僧侶の遺した日記 4 「手遅れの追跡」
彼が一人で王都へ行ったと聞いた
なんで?!どうして……いてもたってもいられなかった。
父から早馬を貰い王都へ向かった。
村の周辺は危険な場所も多かったが、街の周辺までくると魔物よりも動物たちの方が多くなり。比較的安全になってくる。
村に守られた街……王都……いつ来ても気分の良い場所では無い。そう思った。
王都に着き、彼の噂がないか確認して回る。
どうやら王から魔王討伐の任を与えられたそうだ。
魔王?!自身の村近隣の魔物にすら苦戦どころか、戦えないような彼が……魔王討伐など果たせるはずが……すぐに説得しないと……。
「あれ……どうしてここに……?」
すぐに見つかって良かった。彼はお爺さま程大きな体ではないが、屈強そうな老騎士……老戦士?の格好をした男性と一緒だった。
「勇者……になったと聞いて、慌てて追いかけたんだよ……。」
「勇者殿……こちらは?」
「あ、彼女は僕の村の周辺をよく警護してくれていた傭兵団の団長さんの娘さんです。」
彼が老騎士に説明している。一緒に……旅立つ人なのかな?
「え……っと、勇者……は、その人と旅立つ……のかな?」
「左様です。昔むかしに憧れた勇者殿との英雄譚に詠われるような旅を……とは思っておったのですが……。ここではなんですので、一度私の家に行きましょうか。」
「あ……はい。」
連れられて来た場所は、王侯貴族が住むような大豪邸だった。メイドさんも何人もいた。庭師さんもいた。執事っぽい人もいる。
「あ、え?これ、こ、ここ、え?」
「ああ、昔は北の王都に伝説の騎士あり!と詠われる程度には有名だったんですが……。流石に歳を取り、退任し、傭兵や戦士の真似事をしながら、王都騎士指南役として過ごしておりました。」
「超有名人じゃないですか……。」
まさかそんな人と彼は一緒に旅に出る事になるなんて……。そういえば……ここ50年ほど、1人も勇者の輩出をしていなかったと聞く……この人は……勇者に1人も出会わなかった……のか……。
客間のような所に通された。お茶とお菓子がめちゃくちゃ美味しかった。
「さて、率直に申し上げると、一旦勇者殿とは分かれて行動しようと思います。」
「え?!昨日の今日で……一体どういう……。」
「ああいや、私もパーティの申し出した身、ここで旅の支度をしますので、勇者殿には旅立つ前のパーティメンバーの選定をお願いしたいのです。私は多少回復の心得ある聖騎士、パラディンではありますが……ちゃんとした後衛職として、魔法使い、僧侶は必要かと思います。」
話が……前に進んでしまっている。ここは……一旦……。
「あ、あの!わた、私が僧侶です!!ついていきます!」
「え、お父さんから許可は貰って……大丈夫なのかい?」
「父には早馬を返すついでに文も添えておきます。大丈夫。これでも傭兵団一の術師、なんだからね?」
「それは心強い……後は……魔法使いですな。王都からなら魔法都市が近いですが……もう1つ、気になる者もおります。」
「気になる者?というと。」
「勇者殿、深翠の魔女の伝承は、ご存知ですかな?」
勇者の村と王都の距離
かなり遠く、馬車で10日、早馬でも3日程掛かっている。




