僧侶の遺した日記 20 「魔王門」
1000年前、魔神が現れたそうだ
それ以来、門は破られていない
道中の魔物は勇者が片付けていた。魔女は少し後ろをぷかぷかと浮きながら何か考え事をしているようだった。
「まだ歩けそうかな?もう着くと思うのだけど。」
「大丈夫だよ。そんなに辛そうに見えるかな、完治してるんだから大丈夫大丈夫。」
余程私を守れなかったのを気にしているのだろうか、勇者が過保護なまでに私を気遣うようになっていた。
そうこうしているうちに魔王門前の砦に着いた。
「これが……人類と魔族の領域の境目……魔王門……。すごく大きい……。」
「一応、この砦までは僕が向かっていると通達が行っているはずなんだ。だけど……10年以上も前の通達だ……本来なら数ヶ月で着いているような場所。変な疑いを掛けられてなければいいのだけど……。」
多分……大丈夫のはず……ちゃんと私の通達も届いていれば……。
「止まれ!ここは魔王門前の城塞だぞ!冒険者であれば大森林は逆側だ!!」
「あ……いや……僕たちは……。」
「失礼、北方王都付司教の通達が10年程前に届いていると思うのですが、砦の責任者の方に一度確認して貰えないでしょうか。」
「10年……司教……聞いていたような。そこで少し待て。」
そう話すと二人いた門番の一人が奥へと消える。
少し待つと帰ってきた。
「失礼した。まさか本当に王都からここまで10年以上かけて来るとは……。」
「いえ、文が届いていたなら良かったです。」
「ほう、なかなかやるな小娘。」
「10年掛かる想定だったのか……僕の修行……。」
本当は来ないかもしれない期間空くかも……と書いたのは黙っておこう。
「それで……あの魔神に挑まれると?倒す算段はあるのですか?」
「あ、いえ……特には……。」
「無闇に挑んで死なれても困る。先にうちの兵士たちとの試しを行ってもらいましょうか。この砦に滞在している兵はこの国でも、遠征に出ている者たちを除けば最高の精鋭揃いです。敵わぬようではとても魔神には勝てませぬ。構いませんね?」
「確かに……わかりました。」
「わ、私は後衛職なのでどうしたら?」
「ふむ、では勇者殿と司教様のお二人でまずこちらの兵二人と戦ってもらいますか。魔女殿も含めて三人でも構いませんが……。」
「いや、私はそこの二人の後で良いよ。二人の連携、私も確認させてもらうとしよう。」
「ではこの砦の責任者にも話を通して来ます。」
二人……私と勇者で……。そういえば旅に出る前は彼のおじいさんが、旅に出た後はほとんど彼一人で戦い、その後に治療。二人で戦った事がなかった……。どうしよう、足を引っ張らないようにしないと。
魔王門砦
900年前に建造された重厚な砦。
エィトロは一度門から離れて王都へ侵攻を始めた事があった。
その際の犠牲者は兵士と民を含めて10万人を越えた。当時の精鋭、更には中央聖都の若き竜帝、当時の聖女まで参戦し、あの門まで押し戻す事しか出来なかった。当時の戦いで竜帝以外は死亡が確認されている。
その後、あの魔神をあの場に留めさせるために行われる通称『厄祭』が50年に一度行われる。エィトロの使う呪いの代償がその場から約50年動けなくなるために、その時々の英雄たちは生存率0%の戦いを強いられ続けている。




