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FAKE HERO  作者: 月江堂
11/15

タフ

「無傷だ」


:無傷?


:ゴーレムのパンチが直撃したのに?


:こんなの……僕のデータにない


 アキラの発した言葉は意外なものであった。壁に叩きつけられたまま身動きすらできない状態なのだ。一見深刻なダメージを受けているように見えるが、これが無傷だというのか。


 アキラは静かにパソコンを開いた。


「あれだけの衝撃を受けても、何の問題もなく動く。LCPも問題ない。やっぱりタフノートはすごいぞ!」


:パソコンの話かよ!


:もう死ねお前


:はい解散


「ふふふ、どうやらみな、勘違いをしているようだな」


 壁に手をやって支えにし、よろよろとアキラは立ち上がる。もう一度言うが、彼の瞳の炎は消えてはいない。ヒーローの脚は、死の恐怖で竦んだりはしない。


「いいか、この『データ』は、私の『過去』であり、『私自身』だ。これがある限り、私はだれにも負けない」


:いや……六九パーセントの確率で負けるんじゃ……


:言葉が軽い


 言葉が軽いのはまったくその通りだ。もはや視聴者は彼をデータキャラではなく、ただのコメディアンとして見ている。この状況で彼が助かる道があるとすれば、仲間が急いで追いかけてくるしかないだろう。


「さあチャッピーよ、私の勝利への道筋を示してくれ」


 全然懲りていないのだ。データキャラを自称している割には、全く自分の過去の行動における過ちというものを意識していない。なんでこいつはヒーローでやっていけると思ったのだ。


「……む? 十二パーセント? なぜだ? なぜさっきよりも落ちている? 貴重な戦闘データが得られたのだ。勝利確率は上がるはずではないのか?」


:おめーがケガしたからに決まってんだろうが


:パソコンなんて弄ってねえでさっさと逃げろ!


「な、なぜだ!? もう一度計算!」


 完全に冷静さを失っているアキラ。たとえ闘志を失っていなくとも、冷静でいられなければ勝つものの勝てない。いや、そもそもが勝てる戦いではなかったのだが。そして、そんな無為なことをしている間もゴーレムは一歩、また一歩と近づいてくる。


「なぜだ? チャッピー、答えろ、奴に勝つ方法を!」


死の足音が、近づいてくる。


「うわああああ! チャッピー! チャッピー!!」


:最期の言葉が「チャッピー」か


:香典~¥50000


「ああ、ああああ……」


 ゴーレムが再び大きく右腕を振りかぶる。そして砲弾にも匹敵する拳がアキラに向かって発射される。


「ああああッ!!」


 その刹那、拳を躱し、振り下ろされた腕を踏み台にゴーレムの体に飛び乗り、アキラがゴーレムの首筋めがけてタフノートを振り下ろした。人類の科学の最先端の技術を、単なる鈍器として使用したのだ。


「グロロ……」


 ディスプレイを閉じたタフノートの角がゴーレムの首の中央辺りまでめり込んだ。ぐらりと巨大な影が揺れ、そして地響きを立てながら床に伏した。


「はぁ、はぁ……」


 倒したアキラも茫然自失。


:おおおおおおおお!!


:やりやがった!


:マジかよあの野郎ッ


:ケイオスブルーすげえッ


「……こんなの、私のデータにない」


:勝った側が言うのかよそのセリフ


:十二パーセント引いたな


「ブルー!!」


 一瞬遅かったが、ようやくミカとジョーが追い付いてきた。


「大丈夫かアキラ! このドグマは、アキラが倒したのか?」


 ジョーが訪ねる。倒れたゴーレム型ドグマはもはやピクリとも動かず、そして関節の間やジョーに殴られた首から黒いゲル状の水が漏れてきているように見える。


「これがドグマの正体よ」


 この黒い水か、とジョーが訪ねるとミカは深く頷いた。


「この星の環境に適応するためにドグマは『兵装』を作り、その中に『寄生』している。『兵装』が大きな外傷を受けて大気に触れると、群体として生きているドグマは結合力を失って無力化される……」


:なんかミカカちゃんの方がデータキャラっぽいんだけど


:群体ってことまでドグマの確定情報出てたっけ?


「そして、何か特殊な武装がない限り、ドグマの体の内で回収に値する部位はここよ」


 そう言ってミカはアーミーナイフを取り出し、ドグマの背中にバックパックのように張り付いている塊をはがす。彼が持ってくるように言われたナップサックはこれを集めるためのものである。


「ここの集積回路には見た目ではわからない貴重な情報が入っていることがある。アジトに持って帰って解析してから、ジャンク屋に売るわ」


 若干べとべとしていて気持ち悪いが、ジョーは取り外されたそれをナップサックに入れてから立ち上がり、そして問題の人物を見る。


「アキラ……」


 アキラは体育座りをして、膝に顔をうずめていた。


「死ぬかと思った……」


 本当に。誰もがそう思った。アキラも今になってようやく恐怖感にさいなまれだしたのだろう。


「……いろいろ言いたいことはあるけど、とりあえず連絡はちゃんと取れるようにして」


 本当を言うならまずは一人で勝手に先行することがまずいのだ。だがあれは視聴者数に浮かれて舞い上がってしまったが故の偶発的な事故と考えよう。(そうでなければやってられない)


 だが、コメント欄を非表示にしてしまった上にスマホにも応答しないというのは本当にありえない。


 一歩間違えれば即、死につながる地なのだ。それを、よりにもよってはぐれてしまった状態で連絡を取り合うのを最優先にせずに一人で進んでしまうなど言語道断である。


「まあいつまでも落ち込んでいても仕方あるまい」


 まるでクレイアニメのような不自然な立ち上がり方で直立するアキラ。くい、とブリッジを持ち上げるしぐさをするが、当然メガネはない。しかし完全復活である。


「ジョー君、私はすでにドグマを一体倒したぞ。それも単独でだ」


:こいつの情緒ジェットコースターか


:切り替え早すぎやろ


:迷惑かけたことをまずは謝れよ


 視聴者からも非難轟々であるが、未だコメントを非表示のままのアキラはそれに気づかないし、気づいたところで顧みる性格であろうか。


「言っておくがジョー、私は君をまだリーダーと認めたわけではないからな」


:本名言うなボケ


:リーダーとかそういうレベルの問題とちゃうやろ

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