僧侶の遺した日記 25 「休養と手紙」
痛覚神経を刺激する呪いと聞いたが
体は想像以上にボロボロだった
「筋繊維も骨も、内臓の一部までボロボロですなこれは。療養には最低でも1年はかかるかと思われます。」
そんな……せっかく生き延びたのに、私の旅はここまでなのだろうか。
勇者と魔女に話そう、幸いなことにここには神官職は居ないが精鋭と呼ぶに相応しい兵士たちもいる。私1人抜けても……。
「あ、勇者……魔女は……?」
「診断終わったのかい?魔女は少し魔王門直下の調査をするとここの兵士たち数名と出かけて行ったよ。」
「あの……えっと……、私の体、思ったよりボロボロみたいで、療養に1年って、もう森林で10年近くも足止めをしてるし、これ以上私のせいで足止めさせるわけには……」
「何言ってるんだ、仲間だろう?君が治るまでここで療養しよう、僕はいつも……実力不足だ、ここの兵士たちと修練を積めばマシになるかもしれない。丁度いいよ。」
「勇者……。」
いつも優しい勇者、だから私はここまで頑張れた。これからも……頑張ろう……頑張って治して……魔王を倒して……魔王を…………倒して……その先は……?
「勇者、小娘も、ここに居たか、少し話がある。」
魔女が帰ってきた。
「ははっ、魔力尽きちゃった。転移魔法ってさ、実は物凄く燃費悪くてさ……、嘘をついていた。私は置いていってくれ。」
「何言ってるんだ?気づいていたよ、僧侶もリハビリしないといけないし、しばらくここに滞在しよう。魔女は魔力の回復に努めてくれ。無理をさせて、本当にすまない。」
「魔女……ごめんね……転移魔法なんて普通あんな連発無理なのなんてここの兵士ですら噂してたよ。呪い、体の筋肉や内臓もボロボロにしてるわ回復魔法も受け付けないわで、ちょっと時間かかるかも……ごめん。」
かなり驚いていた。私もそうだ、相手に気を使い、自分に自信がない。優しい魔女さま。とんでもない魔力と魔術を持つ魔女も……一緒に過ごすとなんて事のない、一人の人間だった。出会う前にあんなに警戒していたのが嘘のように今はもう打ち解けている。
「そ、そうか。なら、私も都合が良い。魔王門下の遺跡だが、マナの瘴気があった。あそこで私は魔力の補充をしている。何かあれば呼んでくれ。」
魔女は数人の兵士を連れてまた魔王門側へと消えていった。
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エィトロ撃破から数日が経っていたが……。リハビリはあまり上手くいっていなかった。歩けない……情けない。勇者に肩を持ってもらい。ベッドに寝かせてもらう。
「ごめんなさい、まだ……上手く歩けなくて……。」
「そんな数日で治るような呪いじゃない、ゆっくりリハビリしていこう。」
コンコンコン、とドアをノックする音がした。
どうぞ、と勇者が声をかける。
「失礼致します。先程、勇者さまの妹さまのお部屋を清掃中の使用人から、お手紙……遺書……でしょうか?を発見したとの報告があり。こちらまでお持ち致しました。」
兵士が足早に部屋を出る。
「これ……あなた宛……かな?」
「多分……一応魔女も呼んでから開封しよう。」
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勇者が魔女を呼んで来た。数日前に会った時より顔色が良い。順調に魔力の回復出来てるのかな?私も頑張らないと……。
「さて、あの下女改め勇者さまの妹君の最後に残した手紙には何が書いてあるのかなー?」
「お、おいやめてくれ……、開くぞ。」
「…………え、これって……。」
最初は当たり障りのない挨拶、自分が勇者の妹だと言う事、が書かれていた。
その後、勇者が旅立った後の、長女のわかる範囲でのおぞましい、家族に起こった不幸が書かれている。
おじいさま……そんなに呆けて……。それに、冬がそんなに長く……?魔王の仕業なのだろうか。それに私のお父さんについても書かれていた。無事で良かった……。
「な、そんな……。」
「一度……家に帰る……?」
「………………。」
「いや……ここで帰っても、何の力にもなれない、このまま、進もう。」
手紙の最後には、私の娘を、魔王を倒したその後、娘の事をお願いします。と書き添えられていた。
崩れた魔王門前にて 2
「そういえば■■■の事もここで知ったんだったな。」
「え?そうなんですか?!お母さんなんか言ってましたか!?」
「い、いや、特には、勇者宛に娘を頼む位だったかなぁ。」
「はわあぁぁぁ、お母さん……、勇者さまに私の事を……。」
「勇者め……我に会った時にも探したい人がいるから……と一度帰ったのだったな。まさかあれが今生の別れになるとはな……。」




