僧侶の遺した日記 39 「別離」
動けない姫と満身創痍のパーティ
他に選択肢はあったのかな……
なんとか姫を起こし、勇者を立たせる。勇者、歩けるようで良かった……。
何か……
そう、何かとしか言いようがない不安な気持ちになり振り向く
振り向いた先には
絶望が拡がっていた
「なにこれ……こんなの…………逃げられっこないよ……。」
「そうか……こいつがおじじ様の資料にあった……深淵の魔物か……こんなところで出くわすとは運がない……。」
「魔女……今なんと……?あなたもしや……」
「ちっ、危ないぞ!」
ポン
軽い音だったと思う。
勇者に放たれたと思われるソレを……魔女が助け……魔女の……腰の辺りに……穴が……。
「しょろ?ショロろら?」
「あ、何言って……話せる……魔物?」
「ぐっ……グソ……!」
バーン!
と魔女の爆破魔法で無理やりコアの間の出入口まで飛ばされる。
「いた……たた。また無茶な事を……。」
「何をするつもりだ……これ……。」
勇者の発言で私も魔女を見る。
私たちと魔女の間に薄い結界が張られていた。
「見ての通りだ。今出来る最良の手だ、数分程なら抑えられるだろう。その間に逃げろ……、私も……大丈夫だ……貴様らが逃げた後に転移で……先に地上にいる……。行け!!全員満身創痍なんだ!振り向かず走れ!」
勇者は何か言いたげだったが、私たちは……ただの足手まといでしか無いほど無力だった。
私が先に行き、勇者と賢者がなんとか姫を二人で担いでついてくる。
最後まで後ろを向いていたお姫さまの顔で……魔女さまがどうなったかは、察するに余りあった。
私が罠にかからなければ、もっとちゃんと節約して魔法を使っていれば……。涙が止まらなかった。
ダンジョンを抜けるまで……抜けるまで………………視界がずっとボヤけたままだった。
ダンジョンから出るのは驚くほどスムーズだった。分岐路に、魔物が潜んでいそうな所に、危険な足場に、魔女は印を付けていた。
ドヤ顔で自慢してくる魔女が目に浮かぶ……。
「なんとか……外に出られましたね。」
「1度村に戻ろう。姫の治療も必要だ。」
「勇者も……だよ。背中……無理してるでしょ。」
村に戻ると女戦士とメイフィス、村の人達が迎えてくれた。
姫を村の診療所に預けてひと段落した時だった。
「これは……姫の救助とはな。人間の王はもう魔族との取引はせぬという事か?」
「古の盟約ですか。そこまではなんとも……。魔族とも出会いませんでした。もう必要数に達しているのではないですか?」
「なるほどのう……ということは、今の魔王も不要であると?」
「そうなるでしょう。貴方はどうしますか。運命を共にすると?」
「そうじゃのう。結果的に……儂も、彼女に酷い仕打ちをしたのかもしれん。」
「このパーティの魔女が離脱したのは良かったかもしれませんね。あれでは事が成る前に魔王ごと消滅させてしまいかねませんでした。」
二人の会話……何の話を……?
北の王との古の盟約
遥か昔、北に住まう王が魔族と交わした盟約
魔王を、魔物の母を、魔物の餌を提供する
その代わり王都の安全を保証する




