大地に篭もる熱のような
まだとんでもない怪文書のままだ。許せ
失われた自身の記憶を思い出す為、俺は橙雀と名乗り、新たな地。『フリタール』へと向かう。
其処は法事国家。裁判が全てを支配する。裁判に間違いはないし、間違っていても人々は裁判を信じるだろう。
「この観光ガイドの文、いつ読んでも狂ってるよなぁ。裁判が全てって、裁判に間違いがあっても、誰も疑わないんだろ?それってもう何か洗脳とかしてるんじゃないのか?」
俺はそう呟きながら猛吹雪の中、針葉樹の森の中の道を歩く。辺りの地面は白くなり、気温も低くなっていた。フリタールはこの大陸の最北端に位置する雪国であるため、寒いのは当たり前だし、勿論雪も降る。
「地図によれば、この先を進めば、フリタールの中央都市に着く筈なんだけどな…」
無駄に道のりが長く感じる。徒歩で国境を跨ごうとしているから当たり前っちゃ当たり前だが、それにしても長い。
街が近いのなら、多少音とかは聞こえるはずだし、街から発してる光とかも見当たらない。吹雪で視界が狭いからだろうか。
そのまま地図を頼りに歩き続けると、猛吹雪のゾーンから抜け出したようだ。
視界が晴れ、目の前には街があった。地図によれば、此処がフリタールの中央都市で間違い無いだろう。
木材やレンガできた家が立ち並び、道路もお洒落なレンガで敷き詰められている。メイリオの街並みとは雲泥の差だ。だが、メイリオを舐めてはいけない。俺がいた場所は首都ではないからな。きっと首都はとても綺麗な街並みなのだろう。多分
だが、この街、何か変だ。音が全くしない。此処は住宅街の筈だが、生活音が全くしない。それどころか、人影が全く見当たらない。何故だろうか。何かから隠れているのか?そう思えるくらい、街には何も居なかった。
いや、まだ他の所に行けば人は居るかもしれない。少し街を探索しよう。
しばらく街中を歩いて見たが、人は見当たらない。所々、明かりがついている家があるが、人の気配は無い。
数十分ほど歩いたところ、街の中央広場に着いたようだ。その広場には、1人、人の姿が見えた。
「ふぅ…やっと第一住民に会えたぜ。」
ずっと人に会えてなかったから、やっと人を見つけた時の感動は凄まじいものになる。俺はその人に話しかける為に歩き出す。
紺色の髪をした、赤い上着を羽織ってる、猫耳の生えたやや小柄の少年──…猫耳?この世界って猫耳生えた人とか居るの?!…まぁあんな化物とかいるし獣人もいて当然か。そういえば獣人の国とかもあったような気がする。
「すみませーん。旅の者なんですけど、何で此処は人が居ないんですか?」
猫耳の少年はこちらへ振り返って言った。
「ん?。あぁ、不思議だよね。ここ、この国の中央広場だってのに。何でかはわかんない。もしかしたら、大規模なテロでも起きたのかも。」
ゆるい喋り方で彼は話す。彼もこの状況についてはあまり詳しくないようだ。
「そうか。俺は橙雀、道行く旅人さ。」
とりあえずはじめましての相手には自己紹介をしておこう。なんやかんやで仲間になってくれたら幸いだ。
「うん。橙雀ね。じゃあ僕も。僕はヴァルフォン。サリヴェルトから来た猫又。よろしく。」
「あぁ、よろしく」
猫又…なんか人に化けるとかそんな感じの種族だった気がする。この姿も化けた姿なのだろうか?それに、『サリヴェルト』という国…そうか、それが獣人の国か。確か此処から近い位置にある国だった筈。
彼は聞いた。
「僕は人探しに来たけど、君もそうなの?」
「人探し…まぁ、考え方によっては人探しかもな。」
失った記憶を取り戻すというのは、昔の自分を探すということだろう。ならこれは人探しだ。だが、変に濁さずに普通に旅をしているで良かったかもしれない。と俺は後悔した。
ヴァルフォンは周りを見渡しながら話す。
「それにしても、此処に住んでいる人達は何処に行ったんだろうね。」
「さぁな。もしかしたら、何か非常事態かもしれない。例えば、凶暴な化物が出たとか…」
「うーん。でも、フリタールは法事国家であり、軍事国家でもあるし。魔物の対処くらい容易いものだとおもうけど…。ん?」
ヴァルフォンが何かに気づいた様だ。
「なんか、遠くから歓声が聞こえた気がする…。あっちかな。行ってみる?」
彼は東の方を指差して言った。
「歓声?そんなの聞こえなかったが…
まぁいいや、一旦行ってみようか」
彼は猫で耳が良いから俺が聞こえない音も聞こえたんだろう。
俺とヴァルフォンは東の方へ向かった。その道中も、人の姿は見当たらなく、街中には足音のみが響いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俺達が音の源に近づくにつれ、歓声は大きくなっていた。
