僧侶の遺した日記 12 「旅の再開」
結局もう1年かかった、王都だけでなく、聖都でも学んだ。
2年でやれる事はした……はず。後は……2人を迎えに行こう。
「司教様……お達者で、女神の御加護があらんことを。」
「いえ、私などまだまだ……お世話になりました。」
本当に……お世話になった。運良く聖都の大司教の推薦と特例で、期間限定の司教として勉強させて頂いた。
一時とはいえ聖都の聖女さまとも御一緒出来たのはとても勉強になった。利発的で細やかな気遣い……私もあんな素敵な女性になれたらいいなと思った。
会えない期間もあったが勇者の成長もじゅうぶん……だと思う。
魔女の村に着く。
……廃墟は白い結晶と化している。天使に焼かれた廃墟……人の跡も白い影として揺らめいている。
天使に焼かれたものは魂を縛られる……この廃墟の彷徨う魂たちは深翠の魔女によって解放されているが……その残影は今もここに遺る……。
祈りを捧げ終わり木の洞へと向かう。
木の前には勇者が目を閉じ立っている、右手に剣を持ち……瞑想しているのだろうか。
剣をゆっくりと自身の前に持っていき、一閃、二閃、三閃、今まで見た中で最も力強く、軽やかで、早かった。
「凄い、私の父よりもう強くなったかも。」
「あれ、僧侶……来てたのかい?すぐ声をかけてくれたら良かったのに。」
「私も今さっき着いた所だよ。ところで、魔女さんは?」
「数日前に出かけてたかな。たまに何日か帰ってこない事があるんだ、遠出の調査……をしてるらしい。」
調査……何のだろう?
「なんだ、小娘来てたのか。」
上から声が聞こえる。魔女は丁度帰ってきた所だったようだ。
「おかえりなさい。何日も掛けてなんの調査を?」
「ん?あぁ、天使について少し……な。王都の森での一件、あそこまで遠出をしたのは幼少の頃ここに連れてこられて以来だったのでな。」
「何か関係あったのか?」
魔女の説明はとても興味深かった。
・この村の木の洞を中心に天使にのみに有効なかなり強力な結界が張られている事。
・マナの噴出口や魔王城など、マナの瘴気が濃い場所も天使の活動が制限される事。
・深翠の魔女の命を執拗に狙うのは魔女の得意な呪文と恐らく本来の自分の種族が関係している事。
・魔女はおそらく、この大陸最後の『竜種』である事。
「魔女の生まれはこの北方領の街だと聞いたが……。」
「いや……合ってはいるが孤児だったよ。記憶もある、魔物で滅んだ村の出だった……。私もてっきりその村の、うっすらと記憶にある両親が実の両親かと思っていた。何処かから拾ってきたのかもしれんな……。その後、街で小間使いとして買われたんだ。」
「そ……んな過去が。」
「さて……情報共有もすんだな。では勇者の最後の試練、あの聖森で戦った話す天使と戦って貰おうか、魔王領に向かう途中のどこかで現れるだろう。この地以外は結界などあってないようなものだからな。」
あの天使と勇者が……今の勇者でも勝てる未来が想像できない。
でも魔王となると……もっと……。
少しの不安があった、でも、旅は再開された。
竜種
天使に有効な雷の呪文を得意とした種
もう何百年と発見されていなかった種
深淵の魔法使いが大陸最後の生き残りの保護に成功した




