僧侶の遺した日記 31 「賢者」
初めて手を繋いだ
ちょっと照れくさいから、みんなの前では手放した
「皆の者!一時静まって欲しい、……うむ、この歓迎の宴の場は、此度、祝いの場にもなった!新しい番、勇者と僧侶に祝福あれ!!」
メイフィスが皆の前で祝辞を送ってくれた。
幸せだった。昨日今日会った私たちなのにこんなにも祝福の言葉を……。
魔女は……開いた口が塞がってない……そりゃ驚くか…………私もだよ、と声を掛けてあげたかった。
ッッッドーーーン!!!
急に地鳴りのような音がひびく。
「勇者!僧侶もそこに居てくれ!俺が見てくる!!酒飲んでない男衆何人か俺に着いてきてくれ!」
女戦士と数名が武器を手に音が聞こえた方へと向かう。
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数刻程すると女戦士と男たちに混じって一人……魔法衣を着た男が一人。ガリガリと何かを書きながら前も見ずに歩いている。
「なんか、王都の賢者……らしいけど。一人でここまで来たらしい。」
「魔晶石に跳躍の魔法を限界まで高め、私自身は認識阻害の魔法でここまで跳んで来ました。上手くいくかは12%程でしたが成功して良かったです。」
だいぶ可能性低いのに良くまぁ……。
「こやつもお主たちの仲間か?」
「い、いや、知らない人だ。どうしてわざわざ危険を冒してまで魔王領に?」
「ああ、魔人が討伐されたと聞いたので、そちらの解剖を……と思ったのですが。遺体は存在してなかったのでね。事情を聴こうと思い。こちらまで来ました。丸々3年、砦からここに来れるだけの魔晶石の手配に手間取りまして。流石に戻ってこないのなら亡くなってるかなとも思いましたが。10年以上砦に顔を出してないパーティなら可能性ありとふんでこちらに来ました。」
めちゃくちゃな人だな……。なんとなく……だけど、第一印象はあまり良くなかった。
「あぁ、あの魔人ならこの世界では加護があるのでな。別の世界に飛ばして加護なき奴をすり潰した。次元魔法だよ、転移の応用だ。」
「なんと!そんな魔法が存在するのですか!?禁呪ではなくオリジナルですよね?聞いた事もありません。術式など詳しく伺っても構いませんか?」
「うーむ……別に構わんが……。少し待ってくれないか?今勇者と僧侶で取り込み中でな。」
賢者にも簡単に事情を話す。私たちがここに長期間滞在してるわけではなく雪原で死んでいた事。つい先ほど私は快復した事。勇者に先ほどプロポーズされた事。それが本当に今さっきの出来事である事。メイフィスと私たちにやり取りは伏せて説明した。
「なんとめでたい!おめでとうございます。タイミングが悪かったですね。失礼いたしました。」
「うむ、式の日取りを決めようかのう。儂の一存ですまぬが一週間後としようか、せっかくなので儂からも二人に贈りたいものが出来たのでな。」
式……どうしよう、どうしようどうしよう。色んな事があった日なのに、勇者との事で頭がいっぱいになってる。幸せな気持ちでいっぱいだった。
紅い魔晶石
「ゆ、ゆ……勇者さまに貰ったあの魔晶石……。け、けけけ、結婚指輪に使われてた物じゃないですか?!うぁぁぁ!なんて事だぁぁぁ!!!」
「なるほど、あの小さな魔晶石。大きさの割に膨大な魔力を秘めていると思ったが、そういう事か。」
「魔人の魔力、勇者、僧侶、私、それにおまけで賢者まで。まぁ時間さえ掛ければなんでも出来るような魔晶石の完成だな。神話級の魔晶石だったが。まさか私が救われるとはな。」
「ああぁぁぁ!」
「いい加減うるっさいぞ!!使った物は仕方ないだろ!」




