僧侶の遺した日記 15 「森林に住む魔物」
森は広大だった
人間の把握している範囲は、実に少なかった
氷針樹……建材に出来ないかと少し枝を切り出して見たが枝がホロホロと崩れる。建材以前の問題だった。
ある程度滞在するのなら雨風の凌げる建物をと思ったが、結局何日かうろつき、洞窟を見つける事が出来た。奥は……どこまでの深さだろうか。
「ふむ、なにかいるな?警戒は必要だろうが強力なコアモンスターの気配はせんな、マナの揺らぎが大きくはない。」
「えぇ……?!大丈夫なのそれ。寝てる間に襲われたら。」
「深入りして罠だらけでも困るからな。こちらも感知魔法を設置してはおく。むしろ入口から来る方を警戒しろ。」
魔女が警戒していないのなら大丈夫……かな?
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数日洞窟周辺で滞在してみたが奥からモンスターはこなかった。
氷針樹に来てから1週間、勇者はコアモンスターどころか通常のモンスターに苦戦していた。
猿型や鳥型、立体的な動きをするものから狼のように群れで連携して来るもの、じっと樹や地面に擬態し急に襲ってくるもの、戦闘中でも気を抜く時間が少しもない。
勇者は何度も死にかけていた。死ぬ直前まで助けない魔女に苛立ちもした。だが……これくらいしないと魔王討伐は到底無理なのだろう。魔女がいれば、そうも思った。でもきっと、勇者が倒すから意味があるのだろう。
「うーむ、通常のモンスターにも苦戦するとは、気配で無理なら目を凝らしマナの微細な動きを捉えるというのもある。」
「それが出来るのはごく一部の達人か高位の魔法使いたちだけだよ……。」
「私も近接戦闘は得意ではないからな……これ以上教えるとなると専門職を頼るしかないな……。」
手詰まりなのだろうか、勇者は、もう少し時間を掛けて腕を磨く方が良かったのではないだろうか、だがもうここまで来てしまった。いや、ここで私が諦めて帰ろうと説得すれば……。
「よし、休憩も済んだしもう少し頑張ってみるよ。僧侶も……いつもありがとう。行ってくる。」
「あ……うん、行って……らっしゃい。」
勇者を見送る。ダメだな私は、すぐに口にしないと……ダメなのは分かってる。
「小娘……物思いに耽ってるところ悪いが……来客だ。」
「……え?あ、洞窟の中から……?」
気配……複数……?でも敵意は感じないような。
「オマエ タチ ニンゲン?ソコ イツモ イラレルト コマル。」
「ん?人語を話すのかお前たち。珍しいな、何百年ぶりだ。なんかカタコトだなどうした。そっちも人間に会うのは久々か?」
背筋が凍るようだった。話す……魔物……。でも……これ……。
「か、可愛い!何このもふもふした生き物!!?」
氷針樹の魔物
北方に位置する王都から更に北に位置するため年の殆どがマイナス気温である。そのため毛か肉に覆われた生き物が多い。




