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FAKE HERO  作者: 月江堂
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グリコーゲンX

「ジョーく~ん、ダンジョン探索の計画立てたんだけどさぁ。長いと数日かかるかもしれないけど、どう? イケる?」


「無論!」


 あの後結局一旦アジトに戻り、レンとも、神戸(かんべ)アキラともアカウントの登録をし直した。ミカが仲介に立つことで物事はスムーズに進んだのではあるが、結果的に見れば、この行為が「真実」の発覚を大幅に遅らせることとなった。


 それはともかくとしてメッセージアプリからの内田レン博士の連絡にジョーは即答した。


 現在高校二年生である彼にとっては無為に授業を欠席することは痛手ではあるが、それよりはやはりヒーローとしての活動の方が優先されるのだ。


「しかし……本当にダンジョン探索なんてやらないといけないのか? しかも、配信なんだろう?」


「おや? この間はあんなこと言っていたのに、やっぱりやりたくない?」


 挑発するような意思をにじませながらスマホの向こうからレンの声が響く。だが別に、ジョーは駄々を捏ねたいわけではないのだ。


「……正直、自信がない。空手をやってるから戦闘には自信がある。この間も一体怪人を倒したしな」


 人間ミサイルで。


「だが、その……ヒーローというからには、求められるんだろう? なんというか、魅せる戦い方というものが」


 子供のころからフルコンタクトカラテを嗜んできた彼は戦闘面での不安は少ないが、それだけだ。視聴者にアピールできるような戦い方を意識したことは当然、ない。しかし彼の言葉にレンは笑って返した。


「はははっ、大丈夫大丈夫。今まで通りやればいいんだから」


「……今まで通り……で、視聴数とか、同接数とか、どうだったんだ?」


「…………」


「なんとか言えよッ!!」


 推して知るべし。


 あんな狭いオフィスにスタッフは内田レンの一人のみ。台所事情は相当厳しいことは分かる。いろいろと突っ込みたいところはあるし、以前の活動記録などもあれば参考に見ておきたい。しかし……


「まあ、体を動かす小脳記憶から刺激されて、失った記憶が戻る、なんてことはよくある。ここはひとつ試しに探索活動してみてほしい、ってのはあるんだよね」


 なんとも計画性のない行き当たりばったりではある。しかし、心惹かれるのも事実。ヒーローにあこがれる少年は、同じように冒険にも心惹かれるものだ。結局ジョーはその日のうちにアキラとミカと合流し、異星人の宇宙船「ばかうけ」へと向かうことになった。


:にしても、あいつはなんやったんや


:あの人間ミサイルか


 アングラではないものの、さりとて表層とも言い切れない。そんなウェブの片隅に配信ヒーローについて語り合うスペースがあった。


 そこで話題になっているのは、まさに彗星のごとく突然現れてトップヒーローのクロノワールですら全く歯の立たなかった怪人を一撃で倒した、謎のヒーローのことである。


:あれ一般人じゃないよな?


:一般人があんな突っ込み方して生きてるわけねーだろ


:あれなんかの能力だったんか?


:何の能力? E.M.P.とかで電気を読み取る能力を妨害したんか?


:だとしてもあのミサイルは何なんだよ


 わからないことだらけである。実際あれがただの交通事故による偶発的な攻撃であるなどという結論にたどり着けはしないだろう。たどり着いたとしたらよほど頭がおかしい。


:あの技の正体は分からなくてもあいつら自身は分かるだろ


:そういやなんか「見覚えがある」って言ってた奴いたよね。ミカカちゃんだっけ?


:おい、変身前のヒーローのことについて言及すんなよ……マナーだろ


 ヒーローの相手は異星人だけではなくこの社会の裏で蠢いている犯罪者集団も含まれる。そういった連中に市民としての素性が割れてしまえば何が起こるのか、想像に難くない。


 視聴者の投げ銭と配信による公告収益を主な収入源としているヒーロー達ではあるが、はっきりと言ってそれに見合わないリスクを背負っている。だからこそ「それ以外」の協力を視聴者は惜しまないのだ。


:まあまあそれは置いといてだよ、あれがなにもんなのか、それは分かったよ


:マジか、何者なん?


:キャプテン・ケイオス、一応配信もやってるダンジョン探索メインの三人組の弱小ヒーロー


:聞いたことねえ


 ヒーローの数というのはそれほど多くはない。異星人の「兵装」を手に入れるという最初のハードルがまず異常に高すぎるために、一般人にとっての参入障壁となっている。


 その少数のヒーローの中でも名が知られていないということは、よほど魅力がないか、弱いかだ。


:ミカカちゃん、ケイオスピンクっていうのか……カワヨ


:人間ミサイルやった奴はケイオスレッドか。なんか、過去動画で見ると地味だな


:このケイオスブルーってやつはいなかったよな? 何やってたんだ?


 保険会社と警察への連絡で忙しかったのだ。


 いずれにしろ、ネット上ではこの謎のムーブで強敵を一撃のもとに屠り去ったヒーローたちの話題でもちきりになっていた。あの人間ミサイルはそれほどのインパクトがあったのだ。


 一方、こちらは武石ジョーの家から少し離れたところ、武石ジョー、杉山ミカ、神戸アキラの三人がダンジョン探索のために合流する。


「言われた通り、キャンプ用のでかいナップサックも用意したぜ。探索はこの三人でするのか?」


「ああ。準備ができたのならすぐに向かうぞ」


「いいぜ。車はどこに停めてあるんだ?」


「車は全損した」


「は?」


「さらに三十日間の免停期間だ。亡くなったグリコーゲンXのためにも稼ぐぞ」


「そんな名前だったの、あの車」


「ということで、歩いていく!」


「マジか」

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― 新着の感想 ―
新作スタートおめでとうございまーす! 読み始めました!・:*+.\(( °ω° ))/.:+ だんだんと世界観が分かって参りました。配信ヒーロー、いいですね。主人公の活躍の裏で仲間の愛車が全損、免停…
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