僧侶の遺した日記 22 「魔女の力」
私の心配は杞憂だったと思う
でも、別の心配が生まれた
魔女が広場の真ん中に立ち、目隠しを取る。
「あの目の色……、あいつ……深翠の魔女……。生きていたのか」「なんて昏い目をしてるんだ……」「何百年も生きてるんだろ?なんで今更魔王討伐に?」「厄祭の申し出も何度も蹴って指名手配されてた時期もあるとか。今はどうなんだ?まだ懸賞金は生きてんのか?」
口々に話す兵士達を余所に魔女は一点を見ていた。私と勇者を一瞥すると。
左手を上に上げ。下ろす。
ッッッッッド!!
-----ィィィン
耳が震える程の轟音と共に魔女の目の前に黄色い雷が落ち。それを凍らせる。
…………ナニコレ?どうやって雷を凍らせたの?
魔女は左手の人差し指を顔の横で立て、クルクルと回している。
すると
轟々と大きな黄色い炎が現れ
凍った雷を溶かしていく……。
溶けた雷が弾け、その勢いで炎も消し飛ぶように消えていた。
全て詠唱なしで……雷とそれを凍らせた呪文はほぼ同時に。そのすぐ後にも超高温の炎を出していた。
「試しとやらは必要か?」
魔女が問いかける。
かなり遅れて部隊長が口を開く。
「あ、あぁ、これほどとは……。不要でしょう。魔女殿の試しは不要とする!」
魔女が気怠そうに、つまらなさそうにこちらに歩いてくる。私や勇者の前で見せる態度とは明らかに違った。
その間に10名程の兵士が遮るように立ちはだかる。
「……なんだお前ら。懸賞金目当てか?それとも私を捕らえて見世物にでもするか?目をくり抜くのか?どれも叶わん。そこをどけ」
話を聞いて居なかったのだろうか。兵士たちは退こうとしない。
「おい!お前ら本当に」
「すっげえええええかっこよかったっす!」「どうやってんだあれ、なんの詠唱もなしに。都の賢者さまでも無理だろあんな凄い魔法の詠唱なし」「私の魔法研究に付き合ってもらえませんかね?魔女さまの見解をお聞きしたい」
魔女が珍しく驚き狼狽えている。ように見える。
「な……、な……?!わ、私は忙しいんだ!散れ!散れ!!」
バツが悪そうにこちらへと早歩きで来る。
「1000年生きた魔女さまはお忙しいようで?」
「うるさい!小娘は黙ってろ!それに私はまだ1000歳越えてない!!」
「あ、あの人たちの相手はいいのかい?魔女の事かなり気に入ってそうだが……」
「いいんだ、あの手の奴らは放っておいてもここに滞在している限りは絡んでくるよ。相手をするのはげんなりするが……、お前たちに迷惑が掛からん程度にはなんとかする。気にするな」
口も悪いし人の事興味なさそうなのに……この人は物凄く周りに気を使ってる。1000年近く生きてきて……こんなに不器用な気配りしか出来ない生き方って。どれだけ人に裏切られてきて。それでも信じてる人なんだろう。
「ここに居ましたか。試しも終わりましたし。部隊長がお呼びですのでこちらへお越しください」
「あ、はい、わかりました。僧侶、魔女。行こう」
魔神戦、私や勇者だけならいざ知らず。最初から魔女も参加しての初の敗北……。
魔法と詠唱
この世界の魔法は魔法を発現させるための術式を編む行為の事である。
言霊と術者のイメージで魔法の顕現を行っている。無詠唱とは頭の中のイメージのみで行う。無詠唱はほとんどの場合魔法の威力や規模をかなり小さくしてしまうため戦闘で行うものはほとんど居ない。
魔法の同時使用は詠唱無詠唱問わずイメージ出来ても発露させる事が出来るものはほぼいない。無詠唱を基本とする天使や魔族ですら同時使用するものは確認されていない。




