてから店の前で待ち合わせの約束をして一度別れる。
ヘルガに指定された宿はランク的に中の上、駆け出しを卒業してそこそこの冒険者か富裕層が長期滞在するのに丁度良さそうな小綺麗な所だった。
恰幅が良く温和なご主人に鍵をもらってそれぞれの部屋に向かう。
何故かいつも少し広い俺の部屋に薄ピンクのぶかぶかワンピースを着たエルが、いつもの様に上がり込んで来てベッドでバタバタし始める。
今回は、長期滞在の可能性があるので身の回り品を備えつけの棚に整理する。荷物を小分けにして貴重品は手元にまとめておく。
邪魔なエルを押しのけながら枕元に護身用の予備短杖を仕込み、ベッド周りも使いやすく整える。
コロコロと器用に逃げ回るエルを横目に、俺も胸当てなどを外し普段着になる。
ドアが開き。身体のラインを無駄に強調する黒いインナーを着たヘルガが、エルの隣にぽすっと寝転ぶ。
「ただいまっス」
右手をヒラヒラさせて挨拶するヘルガに、お疲れさんと声を掛けコクトウムメイを抜いて手入れを始める。
新しいお菓子や、この街のおしゃれな服屋の話をしている二人を微笑ましく見ながらのんびりと過ごす。
日が沈み始めたので手を止め二人に声を掛け、持っている服の中から多少フォーマルなものに着替え始める。
「ラーグ、アチシたちも大概っスけど…………図太くなったっスね」
こいつらは分かってやってるからな…………まぁ、慣れたし別に嫌じゃねぇからいいし…………淋しくねぇのがいいよな。
「先輩方のご指導の賜物だぜ」
軽口で応え、二人と共に部屋を出て施錠して一足先に宿の待ち合いに降り二人を待つ。
「待たせた。惚れてもいいが私は軽い女では無い」
淡いピンクのフリルがたくさんついたワンピースを着たエルがニヤニヤしながら降りてくる。
確かに好みなんだよな…………褒めとくか。
「おう、可愛いぞエル」
素直に声をかけると足早に降りてきて俺の横に立って服の裾を引っ張ってくる。
「おいおいチョロすぎだろエル」
もじもじするエルに戸惑っていると
「仲がいいっスねぇ、ラーグは可愛い系が好みだったっスか。でも、こういうのも好きなのバレバレっスよ」
黒地に銀糸で蜘蛛の模様が入ったロングドレスを優雅に着こなしたヘルガが階段を降りて来る。
肩から胸元にかけての布地が極端に少なく、大胆なサイドスリットからスラリとした太ももが覗く。
リルヴァよりも際どいドレスだがヘルガの優雅な身のこなしにより、不思議と下品さは感じられない。
目が離せず口を開けたまま固まっちまう俺………
「ふふっ、ラーグもチョロいっスねぇ」




