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妖異変超  作者: 青赤黄
人災の始まり
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超編1話 10月21日『作戦会議〜遊ぶための話し合い〜』

 深緑単色のパーカーのフードを目深に被り、茶色の色眼鏡をつけて、カフェの中に入る。

 カフェ『エニリティ』私の知り合いがやっているカフェだ。だからこんな格好をしていても私を見てくるのはカフェの中にいる人たちだけだ。その視線は私をしっかり見ていて、それを意識するだけでゾクゾクする。

 ああ、やっぱり私って怪しい感じの人に見えてますぅ?

 それはつまり、かっこいいと思う対象として見られているということで、それが嬉しい。

 笠原(かさはら)(めぐみ)は向けられている視線が奇異の視線、怪しい人として向けられているのはわかっても、不気味とか、怪しいとかかっこいいとは真逆のことを思われているとは思っていない。

 カフェのカウンター席に座り、肩に下げていた鞄の中からパソコンを置きながら、これで黒とか白のフード付きコートとか着てたらもっとかっこいいのにと雑念を抱き、「お前、その格好でくるのやめてくれないか?」と言われるまで目の前に来ていたマスター一木(いちき)大輝(だいき)、組織名《虹》のコードネーム青の存在に気づけなかった。

「ちょっと!今はお前とかじゃなくて緑っ呼んでって言ったじゃん‼︎」

「うるせえ、呼ぶかバーカ、そういうのは漠永(ばくえい)とか(いつき)にやってもらえ、あいつら大学生組なら面白がってやってくれるぞ」

 大輝は酔うと絡んでくる人をあしらうようにそう言ったが、心の中では爆永はちょっときつめにに断って、樹は少し嫌がりながらも面白がるんだろうなと考える。

「おー、確かにそうだね。それじゃ、マスターいつもの。それで、藍ちゃんは今お家なのかな?」

「ええ、そうですよ、今うちにいます。多分ポップコーン食べながら昨日録画した映画を見てるはずですよ。あいつの好きな恋愛ものですから」

「あー、年ごろだもんねぇ、恋の一つや二つしたくなるよねぇ、今度レンタルビデオでバイトをしている身としておすすめを教えてあげよう」

「今日でもいいんじゃないのか?ほらブラックだ」

「ありがとさんマスター、そいでさマスター、今日はダメなのですよ。今日は会議の日なのでね」

 そのことを、まるで秘密基地を作ったと友達に言っている子供のようにコソコソと、大輝に伝える。

 そして、ブラックコーヒーを飲んで顔をしかめ、一緒に出されたミルクとシロップを入れてもう一度飲む。

「別にいいだろ、あれは会議じゃなくて雑談会だろ」

「ちょっとなんでそんなこと言うの!雑談会じゃないもん!この東京を守るべく活動している秘密組織《虹》だよ!その会議を雑談とか言うなぁ!」

「それ以上騒ぐなら出てってもらうぞ!」

 手のひらを何度もカウンターに叩きつけながら言うと、大輝が他の客にも聞こえる声で恵を叱りつける。

 恵が騒いだ時に、被っていたフードが脱げて、フードの下の少女のような顔を見て、そして恵の身長を見て、カフェの客は、自分の昔の(こと)を思い出したり、温かい目で見たり、普通にうるさそうな顔をする。

「うう、わかったよー、わかりました。でも雑談じゃないですよーだ」

 子供の負け惜しみのようなことを言って、フードを被り直して、パソコンを開き、中のソフトを開いて、リモート電話を始める。

 枠は恵のを入れて六つ、そこに今仕事でリモートのできない大輝を含めて、組織《虹》の全員の数と同じになる。

 つまり、《虹》の構成員は7人で、東京を守ると言うには数が少なすぎる気もするが、そこはそれぞれの超能力で何とかなる。

 《虹》の構成員全員になる必須条件はなんらかの超能力を持っていること、例えば、コードネーム緑、笠原恵は地面に潜り込むことができる能力を持っているし、コードネーム青は周囲のものの動きを変えることができる能力を持っている。

 他の5人もそれぞれ能力を持っている。

「おーい、聞こえてるっすか?」

 コードネーム黄(木霊樹(こだまいつき)ちゃん)が、ぺかーと楽しそうに笑ってピースしながら聞いてくる。今日も画面の中に爆永君が映っていて、今日も男装していつ爆永君が自分のことを女だと気づくかで遊んでいるらしい。

「おう、聞こえてる」

 それに答えて何かを飲んだのは樹ちゃんの一個上のコードネーム橙(未烈爆永(みれつばくえい)くん)だった。爆永君は優しいから、樹ちゃんが女の子だとわかっていても、きっとそういう人なんだろうなぁと思って突っ込んでいない。接し方も男友達にするもので、それがいついらない気遣いなのか気づくのかと他の5人はニヤニヤしている。

