深淵から覗く魔物
まお が う ゃこんにちは、こんにちは、こんにちは
ごきげんはいかがですか?
「女……よもや初弾で致命ではなかろうな?」
「ぐっ!あぁ……!!…………すいません、右目と右鼓膜、やられてます」
「……上出来だ」
賢者は笑っていたが……余裕があるようには思えなかった。
ふらふらゆらゆらと動いているソレは、ヘラヘラとこちらを見て笑っているように見える。
「なんですかあれは!コアモンスター?!あんな……アレは……」
「……ここに居るものがアレではないと報告を受けていたのだが……勇者に類するものなら知らぬのか?アレが、深淵の者だ」
………………そう……聞いていた特徴と余りにもかけ離れていた。あれが!!勇者さまを!魔女さまを……!!全身が総毛立つのが自分でもわかる。
「お前……何を考えておる?あの者は魔族が生み出した魔物とは全く異なる者だ。2人で勝てるような存在でもないぞ」
「いえ、勝算はあります……ですが……」
「………………ふむ、時間が必要か?3分だ、それ以上掛かるなら撤退するぞ」
私は笑顔で頷く、充分過ぎる時間だ。やはり、先に向かっていて良かった……。
賢者が女の前に立ち、右手を魔物へ真っ直ぐと向け、静止する。
ゆらゆらとゆれていた深淵の魔物はピタリと止まる。
「いいいいィィィィ!!!!」
「声は……誘い、その後の波紋が本命であろう」
ゾリッ!!ギイィィィィ!……ン
ドッッッガァン!
とガラスに爪を掻くような音が木霊する。直後、深淵の魔物の顔が一瞬歪み、爆発する。右手で手招きするように挑発する賢者。
「貴様……もしや……それしか能がないな?」
「イイイぃぃぃ!いいい!」
ドッドッドッゾリッギィィイイ!ン!!
波紋を連続で飛ばしてくる、明らかに冷静さを欠く連打だった。全て捌く賢者。
「ありがとうございます……賢者さま。もう大丈夫です」
女は右手に飛行に使用していた杖、左手に古びた……木の杖を持っている。右杖は蒼く強く輝き、左杖は優しい翠の煌めきを帯びている。
両の杖を重ね合わせ、深淵の魔物へと向け、女は何か呟く。
身構える深淵の魔物…………。
両の杖は光を喪っていた。
「くっ…………あっ………………はぁ……はぁ…………さぁ……い……きましょう」
「そうだな。確か7層目に掘削時に使用していた休憩所があるはずだ。そこまでは保たせろ」
「さすが……ダンジョン作った長ですね……そんなの聞いた事もないですよ……」
スタスタと深淵の魔物の方へと歩を進める。
深淵の魔物が叫ぼうとしたその時、声が出ない。自身の体が少しずつ白い細かな粒子へと変わっていた事にようやく気づく。
「治療後で構わぬ、あれを簡単に消し去ったその杖と術、説明せよ」
「はい……生きてましたら……必ず………………」
賢者に肩を持たれながら、私は気を失ってしまった。
……夢を見た。
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「勇者さま!勇者さま!わたくしも何か2つ名がほしゅうございます!深翠さまのような、優しく、深く、強いものが良いです!!」
「………………そうだね。キミは優しい、彼女にも負けない魔女になる。ただ……ごめん。僕が付けられるとしたら1つしかないかも」
「……え!わたくしはそれがいいです!お願いします!お願いします!!その名に恥じぬ魔女になります!!!」
「………………。うーん困ったな…………うん、分かった……。君はこれからこう名乗るといい……」
『終焉の魔女』
魔王は勇者に倒されました。
終を望む勇者と魔王、遺志継ぐ魔女の物語。
終焉の魔女について
世界に終わりを齎した魔女