そうして声の源にたどり着いた。其処は法廷であった。やけに大きい、闘技場のような外観をした円状の法廷。
中に入ると、中央広場の台には磔にされた白髪の男が居て、その周りには何千ものの人々がスポーツ観戦のように観客席からそれを眺め、歓声をあげていた。
上の方では、何やら偉そうな人達が法廷見下ろしていた
「これが噂に聞いてた『法廷の狂気』ってやつ?思ってたよりもやばいね。」
ヴァルフォンが呟いた。確かにこれには同感だ。磔にされてる男を見て歓声をあげる感性が分からない。分かりたくもない。もし磔にされてる男が超凶悪殺人犯で、フリタール人の大半を虐殺したとかじゃなければの話だけど。
「静粛に!」
声が法廷中に響き渡ると、歓声は鳴り止んだ。すると、中央の広場に、大剣を担いだ黒髪の長身の男と、裁判官の老人らしき人が入ってきた。
彼らが位置につくと、裁判官は告げた。
「被告人スバラ=シイヨ。被告人はフリタール庶民街の大半を爆破し、大勢の犠牲を出した罪により…死刑に処す」
まぁ歓声と大剣男がいた時点でなんとなく察していたが、本当に超凶悪殺人犯だった。
裁判官がそれを読み終わると、処刑人であろう大剣男が持っている大剣に炎を纏わせ、磔の男の方へ歩みだした。おそらくこれから処刑が行われるのだろう。それを観客たちは今かと待ちわびている。
「ハハッ。フハハハハッハハハハハハッッ」
処刑人が台に登ると、磔の男は突然高笑いを始めた。何だろうか。まさか法廷も爆破するつもりか?!
処刑人はそれを無視し、剣を構え、男の胸元につきつける。
「何か、言い残した言葉は?」
処刑人は男に問う。
男は笑いが篭った声で答える。
「無いね」
彼はそう答えると、指パッチンで指を鳴らした。すると、一瞬で広場は爆ぜ、炎に包まれた。男は何度か指を鳴らした。その度に法廷は爆発し、法廷は大混乱に陥った。
いつの間にか磔の拘束から抜け出していた男は歩いてその場を去ろうとしたが、処刑人はそれを止めようと、その大剣で男に切りかかる。だが、男は指を鳴らし、爆風で処刑人を吹き飛ばした。
偉そうな人達は密かに去っており、裁判官もいつの間にか居なくなっていた。観客たちは皆法廷の外へ脱出しており、俺はそれらの事象を傍観することしかできなかった。立ち尽くしていると、腕を強く捕まれ、引っ張られた。
「何ぼーっとしてるの。早く此処から出るよ。」
ヴァルフォンがその小柄の身体から出てるとは思えない力で俺を引っ張られ、法廷から出された。
街に戻ると、普通に人々が暮らしていた。街の人全員が法廷へ行っていたのだろうか。
「法廷が爆破。なんて、そんな言葉を聞くのはこれが最初で最後かもしれないね。」
それはそうだ。今後一切そのワードを聞くことは無いだろう。
とりあえずここまで引っ張ってくれたヴァルフォンに礼を言おう。
「ありがとう。引いてくれて。無駄に力が強くて助かったよ。ところで何歳なの?若そうだけど。」
「何急に。16だけど。」
…え?16歳で大人を片手で引っ張れる怪力を持ってるの?怖。てか子供が一人で外国まで来ても大丈夫なのだろうか。
「うん、まぁ今日はありがとう。またな。」
今日はもう疲れたし、とっとと宿をとって休もう。
俺はそそくさと其処から去ろうとする。
「待って」
─が、ヴァルフォンがそれを引き留める。
「確か君は色んな国を渡り歩いてるんだよね。だったら、フリタールでの旅が終わったら、『サリヴェルト』に来てほしい。理由はまだ聞かないで。」
色んな国を渡り歩いてると言ってもまだ2国しか行ってないが。それはそれとしてサリヴェルト、獣人族の国。まぁいつかは行こうと思ってたけど…。どうして急に?何か面倒事の予感がするぞ
「まぁ検討はしておくよ。」
そう彼に言い残し、俺はその場を去った。今回は彼はそれを引き止めなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その日の夜、俺は宿を取り、部屋のベッドに横たわる。
今日も色んなことがあった。法廷が爆破されたり…。何だこれは。まだこの地に来て初日だよな?まぁ、流石にこれ以上の事が起きる事は無いだろう。…いや、そんな事を言ったらフラグになってしまう。よそう。
さて、明日はどうしようか。記憶を取り戻す為に俺は旅してるけど、それ以外の目的が全く無いんだよな。
そういえば、俺を助けてくれた4人の冒険者達が居たな。その人達のもとに行くか?
