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妖異変超  作者: 青赤黄
人災の始まり
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異編2話 10月21日『人は竜に成ることもある』

 空中の文字を見ていると、ゴッと鈍い音が近くから聞こえて、「大丈夫ですか!」とすぐに神楽が音の方へと走る。文字から目を離して、神楽の方を見ると、頭から血を流している女性がいて、そのすぐ横には血のついたコンクリートのブロックがあった。ビルが切り取られた時に降ってきたのだろう。

 これは治せない。

 かすり傷などならすぐに治すことができなくもないのだが、こんなに大きい傷だとダメだ。ならすぐに119をするべきだろう。

 そうしようと携帯を取り出したのだが、その直後に空さんが「退いてください」と言って頭から血を流している女性に近づく。

 そういえば、空さんの能力は治癒系だったはずだ。

 やり方はちょっとアレだが。

 空さんは女性の髪の毛をかき分けて、傷口を見つけると、「すみません」と謝ってから、自分の手に唾を吐き出して、それを女性の患部に塗りつける。

 そうすると、みるみる傷は治るというわけだ。

 初めてやられた時にはすごくビビったが、その治り方はすごい。

 骨折や内臓破裂などは皮膚の上からでは治せず、患部に直接やらないといけないのだ。

「すみません、ここ任せていいですか?」

「おうとも、行ってきな!」

 そう言ってくれたのは陸さんで、お言葉に甘えてその場で背中部分だけ竜化する。ただの一般人に多く見られていだのだが、そこは後で零火さんに記憶消去を頼んでおこう。

 竜の羽が背中から服を破きながら生えて、また服を一枚ダメにしたと思いながら、空を飛び、周辺を見るために飛び回り、あることに気づく。

 街から離れるほどに正方形に切り取られている場所が低くなっていることだ。

 もともと高いところも上から切り取られて、ある場所で切り取りが止まっている。

 そして、街に近い方は高い部分しか切り取られていない。

 そしてその切り取りは上から見ると台形のような形になっており、もしこれやった人物が台形の細くなっている部分の先にいるのだとしたら、これは三角形となり、場所の特定が簡単になる。

 だが、それはあまりにも簡単すぎる。誘われているんじゃないのか?

 それに本当にそこにいたとして、こうもあからさまに自分の居場所を教えるようなことをするからにはそれなりの自信がある筈だ。もしこの切り取りがガード不能のものであるならば、こちらの竜の中で最強の防御力を誇る鱗なんてなんの意味も持たない。

 それにしても寒いな、空に飛んでいるからか?

 そう思ったが、違うということは下のビルにいる人を見て理解した。

 零火さんがいて、そのビルの下には元々はビルだったものが倒壊し壊れたものや。氷の滑り台があった。  

 あんなものが作れるくらい寒くできるのか。本当にすごい。

 改めて、「零火さん!」と声をかける。

 零火さんはすぐにこちらを向いて、「よお、お前もいたのか」と言ってくる。

 空から降りて、空を飛んでえた情報を話す。

「はい、そこら辺飛んでたんですけど、敵は近くにいないんですよ、ただ、三角状に正方形に切り取られている感覚が近くなってて、正方形に切り取られているところが遠いほど上になって言っているんです」

