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FAKE HERO  作者: 月江堂
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告白

「半分ドグマ……? どういうことだ?」


 あまりにも誠意というものに欠けたミカの発言に憤っていたジョー2であるが、彼女の発言に疑問符を浮かべた。他のメンバーも事態を把握しかねている。内田レンですらも全く把握していない事のようだ。


 尤も、この女の発言なのでその場を凌ぐために適当こいている可能性もないとは言えないのだが。


「はぁ……じゃあまた。何かあったらStigramで連絡して……」


「ちょっと待て帰るな。なんだ半分ドグマって」


「? ……言ってなかった?」


 初耳である。父親か母親がドグマであるという事だろうか。それにしたってばかうけが不時着したのは十年前。ミカは二十五歳なので計算が合わない。


「待ってくださいッス。そういえば思い出したッスよ。ジュラシックジーザスにあった時、なんか向こうが杉山さんのことを知ってるような言い方してたッス」


 さすが新聞記者を目指しているだけあって鈴木リンはこういったことをよく覚えている。


「前に一度説明したと思うけど、二十五年前、私が生まれる前にドグマは太陽系には来ていたけれど、まだ人類には補足されていなかった」


 そんな説明は受けていない、という表情を内田レンがする。


「この説明も二度目になるけど、私は地球の調査の先遣隊として母船を離れ、単独で地球に飛来し、胎児の状態の杉山ミカに寄生した」


 絶対にそんな話は聞いたことがない、という意思を神戸アキラがその相貌に滲ませる。


 まさか身内にドグマがいたとは。


「以前に君は『ドグマは群体だ』という事をまるで確定事項のように言っていたな」


 そう。配信中であった。視聴者からも「ドグマは群体という事は確定事項だったか?」というようなツッコミを受けていた。さすがアキラはチームの頭脳を自称するだけあってこういったことをよく覚えている。


「それは間違いない。ドグマ達は基本的に群体であり、バラバラに見えても一つの『生物』として動き、意識や思考も共有している」


 内田レンがごくりと唾を飲み込む。今のこのやり取りには大きな意味があるのだ。


「クダクラゲみたいな原始的な生物じゃなく、思考のできる生物が、群体を……思考や記憶の共有はどうやって? 個体同士は完全に切り離された状態だと思うんだけど」


「エンタングルメントされた分子の挙動を利用している。最近は大容量の通信が即座にできるからブルートゥースで」


「ブルートゥースなの?」


「前に比べて最近のブルートゥースは本当にいい。昔は音質とか酷かった」


「オーディオの話してる?」


 いまいち分からない。どこまでが本気でどこからが冗談なのか。そもそもこの女のことだから全部適当ぶっこいている可能性もないとは言い切れない。


「とにかく、そういった方法でグリッドコンピューティングのようにドグマは思考を保持している。だからガワを破壊されて体内のナノデバイスが漏れ出してしまうと個々の身体の統制も取れなくなり、ゲシュタルト崩壊を起こす。人間でいう『死』の状態に近い。死んだ個体はグリッドコンピューティングからも排除される」


 ミカの今の発言はドグマを倒した時に黒い液体があふれ出し、体が崩壊する現象と一致する。全くのでたらめには聞こえない。


「ちょっと。ちょっと待ってくれ……はい、続けてどうぞ」


 何かごそごそと作業をするアキラ。どうやら配信環境を整えたようだ。確かにこの情報、真実なら個人で抱えるにはあまりにも重すぎる。下手をすれば人類全体にかかわってくる重要な情報なのだ。


 嘘だったら、まあ、その、アレだ。非常に面白い見世物だ。こんな面白いおもちゃ個人で所有するにはもったいないし、実際動画配信界隈でも「ドグマの兄です。この度は弟が迷惑をおかけしてます」だとか「ばかうけの生霊を呼び出します」だとかいう明らかにネタであろう頭のおかしいネタを発信している者も少なくないのだ。


 さて、どちらに転ぶのかは分からないが。


:なんや? こんな時に急にキャプテンケイオスの配信?

:今日別にダンジョンとか潜ってないよね?

:スク水ストレッチの新作か⁉


「リポーターの鈴木リンっス。今日はこのあたおか女、杉山ミカが『実は自分は人間の赤ん坊にドグマが寄生した人間だ』とかまた訳の分かんないこと言いだしたッス」


 いつからリポーターになったのか知らないが、リンはアドリブへの対処も完璧のようだ。


「さて、杉山さん。あなたが二十五年前に人間の赤ん坊に寄生したドグマだとして、さらにドグマが群体で『意識』を共有してるとした場合、あなたは敵のスパイなんじゃないスか?」


 全員が大きく目を見開いた。


 あまりの衝撃発言にその視点が欠如していたのだ。


 敵のスパイ、というか、斥候であることは間違いない。そして、もし無線で意識を共有しているというのならば、今この瞬間も敵にモニタリングされている可能性もあるという事だ。


「調査任務、という意味ではスパイだけれど、私の任務はそれだけ。それ以上の指示は受けていない」


「今までは受けていないとしても今こうしてる間にも新たな指示が来る可能性があるんじゃないんスか? っていうかそういうのベラベラ喋っていいんスか?」


「地球に降り立った時、リンクを切断して私はスタンドアローンになっている。ブルートゥースの接続パスも教えてもらってないし、今更協力しろと言われても私にやる気がない。私は私のために生きる」


 他の言葉の真偽はともかく「私は私のために生きる」というところについてだけは一同は深く納得した。言っていることは無茶苦茶だが行動に一貫性はある。


「じゃあ、杉山さんはドグマに敵対して人類に協力することもやぶさかではない……っていうかもう、人類の味方って思っていいんスよね?」


「もちろん。私は恋人であるジョーとともに幸せな未来を築く。その目的にのみ邁進するつもり」


 そう言ってミカはジョー2の方に視線を注ぐ。


 一応、ミカの狙っているジョーはそちらなのか、とリンはほんの少し安心した。


「この戦いを生き抜き、武石ジョーと武石ジョーによるジョーハーレムを築くのが私の一番の目的」


 この女の発言をいちいち真に受けることこそ時間の無駄である。


「待ってくれ」


 ジョー1が発言を止める。さすがにハーレム発言は看過できなかったか。


「胎児の状態の赤ん坊に、寄生したのか? じゃあ、本来の杉山ミカは、人間の杉山ミカはどうなっている状態なんだ」

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