表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者は魔王を倒しました  作者: 匿名記号
焚章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/102

僧侶の遺した日記 28 「死の体験」

魔王門の時は必死過ぎて覚えてすらなかった


苦しくて、辛くて、冷たくて、寒くて、段々と暗くなる

「うぅ……僧侶さん……ご達者で……!ご武運を!!」

「あはは……私はほんと……ここの皆さんにお世話になりっきりだったので……本当にありがとうございました。」


「「「魔女さまあああ!好きだあああ!また罵ってくださあああい!!」」」

「あああもう!!うるさいうるさい!二度と来るか!こんなとこ!」


「別れとなると辛いな韋駄天の戦士……お前と共に戦場を駆けたかったぞ。」

「兵長の槍術、かの槍神にも劣らない技術かと思います。お会いできて良かった。」


「勇者どの、ここに来る前より一層強くなられた。ご武運を。」

「ありがとう……行ってきます。」


 別れの挨拶もそこそこに私たちは砦を出た。

 ついに……砦を出て魔王領へと入る。

 旅の始まりからあった不安は今も拭いきれない。勇者は死にかけるような事が何度も、私も一度死亡した。魔女が居ても……だ。

 魔女は魔王門で使った数々の魔法で失った魔力の一割程度しか戻っていないらしい。それを補うために普段は使わない杖も持ち出していた。


「ここから先は何が起こるかわからんのでな、派手な魔法の使用は控えて行く。まぁ……しばらく私は使い物にならないだろうがな。」

「魔王門を出てすぐ……久遠の雪原、魔法は使えないって話だけど。どうして……?」

「マナの作用なのかでかい封魔石が雪原下全体に埋まっているのか。魔族や魔物も魔法をほとんど使えないようだから後者だろう。私にとっては厄介この上ない場所だよ。」




雪原入りしてからが地獄だった。


 文献ではそこまで酷いと記載がなかった吹雪。毎日吹き荒び私たちの体力を奪った。風の防げる場所も魔物だらけで魔女の魔法がない私たちでは対処出来ないような数だった。

 加えて、私の治癒も全く使えない。肌に触れて辛うじて100分の1程度の効果がある程度だった。


10日目に転機が訪れた。

 辛うじて風と雪を防げる場所を見つけ。1時間おきに順番に見張りに立っていた。

 眠っている魔女に魔物が襲いかかり。自分では動けないような致命傷と毒を受けてしまった。普段は自身に常に結界を張っている魔女も、場所が悪かった……。

 私だ、見張り番をしていたのは…………私なんだ。


でも


 勇者が……「僕の見張りの番だった。本当にすまない」って……。

 必死に治療したが、上手く魔法の使えないこの場所では止血するのが精いっぱいだった。

 勇者は、想像以上の雪原の過酷さを思い知り、一時撤退する事にした。


 考えが甘かった。明るくなって、外に乱雑に置かれていたのは、これまで迷わないようにと突き刺してきた標の旗だった。魔族の仕業だろう……雪原の魔族クロセウス……。


「私の事は置いて行け。」と言う魔女、置いていけるはずがない。私のミスだ……。私の……。必死で看病した。私の食事のほとんどを魔女に食べてもらった。


「なんだか魔王門の時とは逆になっちゃったね。」

「う……く……、まったくお人よし集団だよお前たちは……。」


 なんとかもう少し……もう少しと歩を進める。


24日目

 食料が完全に尽きた。

 何日も前から木の根を口に入れ飢えを紛らわせていたが……ついに尽きた。


25日目

 何か……食べるもの……せめて水…………。


26日目

 雪原入りして数回しか見たことのない、晴れた日だった。勇者は近くの林に何か食べる物を探しに行くと出かけ、戦士は手ごろな雪山があったので横穴を掘っていた。

 私は魔女の傍で他愛のない話を魔女としながら野営の準備をしてる時だった。


トン


 全く気付かなかった。空腹と、久々の晴れ間で油断していたのだと思う。

 ぁ……これ……ダメだ。体に何か出されてる。


「ぁ……え………………ぅ?ご、、、ごべ…………ん……。」


 羽虫の魔物を一瞬で片づけて戦士に抱えられる。意識が朦朧としていた。


 その夜。勇者と戦士の会話は全くなかったと思う。

 ごめんなさい。足手まといで……ごめんなさい。


 直後、物凄い轟音が聞こえ、勇者と戦士が何かと戦っている様子だった。

 しばらくして、勇者だけが横穴へと帰ってくる。手には三本の小瓶が握られていた。魔族が……現れたのだろう。あの魔族は生きた生物を氷像にして苦しむ様を眺めるのが趣味だそうだ。死んだ生き物には興味を示さない。

 氷像は呪いだ。この雪原でも使える……。氷像にされて死亡したら蘇生も出来ない。


 だから、私たちは事前に話し合い。魔族に出会い。勝てそうにない場合の最後の手段として。毒の小瓶を持っていく事にした。あるかどうかも今はもう分からない。過去、魔王領へと旅立った勇者の末裔の村の人達に発見される事を願って。


 少しでも見つかりやすいようにほんのりと光る魔法の文を取り出し。小瓶の中の液体を……魔女に飲ませ、私も飲む。魔女をなんとか勇者と二人で引きずりながら横穴から這い出る。


 その後の、死ぬまでの間隔が……今も……脳裏に焼き付いて離れない。

雪原の賭け

「どうして1000年も未踏の地でそんな賭けみたいな事したんですか?」

「王都宛に、時に川から、時に空から1000年で数通だったらしいが文が届いていたらしい。勇者の村より、と書かれたそれは、魔王領側に行った1000年以上昔の勇者の生き残りが作った村があるんじゃないか。と考えられていたようだ。」

「本当にギリギリの賭けだったのだな。」

「おかげで2-3年氷漬けだよ。ほんと碌な旅ではなかった。」

「その割には魔女さま、楽しそうにお話してますけど?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