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妖異変超  作者: 青赤黄
人災の始まり
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妖編2話 10月21日『旧交を温める』

 少しの間呆けていたが、目の前で、空から人が落ちてきたのを見て、我にかえる。

「悪い、切る」

 鳳凰(ほうおう)に言って返事も聞かずに通話を終え、黒さんに電話をかける。

 黒さんならもうこのことは知っていて、白のスマホのGPSを辿ってここに向かってきているだろうけど、こっちからも連絡しといた方がいいだろう。

「白は無事か?零火?」

 電話に出てすぐに白の心配をする。

「はい、傷ひとつ負わせてません。安心してください、こちらの場所はわかりますよね?引き渡します」

「本当いつもありがとな、白を安全な所に連れて行ったら手伝うから」

「いえ、大丈夫です、お気遣いありがとうございます。でも白のそばで守っていてくれると嬉しいです」

「ん?いいのか?ならそうするが」

 どうぞどうぞ、ではこれで。

 電話を切って。

 今空に浮いた正方形から人を脱出させるために氷で滑り台を作る。吐く息が白くなっているからできればすぐに気温を元に戻したいのだが。なかなか人が降りてこない。そりゃそうだ、急にできた氷の滑り台なんて怪しいよな。でもこれで大丈夫だ、未だずっと登り続けているからいつか滑って降りなくちゃいけないことはわかるはずだ。

(しろ)、悪いが今日は黒さんが迎えに来るからもう帰ってくれ」

「やだ」

 やっぱりそういうか、さて、どう説得するか。

「帰ったらまた遊びに行こう。今度はそうだな、どこか行きたいところはあるか?」

「ならゆーえんち!黒も一緒に行くんだ!いいな、あたし様の命令だからな」

「わかったわかった」

 そう言って頭を撫でた所に黒さんが走ってきた。

「ふぅ、相変わらず、はぁはぁ、仲が、ヴェ、いいなお前らは」

 そう言って黒さんがぶっ倒れた所に、横一面だけが剥がされ続けたビルが一頭倒れて落ちてきてビルが砕ける。

 白のところに降ってきたのは凍らせて固定して、安全なところまで行ってから落とした、落とした先に魂魄がいたが放置。

 すぐにビルを砕いて出てきて「テメェヒデェぞ‼︎」と言われるが返事はしない。

「いや悪いな、零火、力使いすぎた」

「いえいえ、構いませんよ」

 そう言って、今日買った扇火の誕生日プレゼントを黒さんに預ける。

「これお願いします。帰ってきたら持ち帰るのでそれまで預かってくれませんか?」

「おう、いいぞ、それで中身はどんなのなんだ?」

「ただのパソコンですよ」

「28万したぞ!」

 なぜか胸を張る白を気にすることなく黒さんは言う。

「おー、いいの買ったじゃん。ちゃんと自分で渡せよ、ちゃんと帰ってこい」

「はい」と返事して袋を渡す。

 ちゃんと帰って、受け取らないとな、そう思いながらまだどこも切り取られていないビルの壁に足をかけ、氷と壁を凍らせて、それを繰り返して登っていく。

 空を飛ぶこともできるが、妖力を使いすぎるからなるべく使わない。

 屋上に着いた時、ふと思う。

 俺、さっきいくつ死亡フラグを立てた?

 2、3個はやったよな?

 俺死ぬのか?

 まあいいか、やることをやれれば。

「零火さん!」

 声がした方、空を見て、そこで羽ばたいて浮かんでいる鬼月己龍を見つける。

 近くで見ると、両頬に黒い鱗が付いている。さすが竜だなと思いながら話しかける。

「よお、お前もいたのか」

「はい、そこら辺飛んでたんですけど、敵は近くにいないんですよ、ただ、三角状に正方形に切り取られている間隔が近くなってて、正方形に切り取られているところが遠いほど上になって行っているんです」