 余談だが、恵は知る由もないが、爆永が今飲んでいたのはミルクもシロップも入っていないブラックコーヒーだ。

「あっ、これ映ってますよね?大丈夫ですよね?」

 心配そうに何度も確かめるように画面と手書きで手順が書かれた紙を見ているコードネーム藍(品川愛(しなかわあい)ちゃん)を、

「大丈夫だぞ、うまくできてる」

 と、コードネーム青(一木大輝)がフォローする。

「皆さんお久しぶりですね」

 優雅に、上品な言い方で挨拶してきたのは、タンクトップに下着姿で、ゴミを部屋中に散乱させているコードネーム赤(鬼疑義嬉々(きぎぎきき)———きぎぎききとか読みにくい)で、正座して座っているのは足が痺れてその時の痛みを味わうためだとか、生粋のドMである。

 鬼疑義嬉々がヤカンから直接お茶を飲んだ後(盛大にこぼしていて、机の上にこぼれたものは啜っていた)、「みんなおっひさー、今日も色々話し合おー」と挨拶して、いくら待っても最後の1人が来なくて、大輝が言っていたような雑談(休日何してた?)が始まってから、最後の1人が入ってきた。

 コードネーム紫、(怠慢(たいまん)怠惰(たいだ))が自分の頭頂部だけを映して「めんどくさい」と呟いた。

 怠慢怠惰。

 どう考えても偽名だけれど、たまに本当に超能力を使って悪さしている人を捕まえたりはしているだけで、ほとんど全員基本的にはゲーム感覚でやっているので、そこら辺は気にしない。

「コラっ!ちゃんと皆さんに挨拶する!挨拶くらいできるでしょ!」

「おかーさん、無理、しゃべるの辛い」

「誰がお母さんだ!せめてお父さんにしろ!」

 怠惰の同居人の夜咲(よざき)假偽(かしぎ)君がなんとか怠惰ちゃんを動かそうとするが、ダラァと脱力し切った体は意外に重く、起こすことを諦めて、「なんで僕がこんなこと」と呟きながら画面から消えてゆく。

 この時、《虹》の(怠惰抜かす)メンバー全員が假偽くんに対して頑張れと言っていた。今までの会議の中で、假偽君が怠惰ちゃんが「み」と言ったら水を飲ませて、お腹の音が鳴ったら食べ物を食べさせて、しかもたまに「咀嚼する、面倒」と口の中に物を入れたままモゴモゴ言って、散々悪態をつきながら顎を掴んで動かして、嚥下すら假偽くんがやっていたところすら見たことがある。

 前に一度、なんで怠惰ちゃんの世話をしているのかと聞いたら

「時給3千円なんです」

 と、言っていた。

 そりゃ、やるわなぁとみんなが思ったが、怠惰ちゃんのどこからそんな金が出てきているのかも気になった。

 よし、切り替えよう。

「それじゃあ、今日も会議を始めようか」

 そうは言ったが、形ばかりの報告は数分で終わり、その後は雑談となり、怠惰ちゃんはずっとつむじを写したまま穏やかな寝息を立て始めた。

 そして、大学生の樹が今度みんなで遊園地に遊びに行かないかと提案する。

「おーいいねー」

「ですよねですよね、行きましょーよ、いつ行きます?」

「私は土日がいいーな」

「私はいつでもいいですわよ」

「俺は今月の28、29は大丈夫ですよ」

「俺と愛はいつでも休める」

「うちのは多分動かないんで、除外でお願いします」

 誰もコードネームを使わないことに少し悲しくなりながら、みんなと遊ぶ約束ができ(怠惰ちゃんのところにはあとで突撃する)、楽しみが増えた。

 コーヒーを飲み干して、みんなの予定のすり合わせを始めたところに、一組の男女が入ってきた。

 人とは違うと、背中で感じる感覚が訴えてくる。

 きっと、わたしたちと同じだ。 

 どうしよう、話しかけようかな。でもあの2人カップルぽいし、デートの邪魔したら悪いしな。そう考えているうちにバイト店員の安田君がカップルのところに行き、水とおしぼりを持っていき「決まったらお呼びください」と定型句を言って戻ろうと振り返ったところで「おい店員の、あたし様は何を頼むのかは決まっているぞ、なのにどこに行く気だ」と少年のような声で高圧的なことを彼女さんが言った。

「しろ、言葉遣い、俺とか黒さんとかにはいいが初対面の人にはやめろ」

 彼氏さんが落ち着いた中性的な声でしろと呼んだ彼女を嗜め、もしかしたら彼女とかじゃなくて兄弟なのかもと思い、少し目線をその2人に向ける。

 両方とも黒髪で染めているようには見えず、美男美女と言って差し支えのないほどの容姿で、思わず見惚れてしまうが、2人を見た理由を思い出して、2人の顔の共通点を探すが、強いて言えばのものしかなく、兄弟だとは思えない。

