最終決戦
「決戦だ」
いよいよその時が来た。
ジョー1の声に、全員が応える。
「さて、久しぶりのキャプテンケイオスの配信だ。今回、レッドが二人いて混乱するため私ことケイオスブルーがリーダーを務めさせていただく」
:前々からリーダーやりたいっつってたもんな
:ポーズだけって感じだったけどな
:こいつがリーダーでホントにええんか?
しかし彼以外にはいないだろう。現在全員が兵装を着用、または変身している状態だがケイオスレッド(ジョー1)とケイオスレッド(ジョー2)は外見が全く同じ、その上名前も同じ。こんな状態でレッドをリーダーに指名すれば混乱は必至。
ケイオスピンク(ミカ)はさすがにリーダーの器ではない、とすればケイオスブルー(アキラ)しかリーダーはできないのだ。
「ゲッゲッゲ、いつまでもダンジョンの入り口で油を売ってても仕方あるまい。早く突入するぜ」
「センパイ」
不気味な笑い声を響かせたのはビーバークサリガマこと相藤ナツキ。
「無理に変な笑い方しなくてもいいんだぞ」
「そ、そうだね。なんというか、以前怪人に変身していた時の癖が抜けなくって……正直以前学校にいた時の『王子様キャラ』も少しキャラ作ってるから、もう何が本当の自分なのか」
人というものは常にペルソナを作って社会を生きているものだ。
それはともかく、今回の作戦、レッド二人にビーバークサリガマも含めて五人での挑戦となる。ナツキは執行猶予の最中であるので何か法に触れることをすると即実刑となる危険をおしての参加である。覚悟が違う。
「行こうか、ここで時間をつぶすことは、敵に利することになるよ」
でかいビーバーの格好で普段通りに話をされてもそれはそれで違和感は残るが。とにかく一行はばかうけの中へと進んでいく。
「慎重に行くぞ。今回のアタックは正真正銘最後の攻略になる。なんとしても、メガデスを叩き潰し、ドグマの目的を明らかにする。気をつけ給え」
感覚の鋭敏なナツキと、各種センサー類で索敵するアキラを先頭に、レッド二人とミカがついて行く。今回は期間も長くなりそうなので保存食などのレーションや水も豊富に持ってきている。
「来る……この反応はニンジャダイナソーではなくゴーレムタイプだ」
敵の影が見えるか見えないかというほどの距離でレッドが一気に突進する。彼自身、昂って感覚が鋭敏になっているようだ。
「フッ!」
通路から姿が見えた瞬間レッドの関節蹴りが炸裂し、大きく体勢を崩すゴーレム。
「メガスマッシュ」
膝をついたゴーレムの体の中心にジョー2の最大攻撃力が突き刺さる。傷口と頭部から黒い液体を吹き出して、ゴーレムはその場に崩れ落ちた。
:はえぇ……
:同一人物だけあってコンビネーション完璧だな
:同一人物じゃねえよ
:赤の他人だよ
「この黒い液体が、ドグマの本体か……」
ジョー2が敵の死体を見下ろしながら呟く。以前ミカが話した内容だ。もし彼女が頭のおかしい虚言壁の女でなければ、この黒い液体はドグマの血液などではなく、本体である。
逆にもし本当に彼女が真実を語っている頭のおかしい女である場合、彼女は人間の胎児に寄生した、今倒したゴーレムたちの仲間という事になる。
『そういえばさあ、ドグマのことは何となくわかったんだけどさあ』
戦闘を終え、進み始めるとアジトにいる内田レンから通信が入ってきた。一行はまた進み始め、索敵を行いながら彼の話を聞く。
『ソラセン人だっけ? ミカ君達の主みたいなのがいるんだよね』
「そう。私達ドグマは惑星ソラセンの人類によって作られた」
ドグマも一応そうであるが、外系星の知的生命体による接触である。
『ドグマはソラセン人に作られた体と、AIで動いているって感じ~?』
「その理解で問題ない。地球の者とはかなり技術的な相違はあるけど」
:また始まったよあたおか女の妄想話が
:本当なら学会レベル以上の話だけどなぁ
視聴者はやはり話半分、という感じで受け止めているようである。
『ミカ君はドグマ本体からの指示はもう受けてないみたいだけど、もしソラセン人からの命令があったらそれには従って、こっちを裏切る感じはあるの?』
あまり気に停めてはいなかったものの、重要な情報である。味方が本当に裏切らないか。決定的な場面で頼りになるのかどうかの違いは大きい。いくら主力ではないといえども。
「レッド、前方から複数近づいてくる。動きからしておそらくニンジャダイナソーだ」
話している間にも敵は近づいてくる。レッド二人とビーバークサリガマが前に出る。あまり戦力として期待されていないミカとアキラは内田レンとの会話を続けた。
「忠誠を誓うとか、主だとか、そういうこと以前に私達はソラセン人には逆らえないようにプログラムしている。もうそういうものとして考えてもらうしかない。私は人間とのミックスみたいなものだからどの程度強制力があるか分からないけど」
暗闇の向こうから姿を現したのは四体のニンジャラプターであった。今度は先制をとられる。
まだ姿が見える前から火花が飛び、燃える燃料が浴びせかけられたものの、しかしビーバークサリガマの盾のような尻尾を股の間から出し、それを完全に防ぎ、炎が収まったところでレッド二人が前に出る。
『ミカ君が地球に先行して下りたのは、ソラセン人による指示なの?』
「ううん。それはドグマの自己判断。私達はソラセン人の殖民船から先行して地球に向かい、もう通信も届かないほど進んでいて、長い事連絡を受け取れていないから」
基本的には自己判断で行動しているようである。以前に話した通りだ。現場の判断で臨機応変に。
『なるほどねえ。どのくらいの間連絡を受け取れてないの? あ、そうだ。あと次の連絡はいつの予定なの?』
数発の打撃音の後、静かになる。どうやら数で劣るものの、ジョー達はニンジャダイナソーのパーティーを危なげなく始末したようである。
しばらくの静寂の後、考え込んでから、ミカは答えた。
「もう一万年以上前に連絡は途絶えている。確か、次の連絡は本当なら百年ほど前だったはずだけど、まだ音沙汰がない」
『それって……』




