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妖異変超  作者: 青赤黄
人災の始まり
3/39

異編1話 10月21日『男女間の友情は信じない』

「チョエイ!」

 と、奇怪な気合い声を出して、神火(かみび)神楽(かぐら)はパンチングマシーンを殴る。

 スコアは、最高999のところ、121。

 11の2乗と同じ数字だが、神楽はその数字を見て「やった!最高スコアだ!」とはしゃぐ。

「よかったな」と少し呆れ混じりに鬼月(きずき)己龍(きりゅう)は言う。

「ドヤドヤ!すごいでしょ!ねぇ己龍もやってみなよ!」

「やらねぇよ、面倒だからさ」

「私に勝てたら胸を揉ませてあげよう」

「やる」

 胸を張って神楽が言った提案はその胸部に見合うだけの魅力があり、10月に入り、肌寒くなって来たと言うのに上は肩出しへそ出しで、ズボンも、ブルマのような短さで、むっちりとした太腿が露わになり、周りの男どもだけではなく、女の目も引いている。

 男は胸と足などに目を向けているのだろうが、女は腕と足などの痣に目が言っているのだろう。

 神楽の右腕にはゆらめく炎のような痣があり、左腕には落雷のような痣があり、右足にはつたが絡まったような痣があり、左足には流れる水のような痣があり、それらが背中の肩甲骨あたりで合流していて、両脇腹には7本の指に掴まれたような痣がついていた。

 これらの痣は全て生まれた時からあり、本人は一切気にしておらず、むしろかっこいいと言ってみんなに見せびらかすために、見てるこっちが寒くなるような服を着ているのだ。

 二人の通っている磊落高校でもほぼ毎日生徒指導の先生と冬服で登校してこいと叱られている。

 そんな幼馴染の挑戦を受け(決して胸を揉みたいとかではない。ないったら無い!)パンチングマシーンにデコピンをする。

 周りの男どもをびびらす目的で。

 スコアは最高999のところ、999。

 人間をやめているんだから、このぐらいは行って当然だ。

「オラ、どうだ、勝ったぞ」

「おー、さすがだねぇ、すごいね。ではどうぞ」

 そう言って、神楽は俺の手を胸まで持っていく。

 触れるだけで、動かせずにいると、「どしたの?」と神楽が訊いてくる。

「お前はもう少し異性に対しての危機感とかを持った方がいいと思うぞ」

「えー、でも、女の子に揉まれるのと大差ないでしょ?ならいつも縁連(えんら)ちゃんとかにもやってるし、プールの時なんて、みんなで揉み合いっこしたもん」

 なんだそのパラダイ・・・・・・・・・いやけしからん。同性であっても学校でそんなことはしてはいけないと思います。

 神原は人とはずれているところが多数ある。

 痣のこともそうだし、今のこともそうだし、対人関係もそうだ。

 性善説を心の底から信じているようなやつだからこそ、好きあらば抱きつき、髪の匂いを嗅いでくる日針(ひばり)縁連とも仲良くやれるし(そう言うことをするのは神楽だけだからあまり問題にはなっていない)、転校してくる前の学校で、学校中の罪なき男子学生全員に全治4ヶ月以上の大怪我を与えた、文句のつけようのない極悪非道と言って差し支えのない朝金(あさがね)畏怖(いふ)とも友達になれたのだ。

 朝金と友達になれたのは朝金側の事情もありそうなのだが、それは現在上司の鳳凰(ほうおう)さんの彼女であり、鳳凰さんと同じ四天王の立場にいる吹雪(ふぶき)ぼたゆきさんが調査しているので、今日の夜くらいにはあいつの個人情報全てを知れるだろう。

 そうだ、今日こいつと一緒にきた理由には、そのことも伝えなくてはいけないと言うのもあるのだ。ただ遊ぶためではない。

 それにしても、いつもは絶対に来るであろう縁連が来なかったことは意外である。

「ごめん神楽、本当に、ほんとーに行きたかったんだけど、どうしてもやらなくちゃいけないことがあって一緒に行くことはできないんだ。この埋め合わせは絶対に5日するから、そこの体目当てのゴミと一緒に遊んで来て、襲われそうになったら殺してもいいんだからね、そこの可燃ゴミなんて」