 切り取られているのが密集しているほど低いところに多く、まばらなところほど上にあるということか、

「それは、これをやっている奴がどこにいるかはわかるだろ?」

「そうですね、でも敵の持っている能力がよくわからないので、あまり特攻はできないんですよ」

 そうだな、防御無効の切り取りだったら俺の『絶対零度』を使って作った『凍鎧(とうがい)』を使っても切り取られて殺される。

 それに、それを使っているのが妖怪だった場合、切り取り以外の攻撃も使うことができ、どんな攻撃かもわからないから攻めるのにためらいがある。

 そうしている間に、電話がかかってくる。

「誰からですか?」

「変異の王」

 己龍の目の前なのでそう答えて、電話に出る。

「なんだ?変異の王」

「その言い方をするってことは近くに己龍か神楽がいるんだね」

「そうだ」

「そっか、だよね、今日そっちいるはずだよね。えっとさ、今そっちでやばい異変起こしているやつの能力は一つだけだよ、妖怪じゃないただの人だから妖術に警戒は必要ない。そして家の中にいるから空から行けば近づける。場所はこっちで指示するからとりあえず飛んで」

「・・・・・・・・・・・・信じていいな?」

「別に、信じなくてもいいよ」

「信じるよ」

 ふわりと浮遊感があり、空を飛ぶ。

「己龍、ついてこい、変異の王が安全を保証してくれるらしい」

「そうなんですか、わかりました、行きましょう」

 即答すぎて、こちらに対する信頼度が高すぎることに少しプレッシャーがかかるが、守ることぐらいならできる。

 せめて守ろう。

 空を飛んでついたのは、どこにでもあるような何の変哲もない住宅街にある一つの児童養護施設だった。

 そこに妖術を使って自分と己龍の姿を消して、指示された部屋に妖術を解いてから入る。

 そこには1人の男が窓辺に座っている。

 いや、男というには若すぎる。

 15歳以下だと思うから少年だろう。

 少年から見える窓からは、[日本よ、私の願いを叶えろ]という文字が鏡文字になって見えている。そしてここからなら、正方形に切り取られたビルたちが重なり、一つの大きな正方形を形作っていた。

 ここからなら、そういうように切り取ることもできるのだろう。

「どちら様ですか?今日僕に会いにくる人はいないはずなんですけど」

「君が街を混乱させなかったらここには来なかった」

 少年は不思議そうな顔をして、「どうして僕だとわかった?」そう訊いてきた。

 見栄を張ることも考えたが、ここは正直に「聞いたんだ」とすぐに答える。

「そう、わかった。どんな用事できたんだよ?」

「理由を聞きにだ。今すぐにでも氷漬けにしたいが、もしかしたら俺が納得できる理由かもしれない。それならば見逃すこともあり得る」

「ふーん」と少年はあくまで冷静に見えるが、少し興味を持ったらしい。

「でも、これで今日僕はやることはやったから、今日はこれで終わるよ」

「またやるのか?」

「そうだよ」

 少年はすぐに答え、指をオーケストラの指揮者のように振る。

「人が死んでるんだが、そこはどう思っているんだ?」

「人が死ぬ?そんなのどうでもいいじゃないか‼︎」

 少年が急に激昂する。

 落ち着かせようと話を逸らそうと口を開こうとするが、

「僕の父さんも母さんも世間に殺された‼︎だから世間の人間が何人死のうがどうでもいいんだよ‼︎」

 なるほど、それが理由か。

「だとしてもなぁ」

「ああァ⁈」


————その考え方は許せないな。

 

