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FAKE HERO  作者: 月江堂
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自衛隊

「見つけた! あれがパンティーライン……ね。着地する」


 高速で飛翔していたミカは自衛隊の一団を見つけると荒々しくそこに着地した。地響きとともにジョーの体が投げ出される。


「ぐっ……むぐ」


 ジョーは上体を起こすと急いでヘルメットを外し、盛大に胃の内容物を吐き出した。


「ごほっ、おぇ……最悪の気分だ」


 普段から能力になれているミカと違ってジョーは上空を飛行することにも、その結果かかるGも未体験なのだ仕方あるまい。


「アキラももう少しで追いつくはず。とりあえずは一安心ね」


「ま、待て。ちょっと待て。ミカ、お前は勘違いをしている」


「どういうこと? まだ敵の追手が来ると言う事?」


「そうじゃない。お前、俺が誰かわかってるのか?」


「どういうこと? あなたは武石ジョーでしょ」


 黙するジョー。


「ちがうの?」


「武石ジョーだ」


 そうだ。自分は間違いなく武石ジョーだ。


 まるでずっとかかっていた霧が急に晴れたような気分だった。


 何を自分は今までトチ狂って迷っていたのか。自分が。自分こそが武石ジョーなのだ。それは自分自身が一番よく分かっている。


 だがそれだけではない。自分は確かに、クローンジョーと名乗っていた。あれは付け焼刃の偽の記憶ではないはずだ。確かにそこに感触があり、自分の熱い血潮が流れていたのだ。


 しかし、よくよく考えてみればどうだろう。その前の自分の武石ジョーとしての記憶は偽物だっただろうか。あれは本当にクローンジョーとして植え付けられた偽の記憶だったのだろうか。あれにもやはり、実態はあったのだ。そうとしか思えなくなってきた。


「俺は……俺は武石ジョー、なんだよな……」


「どうしたのジョー? あなたまさか、また記憶喪失に……?」


 二人がつかみどころのない話をしていると遠くから呼ぶ声が聞こえた。アキラが奔って追いついてきたのだ。


「はあ、はぁ……置いて行かないでくれ。全力で……走ってきたんだぞ」


 肩で息をしている。どうやら本当に全力で追いかけてきたようだ。無理もない。敵の多くはステゴシュリケンの捨て身の攻撃によって巻き込まれて死んでしまったものの、周囲にはまだメガデスの怪獣が多く存在しているのだ。いや、「存在している」だけではない。


「そこの民間人! 早く避難するんだ!!」


 付近にいた小銃で武装した自衛隊員が叫ぶ。アキラの後を追って数体のニンジャダイナソーが迫ってきていたのである。


「下がれアキラ!!」


 咄嗟のこと。考えるよりも早く体が動いた。アキラに向かって大きく口を開いて火炎放射を浴びせようとしたニンジャラプターの下顎をジョーが蹴り上げる。


 燃料を口の中で暴発させたラプターはその場で激しく燃え上がった。


「ギェ」


 もう一匹、小型翼竜のニンジャランフォリンクスの飛翔攻撃が飛ぶ。だが、狙っていたのはアキラではなかった。空を切り裂くように飛び、ジョー達を、そして自衛隊員をも飛び越えて、状況を見物に来ていた市民に攻撃を仕掛けようとしているのだ。


「危ない!!」


 その狙いにすぐに気づけたのはジョーだけであった。


 一瞬早く跳躍し、市民を守るために腕を差し出す。ランフォリンクスの手裏剣状の尾が前腕に食い込み、兵装を突き破り半ばまでにも達する。


 苦悶に顔をゆがめるが、すぐにジョーは尾を掴み、ランフォリンクスの体をアスファルトの道路に叩きつけた。


「大丈夫か、ジョー!!」


 とりあえずは周囲の脅威は去ったようである。アキラが心配そうに声をかけてくる。


「君達は、ヒーローと言うやつか」


 すぐ近くにいた自衛隊員も声をかけた。


「すぐそこに救護班がいるから応急処置をしてもらった方がいい」


「ああ、すまない」


 ジョーは兵装を解いて傷口を抑える。


 まだ危険があると分かり、やじ馬に来ていた市民達も下がっていったようである。周囲はまさに戦場といった風情である。自衛隊の装甲車や、戦車までが出動しており、小銃や無反動砲で武装した自衛隊員が大勢いる。まさか日本でここまでの光景が見られるになろうとは。


「残念ながら、私達の小銃では奴らに歯が立たない」


 どうやら外見からは分からないがニンジャダイナソーの連中も疑似ハチソン効果を利用したブリッツキャンセラーを備えているようである。


 無反動砲や戦車の口径ならば奴らなど一撃であろうが、しかしそもそも市街戦を想定した装備ではないし、平時の町中でそれを撃つことのできる法整備もされていない。なんとか陣営を構築出来てはいるようだが。


「申し訳ない。私たちにできるのは敵の進行を妨害して、市民に避難を『お願い』することだけだ」


「この状況だ。強制的にでも非難をさせられないのか?」


 アキラが訪ねる。今まさに市民達が戦いに巻き込まれるところだったのだ。当然そうすべきだと彼は考える。(ヒーロー達もまた『市民』ではあるが)


「コロナ禍の時もそうだったが……」


 小銃を手に持ったまま隊員は周囲を見回す。周囲はメガデスの襲撃を受けて崩落している建物もある。戦時下の光景である。


「憲法の制約上、住民の『自由』を制限できない。『要請』をすることはできるが」


 こんな時でも『平時』なのである。


「公務員である以上、我々は法に背いた活動は出来ない。住民を守るには違法な手段に訴えるしかないんだろう」


 隊員はちらりとジョー達の方を見る。「君達のように」と口には出さなかった。


「もちろん、コロナの時のように『そういう空気』が醸成されれば、住民たちも協力してくれるだろうが、こうも急な襲撃ではね……」


 当然ながらこんな状態が続いては欲しくない。なんとも歯痒く、自分達の無力さを呪う声が彼の喉の奥から聞こえてきそうであった。


「とにかく、君達も怪我を治療して避難するんだ。ここは危険だ。私達が守る」

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