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妖異変超  作者: 青赤黄
感情大戦
29/39

感情大戦 対猜疑 14時21分

 港区を歩いていて気づいたことがある。

 誰でも気づけることでしかないのだが、視界の中から途切れることなく人の頭部がぶら下がっている。

 電灯に白い紐の様なものでぶら下がっていたり、壁にめり込んでいたりして、途切れることがない。

 周囲の家にも誰かいる気配はしないし・・・・・・。

 発言撤回。

 400メートルほど進んだところの赤い屋根の家に入り、迷うことなく地下室へ。

 そこには5歳くらいの男の子と顔の皺が多い年寄りがいた。

「だ、誰だ貴様!どうしてここがわかった!孫だけはやら」

「お前のじいちゃんいい人だな」

 子供の頭を撫で、老人に向き直る。

「さて、聞き」

 仕込み刀!

 反射的に体をのけ反らせ刃を避け、下から近づいてくるものを感じ、老人を蹴る。

 老人が蹴り飛ばされ、先ほどまでいたところに白い骨が生えてくる。

 のけ反らせていた体を元に戻す頃には骨も無くなって、直径10センチほどの穴が空いていた。

「おい爺さん、今のはなんだ?」

「グッ、ウゥ、今のは、知らん。いつも急に現れて人を殺していくものだ。すまん、助かった。じゃがあの速度、貴様何者だ」

「一応人だ。それで、あの骨が出てくるパターンとかわかるか?」

 そう言いながら近づいて、老人の服の襟を掴んで後ろに投げ飛ばし右に一歩ずれて半身になる。

 先ほどと同じように老人のいた場所に白い骨のようなものが出てきて、直径10センチほどの穴を空けて帰っていった。

「ググ、なぜわかるのかはわからんが、助かった。パターンとかはわからんが、最初に死んだのを見たのはじゃれあっている学生達だった。右にいた男が左の男に笑いながら叩いたら、先ほどのようなものが出てきて死んだ。次は避難した先で、ふざけんなよ、と呟いた男だった。その次は同じ場所で、人を押し退けて逃げようとした人たちが全員死んだ。その後は知らん、ここにこもっていたからな」

 なるほど、共通点があるようには思えないな。

 やはり、共通点なんてものはないのか?

 だとしたら俺たちが生きているのは偶然か?