 なんか微妙に伝わらなくなっている気がする。

 その伝わりにくくなった情報を聞いて、零火さんと色々と考えていると、零火さんのスマホに着信があった。

 誰が今電話してきたのか気になり、「誰ですか?」と訊く。

 俺からの質問に零火さんは「変異の王」と端的に答える。

 変異の王。

 俺がまだ会ったことのない王。

 そもそもひとりの王に会えたこと自体が奇跡に近く、こうして交流を持てていることもすごいことなのだ。

 だが、もし会えるのであれば、変異の王とも会いたいものだ。

 そんなことを思っている間に、零火さんは通話を終えた。信用していいな?と言っていたのがものすごく気になるが、信じると最後には言っていたので、俺も信じることにする。

「己龍、ついてこい、変異の王が安全を保証してくれるらしい」

「そうなんですか、わかりました、行きましょう」

 全幅の信頼を置いている相手についてこいと言われたら当然ついてゆく。

 零火さんの後ろを飛んでいき、住宅街に入り、そしてとある児童養護施設にたどり着く。

 中に入り、零火さんに自分達の姿を他の人から見えなくする妖術をかけてもらい、中を歩いてゆく。

 そして、一つの部屋の前で零火さんは止まり、妖術を解いてから扉を開ける。

 中には少年が1人だけ、少年は窓辺にいて。窓からは切り取られたビルの跡が綺麗な正方形を作っていた。

 この子がやったんだ。

 それはすぐにわかる。

 超常的な能力を持っている人物に対して、この人がこんなことをするのかというのは考えない方がいい。

 どんな人でも、人を超えた力を持つと思い上がるし、この力を使ってやりたいと思うだろう。

 俺は初めて竜になった時、本気で言ってこてんぱんにされたから思い上がるなんてできなかったが、もしあの時竜王様に負けていなければ自分の力を過信していたことだろう。

 少年が零火さんに話しかける。

「どちら様ですか?今日僕に会いにくる人はいないはずなんですけど」

「君が街を混乱させなかったらここには来なかった」

 端的に、ここにきた理由を零火さんはいう。

 少年は不思議そうな顔をして、「どうして僕だとわかった?」そう訊いてきた。

 本気で言っているのか、それとも演技か。どちらにしても認めたことに変わりはない。

「聞いたんだ」と零火さんはすぐに答える。

 ここにいない変異の王から手柄を奪うことなく言う。俺だったら手柄を取ってしまっただろう。

 こう言う誠実な人が人の上に立つ器というものなのだろう。

「そう、わかった。どんな用事できたんだよ?」

「理由を聞きにだ。今すぐにでも氷漬けにしたいが、もしかしたら俺が納得できる理由かもしれない。それならば見逃すこともあり得る」

 少年の言葉に、零火さんはとても優しいことを言う。雷竜を宿している(いかづち)さんは甘いと言うのだろうけど。

「ふーん」と少年は落ち着いて見えるが、自分を攻撃しない零火さんに興味を持ったらしい。

「でも、これで今日僕はやることはやったから、今日はこれで終わるよ」

「またやるのか?」

「そうだよ」

 零火さんの質問に少年はすぐに答え、指を空中に何かを書くように振る。

「人が死んでるんだが、そこはどう思っているんだ?」

 そんな、零火さんじゃなくても、当然訊くような質問を零火さんはして、

「人が死ぬ?そんなのどうでもいいじゃないか‼︎」

 何が琴線に触れたのか、ありふれた質問に対して、少年はありえないほどに憤る。

「僕の父さんも母さんも世間に殺された‼︎だから世間の人間が何人死のうがどうでもいいんだよ‼︎」

 少年は自分の憤りを吐き出すように叫び、零火さんの琴線に触れる。

 何人死のうがどうでもいい。

 目の前で初恋の人を殺された人には言うべきでない言葉、

「だとしてもなぁ」

「ああァ⁈」

 少年も零火さんも、激昂する。


————その考え方は許せないな。


 気温が下がる。

 寒いなんてものじゃない。

 体が凍りついてしまいそうだっ!

 零火さんの吐く息は白く、それは白いまま消えずに残る。

 零火さんが気温を下げ、強制的に頭を冷やさせられた少年が、窓からは外に飛び出す。

 零火さんがその少年を追おうと窓辺に近づくが、目の前から物理法則を色々と無視した一辺がこの部屋の横や縦よりも大きい正方形が飛んできた。

 零火さんの氷はすぐには出せない。

 氷を出すよりも先にビルがぶつかる。

 そうしたら、零火さんは大ダメージを負う。

 それはダメだ!

「零火さん!」

 そう叫んで零火さんの前に出る。腕や脚なども竜化して、飛んできた正方形に爪を突き立て、両足を床にめり込ませて耐える。

 少しでも気を緩めると押し負け、倒れてしまいそうになる。

 ここで負ければこの施設が壊れてしまう!

 そう思い、さらに力を込めたところで、ビルからの押される感覚が無くなった。

 どうやら止まったらしい、どう考えてもおかしい止まり方だっだが、止まってくれたことに変わりはない。すぐに逃げた少年を追おうとするが、零火さんから「悪い、助かった」と言われ、返事をしたら

「すまん、ここのことは任せる」

 そう言われてつい反射的に「はいっ」と返事してしまい、後ろを向くともういなくなっていて、代わりにここの職員だと思われる人たちが入ってきて質問攻めをしてきた。

 それをかわしながら外に出ると、「すまん、逃した」と零火さんが言ってきた。

「いえ、大丈夫ですよ、ぼたゆきさんに調査頼んでおきます」

 フォローのつもりで言うが言ってからこれは塔回しにあなたにあの少年は追えませんよねと言っているようにも取られかねない。

 零火さんはそんな人じゃないけど。

 実際、零火さんは頼むと嘆願してきて、もちろん分かりましたと答える。

「あっ零火さん、すみませんが街で人に変身するところを見られました。記憶消去お願いできますか?」

「ああいいぞ」

 零火さんは快く引き受けてくれて、その場で解散となった。少しでも早く神楽の元に戻るために空を飛ぶ、なるべく高い場所を飛んで人とは思われづらくなればいいなと思いながら飛んで、神楽の元に着くと。

「あー、癒されるよぉ、やっぱり神楽は柔らかくていい匂いがして落ち着くなぁ」

「えー、そんなことないよー。縁連ちゃんも柔らかくていい匂いしてるよー」

 神楽と縁連がいちゃついていた。

「お二人さん、ここ外です」

「はっ、嫉妬してるのね、ほんっといやらしい、私みたいに神楽に抱きついて、あわよくば抱こうとでも思ってるんでしょう?これだから鬼月己龍って男は」

 なんだその言い草は、俺が一体どれだけのことをしたと思ってるんだ。

 確かにほとんど何もやってないが、児童養護施設に突っ込んできた正方形は止めたぞ。

 それに比べてこいつは。 

 やめ、ただの人と竜を比べても意味がない。こいつの言葉は受け流そう。

「お前、用事は?」

「終わったに決まってるでしょ?」

 何かに苛立っているような強い言い方で言ってくる。

 それも華麗に受け流して

「そうか、ならこれから3人で遊びに行くか?」

 もしよければ日頃の感謝として陸さんたち3人も誘うだけ誘ってみようと辺りを見るが、瓦礫が散乱しているだけで誰もいない。

「で?どうなんだ?行くのか?」

 反応のない縁連を急かすように言うと、暴言で返された。

「はぁ?なんで私があんたみたいなトカゲにも劣る、プラナリアよりも食物連鎖のピラミッドで下に属しているやつと一緒に遊ばなきゃいけないのよ?今だってあんたと話していて吐きそうなのを我慢してるんだから、それだけでもあんたは私に一生分の恩を感じるべきなのよ」

 前言撤回。

 受け流せねぇわ。 

 そこから10分ほど口喧嘩して、楽しそうに見ていた神楽が「私は2人と遊びたいなぁ」と言ったことにより、ちょっと遠くのゲームセンターまで行くことになった。

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