航海当直
食事を終え向かったのは、螺旋階段を登りきった先。船内で一番高所に存在する場所の船橋だ。
コンコン..
「ありがとうございましたー」
「ありがとうございました」
挨拶しながら船橋に入る。
「おう、おはよう」
初対面の方だ。
「今の時間は1220ですね、せんぱいは04が当直なので航海中はその時間にここにいるようにしてください。それ以外は基本、航海中なら休みですよ」
「04?」
「04は12時から04時まで一日に2回あるその時間帯がせんぱいの当番ってことです。」
「了解。分かった。」
「あと、私は80なので、もう休みます。後は、3rdの灰上たまさんに聞いてください、、、じゃ」
「了解、ありがとう」
シロはいかにも疲れたぜ、といった雰囲気を出しながら船橋を後にした。
静寂が訪れた。
船橋を見渡すと正面には操舵機その左側にはレーダーや車で言うナビのようなもの、右側には速度を調節するテレグラフ(アクセル)などが配置されているようだ、どういうわけかどういった物であるという事は自然にわかってきた。
船橋の後方には海図や書類、筆記用具があったり、お茶やコーヒーのサーバーやコップが整然と整理されている。
で、俺はどうすればいいんだろうか。
とりあえず灰上さんがなにか言うのを待てばいいのか?灰上さんは、クールな雰囲気で、細身だ、かっこいいオーラがあるが、髪は少し前髪が多い、シロより少し短めといった所だ。中性的というか、性別がわからない。たまという名前だが、、、ん〜、、わからない。美少年のようにもみえるが、、
「で、記憶なくなったのは本当みたいだな」
「はい、申し訳ないです」
「君がそんな、しおらしい姿になってしまうとは」
「あれだな、お前が入ってきてもう2年になるかな、それだけの記憶がないっていうのも、辛いな」
「あれだけ、遊んでたのになぁ」
灰上さんは、だいぶ仲が良い方らしい風に見える。素直にショックを受けているようだ。
「船橋の当直はなにかする事があったりしますか」
「そうだなー、ないな。見張るだけで大丈夫」
「強いて言うなら、変針するくらいと位置入れるのと気象を書くくらいかな。」
「まあ、でも基本は俺の仕事だ、やることないけど、しっかりと起きてろよ。」
「了解です」
、、、、、、、、
ヒマだ。ヒマである。
海図を見ると、千葉県。九十九里の沖といった所だ。
ひたすらに広がっている海。
ゆっくり少しづつ流れる景色。
すると、白いなにかが、右の右舷の前方から迫って来ていた。泡のような。
「灰上さん。なにか来てます。右側から。」
急に緊張感が張り詰めた。
「えっ!あっ!魚雷だよ!舵とるよ〜
黒木!そこの赤いボタン押せ!」
船が大きく左側に傾いた。
海図の上にあった鉛筆たちはガラガラと転がり。船体が大きく軋むような感覚もあった。
「ボタン押しました!」
すると船内放送が大きな音で
ビービービービー
『防水部署かかれ』
ビービービービー
大きな音を立て船橋の扉があいた。
「どうだ?!どうなってる?」
「今回はダメです。もうぶつかりますね」
灰上はマイクを掴むと
『対ショック用意〜』
『3,2,1、今!』
ズドン!と大きく重い音
鉄球を引き摺るような響く音。
ビリビリと船内が重い音に続き微振動する。引きずるような音が遠くなった。
「大丈夫だな」
「ですね」
「良かったー。ホント大丈夫そうだな。じゃあ被害の確認だけしっかりして、連絡しておいて。よろしく!」
船長はそれだけ言うと、船橋から出ていっった。
直後、船の後の方で大きな水柱が立っていた。
「あら、てっきり国の練習弾かと思ったけど。実弾か。幸運だな、不発だなんて。」
さっきのドタバタで崩れたものを整える。
驚いて何もせず端にいた俺は静かに。
「いったい、今のは何だったんですか」
「戦争の流れ弾だよ。まあ、うちの軍艦に比べたら、ベテルギウスはかなり頑丈な船だから当たっても大したことはないが、衝撃で死んじゃうかもしれないし、危なかったね。」
「真横で受けてたら爆発しただろうし、黒木!お手柄だな!」
灰上さんは少しこの状況ではおかしなテンションになっていた、灰上さんも内心はかなり焦っていたようにも見えた。死ぬかもしれない状況でこれだけ冷静な方がおかしく感じるが。
「そうなんですか、そうですか」
「というか、全然状況がつかめないです。戦争?爆弾?何でですか、めっちゃ冷静ですね。!」
灰上さんは冷静になったのか、船橋の後方の椅子に座り書類作業を始めた。
「まあ、最近は多いから、こういうの」..
「で、さっきのは、最初はどこから見えてた?」
「はい、えーと、正面から右側45度くらいですね白い糸が、あの漁船くらいの距離から迫ってきてたんで」
書類に少しづつ情報を記載していっているようだ。
「ああ、あれね4mile位だな、了解、了解ありがとう。」
その後も書類を書き続ける。
「最近は物騒なんだよ、うちの国の隣にはコリアっていう厄介な国がいて、ついに戦争が始まっちゃった訳よ、うちの国、表面上は戦争しないらしいから、大国の合衆国と中華国が一時連盟になって、コリアの暴走を食い止めてる防衛戦争という感じらしいね。うちの国も守ってもらうために、かなり出費してるらしい。実は出撃してるっていうのが海の噂ではあるけど。」
コリアと合衆国と中華国!?いつの間に!?
「結構、大規模な戦争じゃないですか?」
「まあ、戦争って言っても名ばかりで、今のところは死人も出てないらしいし。さっきのがあたってたら初の殉職者になるところだったな。」
「死人が出ない?」
どうやったらそんな事ができるんだろうか。
「いきなり暴走し始めコリアだけど、そんな大きな動きはないみたい、まあ、国力消耗して、そのうちに何もなかったか、のようになるんじゃないかな。」
「時事話が長くなったな、面倒な人だとは思わないでくれよ。さっき特番やってたからその内容だ。」
少し申し訳なさそうな雰囲気だ。
「そんな事ないです。全然ないです。むしろそういった状況が全く分からなかったので助かります。」
「そうだな、そうだったそれは良かった。」
「記憶がなくなって始めての当直がこれか、散々だったな。」
「そうですね、海の恐ろしさを充分理解出来ました。死にたくないので降りたいです。」
いやいやあんなことは滅多にないから。大丈夫だよ」
「本当ですか〜?」
最近は多いって言ってましたよね!
「じゃあ、次直に電話かけてあげてもう16時になる」
「船内電話はこれね、1と7を押せばいいよ、」
トゥルルルルゥ...トゥルルルルゥ
ん?この音は、寝起きになってたやつか、あれで起きて船橋に来いって事か。
「電話かけ終わったと思います」
「オッケ、じゃあもう休んでいいよ、挨拶したいだろうけど、引き継ぎが、長引くと休み時間が減るのやだし。」
まだ、記憶を失ってから挨拶が全くできていないが、
灰上さんは疲れているようだし、はよいけと言わんばかりなので、素直に従おう。
「では、ありがとうございました。よろしくおねがいします。お疲れ様です。」
「あー、船橋出るときはおねがいしますって言うだけでいいから。」
「はい、おねがいします」
船橋の扉をしっかり締めて、部屋に帰ると自分が思っているよりも気疲れしていたのか、すぐに寝てしまっていた




