僧侶の遺した日記 29 「真実」
嫌な夢を見た
もう見なくなって久しい……魔族からの問いかけの…………
意識が戻って初めての感覚は頭の中、目の奥、喉を虫が這いまわってるかのような気持ち悪い感覚だった。
声にならない声を上げながら暴れまわったそうだ。
3年、死んでいたそうだ。私は残念ながら死体の損壊が激しく、この村の施設では蘇生出来るか怪しいレベルをなんとか蘇生してもらえた。
ユキムシと呼ばれる久遠の雪原特有の魔物に襲われた。
やはり卵を植え付けられたらしい。刺された直後に吐き出され。すぐに人の神経に絡みつき除去の際には想像を絶する痛みが伴う。
どうやら毒の小瓶のおかげで孵化した虫が少なく私の全損は避けられた。
体の卵の除去は実際とんでもない苦痛だった。両腕を拘束具で固定され、口は堅い木の根をしっかり噛んでいるように言われ、足を四人の屈強な男に抑えられていた。
最初はそこまでする必要があるのかと思ったが。麻酔を打ってもらってなおの激痛。神経に響くからか気絶するような痛みのはずなのに意識が全く途切れない。
全て除去し、治療をしてもらったが、サソリの時の怪我以上に痛々しい跡がおなかに残ってしまった……。
勇者と魔女は最初に救助をしてくれた戦士と共に村の案内をしてもらっているそう。すぐに戻ってくると聞かされ、少し待っていると。
ドオオオン!!
と地鳴りのような轟音が響く。心配だ、絶対魔女だ。
音が聞こえてもなかなか戻って来ない。凄く心配だ。
ようやく戻ってくる。物凄く心配している勇者……。
轟音の原因もすぐに分かった。村の中に魔神。この村を作ったのも魔神……。私も同伴で来るよう言われたらしい。
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魔神メイフィス、最初の魔神。雄山羊の角に顔、元人間と聞いてもこれはどう見ても……。
「ふむ、来たか。少し奥で話そうかの」
促されるまま村の奥の高台に連れて行かれる。
「目の前には魔王城……か、良い趣味をした場所だな?」
「戒めのつもりで作った村と、この場所じゃよ」
「戒め?」
「魔王、と人が呼ぶ存在は、ただ使い勝手の良いマナの貯蔵タンクだったんじゃよ。元人間の……な」
言葉にならなかった。私たちが聞いていた話は……魔王が魔族を作り、魔物を作り、全ての不幸の元凶だと聞かされてきた。
「続けようかの、魔族が魔王を作り出し。マナを集め、女神を殺そうとしておる。もう、何万年とかけ……な。集めたマナはここではないどこかへ運んでおるようじゃが」
「どうして魔族は女神を殺そうとしているんです?」
「司教なのだろう?お主、司教以上なら神話の全文を見せてもらっておらんのか?」
「あ……いえ、私は特例でしたので……、見ることは出来たかもしれないのですが。あまり女神信仰や神話には興味がなくて……」
「やれやれ……、女神がこの世界を創生した時に、何の手違いか『別世界の人類である魔族とその世界の魔素であるマナ』を召喚してしまった事が現在に至るまでの人と魔族の不幸じゃよ。全ての元凶は魔族ではなく女神にある。エーテルを魔素として使い、体の構成物質でもある人類にとって、毒であるマナが溢れる世界であるのもこの女神のミスのせいじゃ。魔族は元の世界に帰りたいだけじゃ。そのために女神を狙っておる」
「ふむ……?筋は通っているな。だが、天使の行動や竜、深淵の魔物についてはどうなのだ。女神は魔族も魔物も魔王も排したいようだが、天使は別の目的があるように見えるが。特に私を付け狙う意図がわからぬ」
「智の魔人を自称してはおるがわからぬ事もある、特に深翠の魔女よ……深淵を師に持つそなたの方がかの魔物には詳しかろう。天使の行動についても、3000年ここにおるが一度も見ておらぬ。竜種については……儂が人であった時に西の地方に生き残りがおる程度の噂程度のものしか知らぬな」
「いや、ありがたい。西……か」
何を話しているのか全くわからなかった。つまり……魔王を倒す意味は……私たちの旅の意味は……。
「さて、本題じゃ、勇者よ。お主が魔王を討伐したら。次の魔王がお主になる。この旅は。ここで終わりにして欲しい」
私たちは、何のための旅をしてきたのだろう。これから、どうすればいいんだろう。勇者の決断に任せよう。
女神と天使
女神は神の眷属であり、天使は神の従者である。




