僧侶の遺した日記 21 「2対2」
緊張で胃がキリキリと痛んだ
足を引っ張らないようにしないと……
「これより、魔王門砦兵士2名と勇者、王都司教2名との試しを行う!前へ!司教さまには女神の加護がございます、申し訳無いのですが咎人の腕輪の着用をお願いします。司教さまもご納得の上で装着されますと女神の加護が一時的に無効化されます。」
「えぇ……大丈夫です。」
審判を行う兵の声が砦内の広場に響く。
緊張で手が震える、魔女も見ている、砦を率いる部隊長さんもこの場にいる。不甲斐ない所を見せれば旅が終わる……。
…………終わった方が良かったんじゃなかったっけ……?いや……騎士様の犠牲が無駄になる。どうして私はいつも無駄なことばかり考えてしまうのだろう。
「開始!」
一瞬、考えすぎていた。
ドッ!!バーン!
「あっ!ぐっ……。」
「なんだぁ?王都付の司教って聞いてたから加護なしでも結界だの防御陣だのの一つもあると思ったら丸腰とは。俺ら舐められてんのか?模擬戦用の武器じゃなかったら今頃もう真っ二つだぜお嬢さん。」
壁まで吹っ飛ばされるとは……。流石は魔王門の手前にある砦の常駐兵士達。
「僧侶?大丈夫かい?」
「うん、大丈夫、まだ戦える。」
まだこれくらいなら、万全の状態でここまで来た。自身に回復魔法を唱える。
鮮やかな青い煌めきと共に傷も痛みも消える。
「おー流石司教さま、一気に戦闘不能にしないと長引きそうだな。おい。」
「おぅ。行くぜ。」
兵士二人が私に向かってくる。先に私を倒すつもりだろう。1:1で普通に立ち向かっても勝ち目はない。なら……する事は……。
「なんだ、勝負をあきらめたのか?」
兵士が剣を振り下ろす。
ガィン!!
小さい結界で兵士の攻撃を防ぐ。
「ちっ、硬いな。」
ガァン!ギィン!!ガッ!
二人分……。集中しろ……太刀筋は速いが素直で直線的……。大丈夫。
「くそ!二人がかりだぞ!なんて硬い結界だ!」
「僧侶……ありがとう時間稼ぎ。」
勇者の方を見る。
大小様々な石のつぶてを巻き上げ、その中心に勇者は居た。つぶてと共に兵士へと走り出す。
「うおぉぉ!」
「ぐ……うぉ!」
ガガガッ!ドッ!!
つぶてと勇者の一太刀で兵士一人が倒れる。
ドン!
ともう一人の兵士に勇者が蹴飛ばされる。
「ぐっ……!」
「くそ、なかなか上手い事石と風を使うじゃねぇか。だが二人相手じゃ少しばかり足りなかったようだな!これで……」
ガッ!ドサッ
言葉なく兵士が倒れる。
「わ、私も戦えるんだから……!」
「勝負あり!勇者殿、見事な風の魔法ですな。司教様も流石の結界です。うちの精鋭二人がかりの剣戟を全て小さな結界で防ぎ続けるとは感服致しました。」
「ははっ、僕は二人とも倒すつもりで頑張ったんだけど、結局僧侶に助けてもらってしまったね。」
「信じて防御に徹してたわけだし。ちゃんと勝てたんだから。自信持ってね。」
「さて、次は魔女さまですな。ご準備を。」
「……うむ。わかった。」
衆人環境だからか砦の手前からずっと目隠しをしている。あの状態で戦えるのだろうか……。少し心配だ。
砦の兵士
北方の王都の兵士の中でも精鋭が配置されてはいるが、辺境なのもあり乱暴な口ぶりのものや粗野な素行のものが多い。