 空気が冷える。

 空気中の水分の凍った小さな氷の粒が床に落ちてゆく。

 ふぅ〜と吐いた息が白いまま消えていかない。

 目の前の少年が体を震るわせる。

 多分だが、今の部屋の温度はマイナス10度くらいには行っているはずだ。もしかしたらマイナス20度かもしれない。

「俺は昔目の前で人が死ぬのを見てな、もう人が死ぬのを見たくない。だからお前がそういうスタンスでいるなら俺はお前を氷漬けにしてても止める」

 少年は歯をガチガチ鳴らしながら、窓からは飛び降りる。

 逃すのを防ぐために窓に駆け寄り足を氷漬けにしようとするが、目の前から正方形のビルのかけらが飛んできた。大きさは一辺10メートル。

 それが新幹線のような速度で飛んできた。

「零火さん‼︎」

 叫び、己龍が零火の前に出て、零火がビルを凍らせるより先に、鱗が生え爪が伸び尖り、硬質化する。その腕を使い部屋にぶつかった正方形に両指を突き立て、物理最強の黒龍の力を使いふんばり、圧倒的質量の物体を止める。

「悪い、助かった」

「いえ、いつも助けてもらってますからね」

 もう少し早く凍らせることができたなら、部屋が飛んできたビルで壊れることもなかった。

「すまん、ここのことは任せる」

「はいっ」

 音に驚いた人たちが部屋から出てきて、その人たちとすれ違い、気づかれることなく外に出て周囲を探すが、見つからない。

 逃したか。

 なら切り替えよう。今、どうやっても壊れたビル、死んだ人は戻らない。記憶を消してもどうしようもない。なら消せるやつだけを消そう。

 決断し、施設内に戻り、己龍を連れて外に出る。外に出る時に全員の記憶から自分と己龍の記憶を消す。

「すまん、逃した」

「いえ、大丈夫ですよ、ぼたゆきさんに調査頼んでおきます」

 頼む、というと、己龍はわかりましたと言って空を飛んでいく、飛ぶ直前に記憶消去の依頼をされた。己龍は竜の力をフルで使っているから、空を飛んでいる己龍は、人の目にはとても早い鳥のように見えているだろう。

 早く白のところに戻ろう。

 そう決めて、歩いていると、

 十字路で黒羽ムイとバッタリと出くわした。

 その姿は本当に変わっていて、長髪はさらに伸びて足元につきそうで、烏の濡羽のような綺麗な黒髪は、なんの混じり気のない純白色の綺麗な白髪になっていて、服も全て白色で白いワンピースの上から白いコートを羽織り、白いハイソックスはスカートのひらひらから出ている足を全て覆い隠し、靴は無骨な白い安全靴。紐の色も白で統一されていて、手には白い革手袋。

 全てが白く。その白さも異常で、まるでそこに何もないかのような白さで、かろうじて肌と影の色のおかげでそこに存在していることがわかる。

 確かにムイは白色が好きだったが、極端すぎる白さだった。

 そのことに驚いていると、ムイもこちらに築いて。

 驚いた顔をして「れ、零火さん!」と大袈裟なくらい驚いた表情をして、逃げるように反対方向に走り出した。

「なっ、お、おいムイ‼︎」

「零火さん追わないでください‼︎」

 大声での拒絶に心が潰されそうになる。

 それでも走り出して追う。

「おい待て‼︎」

「私今零火さんに見合う女性になるまで零火さんに合わないって誓ってるんですよ!だから追わないで‼︎」

 全力で走っていたが、ムイの言葉を聞いて止まろうとして転びそうになる。

「私!すぐに零火さんに並べるくらいになって会いに行きますから‼︎待っててください‼︎」

 追たい、だが、そうしたらムイの決意を無駄にする。なら

「怪我はないな‼︎」

「ないです!」

「ご飯は食べてるな‼︎」

「1日3食食べてます!」

「住むところはあるな‼︎」

「大っ嫌いなお母さんところに戻りました!」

「助けはいらないんだな‼︎」

「はい‼︎」

「なら頑張れ‼︎応援する‼︎そしていつまでも待ってるからな‼︎」

「はいっ‼︎」

 聞きたいことは聞けたはずだ。言いたいことは言った。辛くなったら帰ってこいっていうのはムイの決断を疑っているようなものだ。アイツはやることはちゃんとやる。ただ、一つ屋根の下にいた時のように、待っていればいい。

 体を反転させて、十字路まで戻る。

 頑張れ、ムイ。

 そう願った。

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