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FAKE HERO  作者: 月江堂
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マルサ

「社員も設備もみんなワシのもんじゃぁ! 手出ししようってんなら許さへんど!!」


 メガデス社長の国税局に対する敵対宣言である。


「ほう、なら仕方ないデスねぇ」


 徴税人マルサーPPは再び両手の指を向け、攻撃の体制に入る。


 いくらイリーガル(バイト)とはいえ通常であれば国税局がここまで強硬な立場に出ることはあり得ない。


 それもおそらくはメガデスとドグマの埼玉県侵攻に関連しているのだろう。すでにパンティーラインの内側はメガデスの影響下にあり、パンツの中は無法地帯。


 治安はそれほど悪化していないものの、一切の行政機構の働きは正常な動きを期待できない状況である。


 要は。


 国税は「今なら多少の無法も許される」とふんで、イリーガルを利用して無茶苦茶な捜査に踏み切ったのである。それが、まさに今回のクーデターの震源地であったと知っていたかどうかは分からない。


 そしてメガデス側も、警察や自衛隊の動きには常に監視して緊張感を持っていたものの、まさか国税局が武力を()って実力行使を行ってくるとは思わなかった。ノーマークだったのだ。


「一斉射撃ッ!!」


 再びマルサーPPの指先からパルスレーザーが放たれる。まばゆい光があたりを包み、土煙と蒸気の煙幕が司会を覆う。いかにメガデスの首魁といえども社長は生身の人間。期せずして悪の首領が倒されることになるのか。しかし。


「たとえ何者であろうとも、市民を傷つけるものは許さない」


 煙幕が晴れた時、姿を現したのは兵装グルナヴェを着用した武石ジョーであった。身を挺して社長を守ったのだ。以前のニンジャダイナソーとの戦いで傷ついた兵装も一週間のクールタイムで回復していたが、今の砲撃で再びボロボロに疲弊してしまっている。


「これハこれハ。まさかのご本人登場デスか!」


 マルサーPP がにやりと笑みを見せる。


飯垣(めしがき)博士、社長を頼む。避難をしてくれ。俺が足止めをする」


 まだそれほど遅い時間ではない。社内には社長以外にも多くの社員がいる。


「ジョー君、危険だ! こんな奴らのためにジョー君が危険を冒す必要はない!」


 それがどれだけ危険な事かはナツキはよくわかっている。ジョーを引き留めようとするが、彼は聞く耳を持たないようであった。悪の秘密結社と、国税局の人間、どちらの見方をするべきかは、常識で考えれば分かることではあるが。


「社長は、俺のことを……クローンの俺のことを『社員』と言ってくれた。『手出しをさせない』と、言ってくれた」


「……そんな言い方だったかな?」


「なら俺はそれに応える!!」


 構えをとるジョー。ナツキは疑問を呈したが、彼の心は決まったようである。


「健気ですねェ。ただの『資産』に過ぎないアナタが、ご主人様に尽くすために命を懸けて戦うというんですか?」


 マルサーPPは余裕の表情である。兵装によってサイズアップされているだろう体は二メートルを超える巨躯であり、五指には先ほどから猛威を振るっているパルスレーザー砲も備えられている。圧倒的な戦力差があるが、それでもジョーは立ち塞がる。


「誰にも人を、モノ呼ばわりする権利などない」


「社長も似たようなこと言ってなかった?」


 ナツキが茶々を入れる、というかほとんど正論に近いようなツッコミであるが、すでに心の決まったジョーには響かない。


 確かにメガデスは悪の組織ではある。ではあるが、だからと言ってそれに対して無法を働いていいというわけにはいかない。その時その時で常に正しくあろうとするのがどうやら彼の目指す正義の姿であるらしい。


 ましてや今は、彼は自分がメガデスの実験によって生み出されたと思い込んでいるのだ。その()()もある。


「行くぞッ!!」


 敵の攻撃を待たずしてジョーは突っ込んだ。これまでの攻撃のパターンと武器の特性から考えてマルサーPPの砲撃にはある程度のクールタイムが必要なのだろうとふんでのことだ。


「なかなかやりますネ」


 ジョーの連続攻撃が光る。しかしたとえパルスレーザーを使わずともマルサーPPの戦闘技術は高かった。両の拳から繰り出される連続突きを難なく捌き続ける。


「無駄デス!」


 そして一撃。その技は技術的には稚拙ともいえるほどの外腕による薙ぎ払いであったが効果は高かった。直線的な突きは攻撃力は高いが躱される可能性が高い。それに比べ内腕、外腕を使った薙ぎ払い、外腕刀(がいわんとう)とも呼ばれる技はとりあえず「当てる」ことには苦労しない。


 だがその威力の低いはずの外腕刀によってジョーは吹き飛ばされたのだ。


「なにっ!?」


 確かにジョーの兵装はダメージが大きい。体格の違いからくる膂力の差もある。だがあまりにも強すぎる。力だけで薙ぎ倒されたのだ。


「フフ、分かりませんカ?」


 なぜこれほどの力の差があるのか。ジョーには思い当たることがあった。同じ能力のように見えて圧倒的な力の差を感じたことが以前にもあったのだ。


「世の中カネですヨ。私の口座には今回の作戦の仮払金が大量にプールされていマス」


 つまりは必要経費である。以前にクローンジョーと戦った時(今は彼がクローンジョーだが)、マイナンバーに紐付けされた口座の金額の差によって力負けしたのだ。しかも経費だから非課税!!


「ふざけるなァ!!」


 跳ね起きるように跳躍しての飛び蹴り。


 最初はマルサーPPと戦うことに戸惑いの感情もあった。国税局から来たと言う事は、彼は正当な職務をしているに過ぎない。悪でない者と戦うことに心理的な障壁があったのだ。


 だがあまりにも無法な振る舞いと、そして正義のヒーローが「金の力」の前に手も足も出ないのかという認めがたい事実が彼の心に火をつけた。


 しかし。


「軽イ!!」


全身全霊を込めた飛び蹴りが止められ、足首を掴まれた。そのまま放り投げられ、崩れかけている正面玄関の壁に叩きつけられる。


「さあ、とどめデス!!」


 マルサーPPの指先がジョーを捉える。万事休す。


「逃げるんだ! ジョー君!!」


 しかしその時ジョーの視界を大量の水が覆った。次いで爆発的に蒸気が発生する。おそらくはナツキが消火栓か何かで攻撃を妨害し、マルサーPPはそれを無視してレーザーを放ったために一瞬で多量の水蒸気が発生したのだ。


「社員のみんなは避難した。ボク達も逃げるよッ!」

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― 新着の感想 ―
ヒーローもの読んでてさぁ まさかマルサと戦うとか思わんじゃん 予想の更に斜め上を行く作家だぜ
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