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FAKE HERO  作者: 月江堂
10/15

データキャラ

「……はぐれた」


:アホなのかこいつ


:これでチームの頭脳とかよく言ったな


 辛辣な言葉がコメント欄に並ぶ。


 それも仕方あるまい。通常の千倍近い同時接続者数に浮足立って早口と速足で進み続け、仲間とはぐれたというのだ。アホと言う他あるまい。


「いや、はぐれたのではない。どうやら彼らが私の速さについてこれなかったようだな」


:すんげーポジティブ


:どうすんだよこれ


「案ずることはない。彼女のドローンはここにあるし、このオンエア画面も見ているはずだ。そのうち追いついてくるだろう」


 撮影をしていたミカのドローンは今も神戸(かんべ)アキラのすぐ隣に飛んでいる。ここでじっと待っていればそう時間をおかずに追ってくることだろう。


「というわけで、彼女らが私のスピードについてこれることを祈りつつ、進む!」


:おいバカ、止まれ!


:なんなんだよこいつデータキャラじゃねえのかよ!


 しかしアキラは視聴者の言葉が一切聞こえていないかのようにまた速足でダンジョンの中を進んでいく。どうやらまだふわふわ浮足立っているようである。


「む、分かれ道だ。どちらに進むべきか」


:どっちにも進むな! 止まれ!


ピンク:ちょっと、ブルー、マジで止まって


:あ、ミカカたんキターーー


 なんと、コメント欄に直接ケイオスピンクこと杉山ミカが乗り込んできたようである。


ピンク:まだ生きてるみたいだけど、私達は警戒しながら進んでるから少しかかるわ。その場でじっとしてて


「こういう時こそデータキャラが光るのだ。これまでに蓄積したマップデータと敵の出現率、種類をすでにデータ解析に入力してある。チャッピー、答えてくれ。どちらの道に進むべきだ?」


ピンク:進むな! 止まれ!


 しかしテンパっているアキラに彼女の言葉は届かない。スマホの方にさっきから着信も入っているのだが、荷物入れの方に入っているので気づかない。もちろんダンジョンの中ではマナーモードだ。


 ラップトップPCを開いたアキラは即座にAIに判断を仰ぐ。AI世代というものである。


「ふむ。六十二パーセントの確率で右だ。データに間違いはない。行こう!」


:割と半々じゃねーか


:FEだったら攻撃を見合わせるレベルw


:お前本当にデータキャラなのかw


 この間、わずか三秒。全く仲間を待つことをせず、ほとんどノータイムの判断でアキラは右の道を選び、またも速足で進んでいく。己の信じた道を進む。AIの言われるままに進んでいく。


「む、敵の反応あり!」


:さっそくエンカウントしてんじゃねーか無能


 コメント欄がアンチで溢れるとアキラは一層人の話を聞かなくなる。悪循環である。


 それはともかくアキラのラップトップPCは特別性である。元になったものは「隕石の直撃にも耐えうる」というキャッチコピーのマツモト電工製「タフノート」。その上に改造をかけ、収音マイクやリュードベリ原子センサを通して集めた情報を兵装のバイザーの内側にスーパーインポーズ(文字や図形を映像に重ねて表示する手法)して表示できるのだ。


「画面がごちゃごちゃするのでコメントは非表示にさせていただく。悪しからず!」


:バカ、やめろ! 指示を聞け!


ピンク:一旦戻れバカ!


 これでミカ達からアキラに連絡を取る方法は完全途絶してしまった。まあ全然見てなかったので大して変わらないが。


「ふむ、ゴーレムタイプのドグマ(異星人のこと)だな。問題ない」


 通路の向こうから現れたのは巨体のゴーレム。ダンジョンの内部は天井が三メートルほどなのでその巨体も二メートルと少しといったところであるが、身長一八〇センチのアキラに比べれば十分大きいし、硬質な外皮と巨大な質量は脅威である。


「ふむ、本来私はこの頭脳による仲間のサポートが主な任務。戦うのは本領ではないが……」


:じゃあ逃げろ!


:何スタスタ歩いてきてんだよ引き返せ!


ピンク:ホントに戻ってこい。何やってるの


 しかしその声は届かない。


「私がやるしかあるまい。見たところスタンダードなゴーレムタイプのドグマ。これに私の戦闘能力で戦った場合……」


 カタカタと何か情報をタフノートに打ち込む。どうせAIに聞いているだけであろうが。


「私の勝率は、三十一パーセントだ」


:逃げろボケ


「つまり、ワンチャンいけるということだな」


:お前もうデータキャラ名乗るな


:ギャンブラーか


 アキラはパソコンをパタンと閉じ、構えをとる。その間にも地響きを鳴らしながら、ゴーレムは一歩一歩確実に距離を詰めてくる。


「ふふふ、来い。鈍重(どんじゅう)なドグマめ。貴様のようなパワータイプは私のような頭脳タイプに無様に負けると決まっているのだ。その一歩一歩が貴様を天国へと導く死の旅路とも知らずに」


:お前や!!


:鏡って知ってます?


:知能の低い頭脳タイプって何ができるの


 コメントの突っ込みはアキラにはまったく見えない。見えたとしても人の話を聞くタイプではないが。


「来い、ドグマ。貴様の攻撃が当たる確率は五〇パーセント、当たるか、外れるか、だ」


:データキャラが言っていいセリフじゃないだろ……


 ゴーレムのドグマが大きく右腕を振りかぶる。それに対し、一瞬早くアキラは相手の左手側に回り込んで回避行動。


 しかしこれはミスだった。回避のタイミングが早すぎたのだ。当然ゴーレムは大きく体を捻転しながらそのこぶしでアキラを追尾し、見事彼を捉える。


「ぐうッ!?」


 敵の左側に回り込んだためいくらか威力は弱まったものの、腹に直撃を受けてアキラは吹き飛ばされ、通路の壁に叩きつけられた。


:ほら言わんこっちゃねえ!


:どーすんだよ、死ぬぞ!


:ミカカちゃんのチャンネルがスプラッタで垢BANされる


「ふふ、ふふふふ……」


 しかし、絶体絶命と思われたアキラが口元に笑みを浮かべた。此は如何なることか。この絶望的状況においてもまだ何か逆転の目があるというのか。視聴者もまさかのピンチに戦々恐々としている。


 だが、アキラの目の炎は消えてはいないのだ。


「見ろ……無傷だ」

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