俺は住所が書かれた紙と地図を眺める。
メイリオのクロリッタ街…か。遠いな。もうメイリオからは出てしまったし…南の方の街だから行くのが面倒だ。あ、でもサリヴェルトに行く道中で通る場所っぽいな。その時に寄ってみるか。
とりあえず明日は散歩かな、俺の頭の中でパーフェクトな散歩計画が練られる。
「よし、今日はもう寝よう。おやすみ〜」
誰もいない空間にそう言い、俺は就寝した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ふぁ〜おはよー。」
目が覚めると、其処は宿では無かった。俺はメイリオで無彩色のオーブと居た時に見た庭園で横になっていた。
「何でまた此処に…」
前に此処について調べたとき、地図や観光ガイドにもそれっぽい所は無かったから、此処は精神世界みたいな所なのだろうか。だとしたら、誰の?俺のか?
この前居た所と同じ場所に居た。
「そうだ。この前のベンチの所に行こう。あの白髪の人がいるかも。」
此処が本当に俺の精神世界なら、あの人は記憶がある頃の俺の重要人物の可能性がある。なら、何か知っている筈だ。
俺はベンチがあった場所へ向かう。長い通路を抜けた先は、やはりベンチが置いてあった。ところが、あの時の白髪の人は居ない。
この前は顔がギリギリ見れなかったから、今回は顔を見るところまでは行きたい──。そう思って辺りを探す。
─おかしい。この庭園はあまり広くは無く、隅々まで探索した筈だが、一向にあの人と出会える感じはしない。
次第に視界がぼやけていく…。もうすぐで現実に戻されるのだろう。
ふと上を見ると、宇宙船が飛んでいた。
「宇宙船…?何でこんな神秘的な場所に宇宙船が──」
庭園の雰囲気に似合わなすぎる宇宙船は空中を飛び、見えなくなった頃に、ドカーンと大きな衝突音を鳴らした──
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「ハッ!」
目が覚めると、宿の部屋の中だった。どうやら、夢だったみたいだ。
「何だよ、夢オチかよ…」
夢オチで少しがっかりしたが、多分今後も見る展開になると俺の勘が言ってる。あれは昔の俺についての絶対に重要なヒントだ。見逃す訳には行かない。
窓の外を見ると、もう朝だった。淡い日光が、窓越しにこちらを照らしている。
さて、今日は何をしようか。適当に街をぶらぶらするか?たまにはそんな日も良いのかもしれないね。
──それにしても、今日も街が静かだ。また皆法廷に行ってるのか?いや、でも法廷はこの宿から結構近い位置にあるにも関わらず何も聞こえない…。だったら違う要因で…?
とりあえず外に出てみると、外の街道は、メイリオの草原の時の様に、色が抜け落ちていた。だが今回はあのオーブは居ない様だ。とりあえず、近くに誰も居ないようだし、あの謎の力でこの現象を消してみよう。
地面に手を当て、少し力を込めると、それは波紋のように広がり、色が戻っていった。
「この力…2回目にしては上手く扱えたかな。」
この力については殆ど知らないが、あの脱色現象に対する特攻の性質を持っている事だけは分かっている。これからも世話になりそうだ。
人々が居なかったのも、この現象から逃げていたからなのだろうか。…だとしたらやばくないか?街中でこの現象が起きてるんだろ?もしかしなくても大惨事じゃないか。
そう考えていると突然、うなじにチクッと針に刺されたような感触を感じた。すると、強烈過ぎる眠気に襲われ、またたく間に寝落ちしてしまった。
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目が覚めると、薄暗い部屋の中で、月明かりの照らすもとで、椅子に縛りつけられていた──何この状況。拉致られた?俺が?成人男性が?
正面には右目に眼帯を付けた白髪の女性が居た。この国白髪の人多くないか?