 まぁもしかしたら、母親似、父親似とかなのかもしれないけど。

 彼女の方は、頼むものが決まっていると言っていたのにどれがいいのかと悩み、彼氏の方が幾つでもいいぞと言ってすぐにショートケーキとパンケーキとモンブランを頼む。彼氏はコーヒーだけ、しかもブラック。

 このカフェで一位二位三位の順位の人気商品だった。

 お目が高いことで。

 彼女がスイーツを食べている間、彼氏の方はずっと慈しむように見ていて、やっぱり付き合っているんだろうなと思う。

 彼女がスイーツを食べ終わったところで、カフェにまた1人入ってきた。

 そいつは入ってきただけで周囲の熱を奪うような、そんな存在で、そいつがカップルに向かって「おっ、いたいた〜。レーカ、俺様ちゃんが来たぜ」と言っていて、これでカップルの女性はしろと言う名前で男性の方はレーカだとわかったが、その2人があんな人とどんな関係なのかと気になることが増えた。

 3人を見たくて、机に突っ伏して『大地に沈む(グラウンドダイビング)』自分で考えた名前を心の中で言って自分の聴覚をカフェの全員無機物と同化させる。

 運動としてここにいる人間とか妖怪とか殺そうと思ってんだけど、零火、殺していい?」

 ん〜〜〜ッ‼︎

 やっぱりやばいやつだった!

 なんでそんなやつと一緒にいるんだよ。殺されるぞ!

「次、そんなことを言ったら、氷漬けにするぞ」

 ん〜〜〜〜〜ッ‼︎

 寒い!寒い!寒い寒い寒い‼︎

 なんだなんだこれ!

 氷河期か‼︎

 夏服で雪が降ってる中外に出てるみたいな寒さ。

 やばい体が震える。

「零火、寒いぞ、そんなに怒るな」

 しろさんっ!なんであなた急に大人びた口調を出してるんですか‼︎

 しろさんがそう言ってすぐに、すごい寒さが嘘のように消えてなくなった。私も超能力を解除して体を起こす。

「どうかしましたっスか?緑さん、スッゲー震えてたっスけど」

「いやーなんでもないよ、ちょっと空調がつめたくてね」

「うちのせいにするな」

 大輝の言葉を聞きながらも、心ここに在らずで、生返事しか返せない。

 なんだ、なんなんだあの人たちは。

 すごくかっこいいじゃないか。

 たった1人にあんなに恐怖を与えられた。

 それを超える威圧を与えられた。

 私もああなりたいぃ。

 これはアレだな。いつも通りのだ。

「それじゃあみんな今日はこれで、バイバイ」

「ハイッス、次は遊園地で会いましょうね」

「うん、11月の4日ね。了解!」

 パソコンをスリープモードにしてカフェの外に出て、路地裏に入り、もう一度『大地に沈む(グラウンドダイビング)』を使って今度は感覚を共有することなく潜り、あの3人の下に着く。姿は見えないが、鼓動の振動が小さく聞こえるから、この3人の動向がわかる。

 さあて、長時間待つことは覚悟しないとな。

 そう思ったのだが、すぐに立ち上がり、外に出て歩き出した。

 話の内容的に電気屋に行くのだろう。

 そして、そのことに気づいたのは、地面全体と繋がっている私の方が先だった。

 私の能力は、遠くなればその分振動は無くなるけど、そもそも、振動が伝わるものがなくなれば、それにはどれだけ遠くでもわかる。

 いや誇張だが、遠すぎるのだと分からないが。

 高いビルに登って、地面から顔を出して反応のなくなった。急に綺麗な正方形型に動いたビルの一角を探し、すぐに見つける。

 それは文字の形になっていて、[日本よ、私の願いを叶えろ}そう書いていた。

 私は、スマホを取り出して、《虹》のグループラインに、この町には来ないようにと打っておく。

 すぐにカフェに戻ってもう閉店しなと言わなきゃ。

 これは、今までの比じゃなくやばい。

「こんにちは〜」

 そんな呑気な声を聞いたのはラインに打ち終わって送信した時。

 後ろには、気配があった。

 それは他人の気配に敏感な私が感知できないもので、違う、感知できた。ただ、それが急で、まるで瞬間移動してきてようで。

 感知できる何がいるのかわからない暗闇のような恐怖は。

 あの2人に味わされたものとは比べ物にならない。

 明確な、自分に向けられた殺意というものは。

 こんなにも、今すぐにも逃げ出してしまいたいくらい。

 今すぐにも泣き出したくなるくらい。

 今すぐにも叫び出したいくらい。

 怖いものなのか。

「私の名前は」

 私の後ろで、私の生殺与奪の権利を握っている人は、当然のことをする様に自己紹介をした。

 曰く、白白(しらじら)(はく)

 という名前らしい。

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