僧侶の遺した日記 38 「救出」
魔女の火傷、だいぶ酷そうだ
もう薬草も使い切ってる、なんとかあるもので治療を……
ガシャアンガシャアン!
と何かが割れたような音がする。封印が解けたのだろう。
奥の扉とダンジョンコアの結界が消えている。
「勇者殿、まだ動けますか?わたくしは扉の奥の様子を見に行きます。一緒に来られますか?」
「ああ、もちろん。行こう」
「さて……私の方はこいつか……」
勇者と賢者が扉の奥へ入っていく。
私はカバンの中に残った薬草の端材をかきあつめてなんとか少しでも回復出来る治療薬を調合する。
魔女は、ダンジョンコアを見つめていると思ったら……右手を肩の高さまで上げ、氷の槍を作り、コア目掛けてぶん投げた!
ッド!パキパキパキパキ
-----イイィィン
氷の槍が刺さるとコアは凍りつき、ひび割れ、サラサラと砕け散っていった。
「…………ふぅ。あのコア、無理に破壊するとここら一体が吹っ飛ぶような細工がしてあったよ。造ったやつは碌な奴ではないな」
「全然……気づかなかった……」
「散々雑な認識阻害のトラップを探させて魔力の感覚も目の感覚もおかしくなっているような所からの……数段上の認識阻害が施されていた」
勇者と賢者が慌てた様子で戻ってくる。
「あれ?お姫さまは?」
「すまない……僧侶、魔女……来てくれ……僕たちだとちょっと……」
歯切れが悪い、お姫さま……重症だったら今の私でも無理だと思うのだけど……。
奥の部屋はダンジョン程は暑くはなかった。どこかから外の空気を入れているのだろうか?
部屋に入ると、何に使うのかわからない道具の飾られた部屋とベッド……その更に奥の牢屋に全裸にされた女性が繋がれて……っと……これは……。
「ひ、酷い……手足の健が切られてる……、こんな事しなくてもこんな危険なダンジョン奥で、逃げる事なんて出来ないのに」
魔女に首、両手両足の拘束を壊してもらい、手持ちの治療用の布を体に巻く。
出来る限りの治療をしてる時に、目が覚めたようだった。
「……ぇ、あれ、人……。ああそんな、夢じゃないんですね……」
ハラハラと涙を流しながら、ゆっくりと、なんとか私の手を持ち、握ろうとしていた。私は強く握り返した。
「もう大丈夫です。必ず、必ず帰りましょう。もう少しの辛抱ですからね」
「あぁ……はい、わかりました。。。よろしくお願いします」
ヌ゛ッッ
「僧侶!姫!」
何が起きたか一瞬、わからなかった。
何もない所から大きな蛇の口が現れ。勇者が押してくれなかったら、私もお姫さまも生きていなかった……。
「がはっ!そ、僧侶、姫も……無事かい?」
「あ……ぁ…………私は大丈夫。せなか……背中が……。血が」
「ひっ!!あれは一体……なんですか……」
ここに捕まってたお姫さまも知らない魔物……?
「おいおい……、なんだあれ……。まだ居るのかあんな化け物が」
「転移門……かなり大きいですね。まだまだ全身ではなさそうです。今のうちに撤退しましょう」
勇者……重症だ……。私も勇者も賢者も魔力が尽きているし、魔女も負傷している。
犠牲なしに帰れるのだろうか……。
事実干渉
「深淵の魔物って何かこう……異物感というか、異質感というか。あるんです」
「鋭いな、奴らは畳まれた空間に干渉している。多次元の波を放ってくるから注意しろ。意識にも干渉してくるし、そもそもの『事実』に干渉してくるものもいる」
「ちんぷんかんぷんです」
「大丈夫だ、我もだ」