互いが見つめ合い、暫くの沈黙の時間が続いた。
体感数分後、やっと彼女は口を開いた。
「貴方は橙雀で間違い無いな?」
彼女のやや低めの声が、俺の緊張感に拍車をかける。
「…はい」
これは正直に答えないといけないやつだ。彼女は銃を持っている。多分ショットガン。あれに撃たれたら流石に即死する。
「そうか…では問題ない。では、今から3つの質問をする。それに答えれば釈放しよう。」
何も状況が分からないまま尋問タイムが始まってしまった。
その女性は俺を睨み付けながら問う。
「では第一の質問──貴様は何者だ?」
思ってたより普通の質問だった。
「…ただの旅人です。」
記憶喪失なんだからこんな回答しかできなかった。だけど旅人以外になんて言えば良いんだ?
ドォン!!と銃声が響き、俺の左足を銃弾が貫いた。くそいてぇ。
「そんな事を聞いてるんじゃない。もう一度聞く。貴様は何者だ?」
え?旅人以外に何でもないんだが。
「俺はメイリオから来たただの旅人、無職だ。今は何か記憶喪失で記憶が無いんだ。今は橙雀と名乗ってる。」
「そうか。では第二の質問──貴様のその力は何だ。」
力…多分脱色現象を消すあれの事だろう。あれに関しても自分でもよくわかっていない。
「自分にもよく分からなけど、あの脱色現象を打ち消す作用がある事しか知らない。」
彼女は少し考えると、また一発、ドォン!と俺の右膝を撃った。彼女はごみを見るような目で俺を見下ろしながら問う
「脱色現象とは何だ。手短に説明しよ。」
「脱色現象っていうのは…お前も見ただろう…あの色が抜け落ちる現象の事だ。もう撃たないでくれ。」
少しすると、彼女はある写真を見せ、最後の質問を投げかけた。
「最後の質問──この二人について、何か知っているか?手短に教えるんだ。」
その写真には、緑色の瞳をした白髪の少女と、赤い瞳の長い白髪の女性が写っていた。やっぱりこの国白髪多すぎでは?というかなんかこの質問だけガチだ。そう感じた。そのくらいこの問いには他よりも気迫があった。
「いや…知らないです。記憶喪失ですので。」
この国に来てまだ2日だし、記憶喪失だし…知るわけがない。
暫く彼女は俺の目を見つめた後、無言で身体を縛っていた縄を切り、外へ押し出された。何なんだよもう。
外はもう夜だった。もしかして1日の大半を寝て過ごした…!?時間を無駄遣いしすぎた。俺の完璧な散歩計画がパーになってしまった。今日も災難な日だ。ほぼ寝てただけなのに凄い疲れた。
外は真っ暗だ。住宅の明かりはもう消えて、一部の店だけが明るい時間帯だ。
宿の方へ向かう道中、見覚えのある人を見かけた。遠くからだからあまり良くは見えないが、猫耳が生えている。うん。ヴァルフォンだ。彼が武器屋の前に立ってる。
そういえば、俺ってまともな武器を持ってなかったよな。あの短剣くらいしか刃物が無いな。折角だし、いい感じの武器がないか見てみよう。
俺はその武器屋へ向かう。強面のおっさんが出迎える。
「へぃ!いらっしゃーい!何をお求めかなー?」
強面だが明るい声で接客していた。こんな夜中にそんな大声で接客しても良いのだろうか。
「あー、じゃあ何か僕に合いそうな武器とか無いですか?」
「ほぅ。お客さんに合いそうな武器…か。ほれ、少し待ってな。探してみる。」
そう言って店主は店の奥へ入っていった。結構適当な注文なのに受けてくれるんだ。ヴァルフォンは真横に居るというのにこっちに気づいていないようだ。何か考え事でもしているのか。
「…いや、やっぱあれが良いか…」
ブツブツと何か呟いている。そんなに武器で悩む事があるのか。こだわりが強いのかな。
すると、彼はこっちの存在に気づいた様だ。
「あ、居たんだ。昨日ぶりだね。」
昨日よりも若干明るい声だった。何かいい事でもあったのか。
「何か考え事?」
「いや、僕の同居人が居るんだけど…彼女が武器が欲しいってねだってた事を思い出したから買おうと思って」
同居人…。もしやこいつ彼女持ちか?!くそっリア充め爆発しろ。
「言っとくけど恋人じゃないよ。」
まるで心の声が聞こえてたかのように念を押された。
「お客さん達ーご希望の品はこれかなー?」
店主が2つの品物であろう武器を持って店の奥から戻ってきた。
「ほい、猫のお客さん。これで良いかい?」
大きなごつい斧を台に置いた。でっかい斧だ。確かにヴァルフォンは力強いからこういう武器の方が向いてるのかもな。
「パルテナ工房から輸入した鍛造品だ。一部にダイヤモンド使われ、耐久性にかなり優れてる。お客さんの戦闘スタイルに合ってると思うぞ」
「うん。良いねこれ、いくら?」
「あぁ、金貨150枚だ。」
え、たっか。たかが斧でそんなするの?自分の武器は大丈夫なのか?金貨100枚も取られんよな?俺の所持金はせいぜい金貨20枚程度だぞ?