「誰がゴミだ‼︎」

 そんなやりとりをしたので本当に来たかったのだろうが。

 俺と神楽は外に出て、近くのカラオケによる。

 個室に入って、「一曲目何にしようかなぁ」と楽しそうな声を出している神楽に「真面目な話があるんだが」と切り出す。

「うん?何?セックスさせてってこと?」

「違う!なんでそんなだと思った‼︎」

「だって縁連ちゃんがカラオケの個室に入るといつもしようとしてくるから」

「縁連のやつと2度と2人でカラオケに来るな‼︎」

 ついつい立ち上がって腕を振り叫ぶ。

「でも縁連ちゃん、ほかの子がいるときにもしようとしてくるよ?」

「何してんだあの思春期は‼︎」

 机が軋むほど強く拳を叩きつけてしまった。

 いかん、心頭滅却心頭滅却。

「それでまじめな話なんだがな」

「うん」

「実は4日後の夜の12時に、かなりやばい異形の討伐戦があるんだが、もしかしたら、その異形の正体が、あ「ご注文のコーラとポテト、たこ焼きをお持ちしました」

 店員がありえないくらい上機嫌で、部屋の中に入って来たせいで、かなり大事な話が遮られてしまった。

 これは言わなくてもいいと神が言っているんじゃないのかと思ってしまうが、言わなくてはいけないことなので、店員が出ていくのを待って、もう一度言う。

「話の続きなんだがな」

「サクサクサク、サクサク」

「実は、最近出て来たやばい異形が」

「サクサクサクサク、サクサク、サクサクサク」

「その、偉業の正体がな、人かも知れなくて」

「サクサク、サクサク、サクサクサクサクサク」

「しかも俺たちが知ってるかも知れなくてだな」

「サク、サクサクサクサクサクサク、サクサク」

「まじめに聞く気あるかお前‼︎」

「しゅごいあゆよ」

 なら、ポテトを食うのをやめろ!

 サクサクサクサクいい音しやがって、食べたくなるじゃねぇか!

 いい匂いだしよ!

 やっぱり言うのやめて歌いまくろうかなぁ‼︎

「それで?その異形かも知れない、私たちの知っているかも知れない人っていうのは誰なの?」

 あっ、その話するんですね、もうやめて歌おうと思っていたから、うまく切り替えができない。

「朝金だよ、このポテトうめぇ」

 切り替えができないまま言ってしまった。

「ふぅんそうなんだ。なら私も討伐戦には連れて行ってね」

 サクサクと、いい音を立ててポテトを食べる。

 それは、とても異常な行動だ。

 異形というものがどんなものを知っているのだから、その存在に自分の友達がなってしまっていると聞かされれば、もっと驚くだろう。普通は。

「だめだ、戦力のないやつは連れて行けない」

「わかった、じゃあ勝手についていくね」

 何を言っても結局ついてくるということは簡単に予想できたことなので、それ以上は何も言わず、タブレットを操作して、曲を入れる。

 正直、予想が当たっていたのだとしたら、神楽はまたあれをするのだろう。

 やめてほしいのだが。

 あれをやられた2人とも重度のトラウマもっちまって、片方は刃物を見れなくなっちゃったし、もう片方は高いところが画像でもだめになって待ってるし。

 まぁ、俺が気にしてもどうもできないから来るならこいって思うけど。

 さあ、歌うぞ!

 決心すると、自然と、マイクを持つ手に力がこもった。


 カラオケで2時間歌ってから外に出ると、まるで待ち構えていたように知り合いの女性3人に会った。

「やっほー」

 3人の中で中位の背で(175㎝)、肩まである髪を一つにまとめている中井(りく)さんが声をかけてくる。能力は『合離鬼(ごうりき)』と名付けていた。

「待ってたよ、己龍君君に伝言があるんだ」

3人の中で1番メリハリのある体をしていらっしゃる背の高い(187㎝)高田(そら)さんが手を振ってくる。能力は『治師鬼(ちしき)』と名付けていた。

「あの首無し異形の正体が分かったよ〜〜」

3人の中で1番年上の小木(ちいぎ)(かい)(142㎝)さんが今あまり聞きたくなかったことを言ってくる。能力は『巴鬼(うずまき)』と名付けていた。

「あー、えっと、後でいいですか?」

「いいよー。私たちもカラオケやりに来ただけだから、必ず伝えろとは言われてないしねぇ〜〜」

 おっ、そうなのかそりゃいいことしてくれるぜ変異の王。

 世界には3人の王がいる。会ったことがあるのは妖魔王のみ。ほかの変異の王は存在することだけは知っているが、会ったことは無く、最後の異形王は存在するかどうかも怪しいらしい。

 妖魔王、狐火零火さんは優しいシスコンで、すぐに仲良くなれた。変異の王とも仲良くなれる気がする。

「ねぇ、何あれ?」

 服の袖をくいっくいっと神楽が引っ張ってくる。

 何を見て声を上げているのかと、神楽が指を指している上を、空を見て、神楽と同じものを見た。

 それは、正方形だった。

 どの辺を見ても、一ミリすらずれておらず、完璧な正方形で、中に人が入っていて、横上下には色々くっついて来ているのに(蛍光灯や電線)壁は横一面だけガラスが貼ってあるだけで、少しでも傾ければ中にあるパソコンの乗ったデスクや、そのデスクの前に座っている人などが、正方形の浮かんでいる5メートルほどの高さから落下して来てしまう。

 しかもその正方形は浮かんで行っており、その正方形は高さ12メートルほどで動きを止める。

 そして奥から、先程見たものよりも大きな正方形が飛んできて、止まる。

「なんだろうあれは」

 呆けて見ていると、大小さまざまな大きさな正方形が様々な方向から飛んで来た。

 見ていると、どうやらそれは何かの形を作ってるらしいということがわかり、その全体像を見るために、後ろに飛び、着地してすぐに上に飛ぶ。

 空に浮遊しながら、その形。

 文字を読む。

 それは日本への命令のようなものだった。あるいは

[日本よ、私のねがいを叶えろ]

 切実な嘆願なのかも知れない。

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