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FAKE HERO  作者: 月江堂
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徴税人

「ドーモ! 国税局の方から来ましたッ!!」


 全身を兵装に包んだロボットのような風体の男。金色に輝くその兵装は否が応にも『税金』を連想させる。大きく叫んだ言葉とともにその男は両手の指先を前面に構える。各指先には銃の砲身のように虚ろな穴が開いており、轟音とともに光線が発射された!


 メガデス醸造本社社屋の正面玄関が破壊される。


「何が起こっているんだ!?」


 秘密結社メガデスと株式会社メガデス醸造は物理的にセキュリティで分離されており、パスコードの入力などをしてセキュリティの解除をしないと行き来はできないようになっている。


 しかし異変を感じ取った飯垣博士に連れられてジョーとナツキも現場に急行した。


 状況は把握できていないものの、この場面から推定すると、国税局の人間が突如として民間企業の正面玄関を破壊したようにしか見えない。


 いくらパンティーラインの内側の領域で行政が機能していないとしても、こんな無法行為が許されるのか。パンツの中は無法地帯なのか。というかそもそも国税局自体が行政機関であるはずだが。


「おう! ワレコルァ! 業務時間外に何の用じゃい!!」


「ヤクザ……?」


 崩れつつある本社社屋の玄関から人影が現れる。趣味の悪い金のネックレスにパンチパーマ、高価そうなサングラスをかけた姿は、ジョーの言う通りまさしくヤクザとしか形容のしようのない人物であった。


「社長……ッ!?」


「社長なの?」


 なんと、どう見てもこてこてのザ・ヤクザといった風貌のガラの悪い男の正体は、メガデスの社長であった。


「こちらに固定資産登録のされていない設備が存在するという噂を聞いて、アイサツに来ました!」


 淀みなくハキハキと喋る国税から来たと名乗る男。最初はメガデスの本拠地を突き止めたヒーローのカチコミかと思われたがひょっとすると本当に国税の正式な人員なのかもしれない。


 だがその内容には不審の下りがある。


「あぁ!? 強制捜査なら令状見せんかい!! 任意なら協力なんかせぇへんぞ。アポはとったんか、アポは!?」


「そんなものはありませんヨ? 私は非正規(イリーガル)ですから。ご協力願います!」


 なんともかみ合っているようなかみ合っていないような妙な間合いの会話。物陰で飯垣博士と覗いているジョーは戸惑いを隠せない。


「国税局のイリーガル……? そんなものが存在するのか?」


「年度末はバイトとか募集してるわよ♡」


 それは大分ニュアンスが違うように感じられたが、どこから突っ込んでいいのかわからないジョーは黙っていることにした。


 しかしいずれにしろバイトだろうと公務員だろうと、いきなり民間会社の正面玄関を砲撃するなどと言う無法が通るものであろうか。社長は任意での捜査には協力しないなどと合弁しているが、正当な理由なく拒否することが本当にできるのだろうか。


「じぶん納豆食ってるかもしれへんからな。その敷居またがさへんど」


※納豆菌は繁殖力が非常に強いため醤油や酒の醸造元には立ち入り禁止。


 正当な理由である。ジョーは自分が今朝納豆を食べていないことに胸をなでおろした。


「そもそも何の用で来よったんじゃい。うちはきっちり耳揃えて税金納めとるぞ!」


 全くその通りであるし、仮に納めていなくとも社屋を砲撃していい理由になどならない。いったいこの男は何の道理があってこのような無法を働いたのか。


「申し遅れましたが私の名はマルサーPP、先ほども言った通り国税局のイリーガルでス。少し気になることがあり、非公式の査察に参らせていただきマシた!」


「あぁん!?」


「幽霊資産がありますね?」


「……!!」


 説明しよう! 幽霊資産とは固定資産登録のされていない設備類のことである。すなわち、すでに廃却したことになってはいるものの、実際にはまだ設備が存在していたり、逆に帳簿上存在してはいるものの、どれがその資産なのか誰もよく分からないという、帳簿上の資産と実際の物が合致していないことを指す言葉である。


 そしてあれだけ威勢の良かった社長が言葉を失った。心当たりがあるのだ。いや、製造業をしていれば実は誰しも一つ二つは心当たりがある。あるという事にしておいてほしい。


 完全に状況は膠着している。社長の動きは止まったが、さりとて素直に敷地内へも入れない。正直言うと急に「幽霊資産」などと言われても心当たりが多すぎてどれのことか分からないのだ。もう少しヒントが欲しい。


 多少は絞る情報もある。イリーガルとはいえ国税局がこうして直接出向いてきているのだ。数千万から億単位の資産の可能性が高い。しかし社長もそんなものには心当たりはないのだ。


「クローン人間作ってますネ?」


「!?」


 ビクリと震えたのは社長ではなく飯垣博士とジョーであった。


 死ぬほど心当たりがある。


「なんや、クローン規制法で文句言いに来たんか?」


「いいえ?」


 日本にはヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律があり、未遂であってもこれを厳しく罰する刑法がある。


「税務署にそんな権限はありませンし、正直あなた方が何を作って何に利用してようが知ったこっちゃありまセーン。ただ、クローン人間を作っているのならその資産価値は億をくだらないでしょウ。出すもん出してもらいマス」


 実際にクローン武石ジョーは全く予算をかけずに存在しているものであるどころかそもそも資産ではないのだが、税務署はそう判断はしなかった。Wowtubeで公開までして実戦投入されているそれを「資産」であると考えた。当然だ。


 警察やヒーロー達ですら実態のつかめていなかった悪の秘密結社メガデスの本拠地を最初に突き止め、虎視眈々と狙っていたのがよりにもよって税務署だったという事なのだ。


「というわけで徴税人ヒーロー、マルサーPPの出番というワケです。固定資産税払ェ!!」


 そう言い切ってマルサーPPは再び五指のパルスレーザーを発射した。すでに瓦礫と化しつつある正面玄関の設備に再び着弾。それでも社長は怯まない。


「じゃあかしいボケェ! 出すもんなんて舌でも出さん! 社員も設備も、みんなワシのもんじゃあ!!」

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