ヴァルフォンは懐から大量の金貨を取り出した。何処にあったんだそんなスペース
「はいまいどー! それから、橙色のお客さん。こんな品で良いかい?」
鋼の剣が台に置かれた。見た感じ、ごくごく普通の剣みたいだ。シンプルなデザインで、軽そう。
「これはコスパ重視の鋼の剣だ。軽くて、耐久性に優れている。剣を持つのが初めてなら、これがおすすめだ。」
「じゃあこれでお願いします。」
「あい、じゃあ金貨5枚だ」
良かったー。100枚も取られなくて。危うく破産するところだった。
俺は支払いを済ませ、剣を受け取った。うん。軽い。めっちゃ軽い。とても鋼製とは思えない。これなら戦いやすそうだ。
「そういえば、同居してる人の分は買わなかったのか?」
夜道を歩きながら話す。
「うん。彼女が武器を持つと何をするか分からないし、持たせないのが正解だとおもう。」
武器を持たせちゃいけないくらい危ない人…?そんな人が同居人ってやばくないか?よく今まで生きてきたな
「サリヴェルトの武器屋はもう閉店しちゃったから、武器を買いにいくには外国に行くしかないんだよね」
「それは…大変だな。ちなみにその同居人とはどんくらい一緒に住んでるの?」
「あー、3年くらいかな」
なるほど、交際歴3年以上か。以前の俺が彼女持ちだったかどうかは知らないけど、なんかリア充を見てると殺意が込み上げて来る。いや、駄目だ。冷静になれ。俺は彼女が居た。忘れてるだけで──そう自分に言い聞かせて殺意を鎮めた。
宿の前に着いた。俺はヴァルフォンに別れを告げて、宿へ入っていった。
部屋に戻ると、疲れでベッドへ倒れこんでしまった。このまま眠ってしまいそうだ…。
そうして俺は、何も食べずにそのまま眠った。
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一方その頃、ヴァルフォン。
暗闇の中、街道を一人で歩いていた。特に向かう場所はない。何も考えずに歩いていると、遠くからこちらへ歩いてくる人が見えた。時刻は午前3時頃。こんな時間に一人で歩いてるのは不自然だ。自分もそうだけど。
変に絡まれたら面倒だから道を曲がった。だけど、その人は僕の後ろにいた。なんでだろう。変な人じゃなければ良いけど。
「貴方。止まりなさい。命が惜しいならね」
背後の女性が脅してきた。何だろう。カツアゲかな。背後を見ると、白髪の長い髪を下げた、赤い瞳の女性がレイピアを構えていた。
「誰?カツアゲなら帰って。そんな金無いからね。」
すると彼女は少し笑って答えた
「カツアゲ?私がそんなくだらない事する訳ないじゃない。良い?私は刻律者のルペタルよ。」
「刻律者?なにそれ。もしかして厨ニ病なの?」
「はぁ?刻律者を知らないの?貴方、猫又でしょ?猫又なのにそんな事も知らないの?」
確かに猫又は知能が高めの種族だけど、知らないものは知らないね。
「…まぁいいわ。貴方、あの橙髪の男と接触してたわよね。仲間かしら?」
橙髪…多分、橙雀君のことだろう。何かやばい人だったのかな。指名手配犯だったとか?
「いや、ただの知り合いだよ。仲間じゃない。」
「あらそう。あの男は危険よ。近づいては駄目よ。」
やっぱり指名手配犯だったのかな?何しでかしたんだろう。
「でも、この事を知られたら困るから、貴方の事は始末させてもらうわ。」
「ちょっと仕事が適当過ぎない?僕の命はそんな安売りしてないよ?」
「足掻きたいのなら、足掻くといいわ。どちらにせよ、結末は同じだから。」
もしかしてこれ戦うの?彼女と?まぁいいや。彼女は多分こっちをかなり下に見てる。実際、多分僕じゃ彼女に勝てるかは分からない。勝率は─30%くらいかな。
「まぁ、いいよ。丁度新しい武器の試し斬りをしておきたかったし。」
あの斧を使うのは初めてだけど…まぁなんとかなるよね。
「あら、随分余裕そうね。そんなに腕に自信があるのかしら?」
「いや、ない」
「そう。いいわ。死んで。」
彼女はそう言い、地面から踏み出し、凄まじい速度でレイピアを突き立てこちらへ突撃してきた。
To Be Continued…




