僧侶の遺した日記 35 「不和」
下へ行くほど暑さは増していくようだった
この暑さの中に……本当にお姫さまがいるのだろうか
「ぐっ、この!」
ガァン!
リザードマンの分厚い鎧は勇者の力で貫くのは難しそうだった。
「奥はやるから手前の勇者とやり合ってる方を頼む。私は吹っ飛ばすのは得意だが精密な魔法はてんでダメなのでな。」
「なるほど、分かりました。」
ドカーン!と奥のリザードマンは魔女の爆破魔法で吹き飛ぶ。
スッ……と賢者は風の刃でリザードマンの装甲の隙間を縫うように切り裂く。
「ふぅ……ありがとう。助かったよ。」
「後衛職が多いとこういう時は便利だな。私だけだと勇者ごと吹き飛ばしかねん。」
「特に魔女は狭い所は苦手そうだもんね。大体爆破して終わらせようとするし。」
3層目までは順調だった。と……思う。
4層目、崩落した瓦礫から5層目へと向かう時だった。
「おい!いい加減にしろ!目新しい魔物を見かけたら解剖始めて……急ぎじゃないのか!?」
「研究対象は植物も含めて生物全般ですので、特に魔王領など次いつ来れるか分かりませんしその場で記録を取らないと。」
「チッ、話が合わん!」
そこから2人は距離を取るようになってしまった。
6層目、7層目に崩落はなく、ラミア、デュラハンと連戦し、勇者の消耗も激しかった。
「ごめん、このペースだと私……魔力が尽きそうかも。」
「治療は私も手伝いましょう。ただ、そもそもの魔力上限が低いので気休め程度しか補助出来ないかもしれませんが……。」
賢者が効率よく魔法を使っていたのは……自身の欠点を補う為だったのか……。すごい魔法を連発しても息切れしない魔女がやはり別格なんだろうな。
「これを持って治療しろ。気休め程度には楽になる。」
「え?これ……魔女の杖でしょ?……?!凄い魔力効率……これならまだまだ治療出来そう。」
「そうか、そんなにか?ならこのダンジョン攻略中は持っているといい。威力増幅の杖にでも好かれた方が私は良かったんだがなぁ……。」
「みんな、ありがとう。もう大丈夫だ。先へ進もう。」
8層目に入ってからずっと地鳴りの様な音が聞こえ続けていた。9層目に入った時にその原因は分かった。
9層目『大緑蓮回廊』
大きく口を開けた大穴の底からマナが少し吹き上がっている。
「何ここ……かなり降りて来たと思うのだけど……この大きな穴は……何?マナが下から上へ吹き上がっているけど、外からは全然分からなかったよね?」
「過去の記録にもこの層にこんな物があると記載はされていません。どうしてこんな物が……あの上の方……転移の門でしょうか?常に開き続けているとはどういう仕組みで……。」
「いや……あれは……次元の裂け目だな。マナを吸い上げて別世界に送っているようだ。何のためかは聞くなよ?私もわからん。」
魔王城の結界を作り出している魔晶石を守るためのダンジョン……それ以外の意味があるのだろうか……?
回廊
「そういえば賢者さま、煉獄館の回廊で何考えてたんですか?」
「あのようなもの我は3000年聞いていなかった。次元門まで使って一体どこにあの量のマナを送り続けているのか……。」
「心当たり……ないんですね。」
「北を統べていた者が知らんのだ。碌なものではないだろうよ。」