 老人に当たるはずだった攻撃を避けさせて、消える前に手刀で切る。

 少し掠った程度だが、十分すぎる。

 骨のようなものの掠った部分が凹み、千切れ、床に落ちる。

 それを拾い、壁に尖った方を押し当ててみる。すると、何の抵抗もなく刺さって行く。

「すごいな、これ」

 呟いた瞬間に、骨のようなものが細い糸のようにバラバラになり床に落ち、それと同時に近づいてくるものを感じて、強引に老人と子供を出入り口に投げ飛ばす。

 上以外全ての場所から骨のようなものが飛び出してきて、その数約30を叩き折る。

 全身に浅い切り傷を作ったが、上で2人が床に落ちる前に終わった。

 これは、まずい。

 地下室から出て、老人をどかし、老人を串刺しにしようとしていた骨が自分の脇腹に刺さる感覚を感じ、口に鉄の味を感じ、血液と唾液の混ざった唾を吐き出す。

 骨が体の中から抜けて、床に水が落ちる音を聞きながら床に手をつき、もう一度血を吐く。

 これは、まずい。

 だが、なんとなく、わかった。

 立ち上がることはちょっと厳しい。

 だが、妖術は使える。

 亜空間形成の妖術。

 これを使い、中に入れていたものを取り出す。

 取り出したのは刀、自分の身長よりも長い刀。

 妖怪が作った刀だから妖刀。そして異名は、

『所有者殺しの刀』

 所有者の血液を5%吸って、目指す対象に当たるまで、又は破壊されるまで自律的に動く刀。

 所有者殺しと呼ばれている理由は、使い初めから5秒ごとに血液を最大値のから1%ずつ吸っていくからだ。

 今の俺が使えば死ぬが、今の俺じゃなければいい。

「爺さん、こいつを下に投げてくれねぇかな」

「むっ、なぜ下に?」

「下にこの現象の元凶がいる。あんたが死ぬかもしれないがあんたがやれば終わる」

「・・・・・・本当に終わるんだな?」

「終わる」

 わかった。


「待っておじいちゃん!」


 老人は俺から刀を受け取り、家の床に向かって投げる。

 孫の言葉は聞かなかったことにし、その代償のように、老人の体が倒れ、

 地鳴りが聞こえてくる。

 いや、聞こえたわけじゃない。

 体で感じたんだ。

 俺の能力、『断罪裁判(ウィ・シーイング)』は少しの間だけなら、物に効果を付与しておくことができる。

『断罪裁判』の効果は、犯した罪の多さで決まる。

 そして、罪の重さによってもダメージの倍率は変わる。

 窃盗。暴行。放火。殺人。

 こんな順に。

 そして異形たちは最も重い殺人を多く犯す。

 そして、猜疑は多く殺している。

 ただの手刀で、鉄以上の硬度を持つアレが折れたのだ。

 刀でなら、ちゃんと裁断できる。

 やばい、これはまずい。

 さむい。


 猜疑に自我はなかった。

 あったのは疑いだけ。地の底に潜み。上の都市の人たちが自分に攻撃してくるんじゃないのか。そう思うと、疑う気持ちは止まらなかった。

 笑いながら人を叩く人がいた。それが地面に伝わる振動で分かった。

 こういう人が自分を攻撃してくるかもしれない。

 だから殺した。

 他にも、1人の人間に水をかけて笑っている6人。人に罵倒を浴びせる238人。

 人が複数の場所に集まり出し、押し合う人が出てきた。

 そいつらも殺した。人に罵倒を浴びせるものも殺した。

 自分に危害を加えるかもしれない奴らはみんな殺した。

 少し時間が経った。

 固まっていた人たちがばらけ出して、小さな建物の中に入っていった。

 建物の中で刃物を持つものを殺した。

 殺したやつの頭部を自分の神経で繋ぎ、壁に埋め込んだり、ぶら下げたり、して、自分の目を作り出した。

 上の都市に人が1人入ってきた。

 一つの建物の中にその人が入って行った。

 その家の地下室にその人ははいり、そこにいた大きな方の人が杖の中から刃物を取り出して、男を斬りつける。

 男は避けたが、こいつは危険だ。

 殺そうとし、避けられた。切り付けられた男が助けたのだ。

 なぜ?どうして?

 自分を殺そうとした奴を助けたんだ。

 とりあえず、さっき失敗した方を殺すとしよう。

 下からは避けられたから、次は横から。

 やったが、また男が助けた。

 なぜだ。なぜだ。

 まぁいい。助けるなら敵だ。同じ場所にいる奴全員殺してしまおう。

 そう思い埋め尽くすほどに攻撃し、それが致命傷にならず、

全て折られた。

 なんなんだ。あいつは。

 とりあえず、上に落ちた男を殺そうとし、地下室の男がそれを助けて男の腹に自分の神経を束ねたものが刺さる。

 訳がわからない。なぜ自分の身の安全を優先しない。

 まぁいい、これであの男は死ぬ。

 男が何かをどこからか取り出した。

 それは刀で、自分と同じ感覚がする。

 早く殺さなくては、そう思うが、あの刀がどういう存在なのか理解できないでいる。

 多少でもこっちの益になるのであればいいのだが。

 瀕死の男がもう1人の男にその刀を渡して、受け取った男がそれをこちらに向けて投げる。

 刀の一本であれば、大丈夫だろう。

 だが、もしもがある。

 自分の全神経を一本に纏めて、刀の進路を塞ぐ。

 防いだはずだ。それなのに、刀は一切の抵抗なく、束ねた神経を全て切り裂き、自分の元にたどり着いた。

 叫ぶ。

 意思もなく、叫ばなければいけないと思い叫ぶ。

 全身を震わせて、叫び。

 体が崩壊していく感覚を味わう。

 やっぱり世界には安全な場所などないのだろう。

斬駒細霧 対 猜疑の異形

14時28分 引き分け。

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