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お料理 その2


 歩き出したものの、神獣がどこへ行ったかは分からない。こっちかもしれないし、あっちかもしれない。けっこう長い間倒れてたからなぁ。手がかりがないのでこの広い洞窟内から見つけ出すのは大変そう。

 それでも探すしかないので、とにかく歩く。


 その途中で、食糧になりそうな魔物と遭遇した。


 名前:スコルヴェイン

 種族:魔物

 レベル:52


 HP:82437 / 82437

 MP:3088 / 3158


 黒色の、光り輝くような甲殻を身に纏った魔物だ。何本もの細い足が胴体から伸びて、その足で地面を歩いている。胴体の先端は顔になっていて、そこに蜘蛛のように左右に開く口というか、牙っぽいものがついている。口の横には左右に先端がハサミ状になった腕がついており、挟まれたら痛そう。胴体の後ろの方は反っており、その先端には巨大な毒針がそびえたつ。

 見た目的には、サソリ。だけど大きさが知っているサソリと全然違う。全長は恐らく、10メートルくらいあるんじゃないだろうか。


 まぁもう大きな虫系の魔物には見慣れた。大して驚きもしない。

 むしろまずは食べれるかどうかを判断しようとする自分が怖い。


 そしてステータスを見てふと思ったけど、どうして蜘蛛の魔物よりもHPが低いんだろう。蜘蛛よりもこっちの方がレベルが一回り高いのに。蜘蛛のHPは確か、10万くらいあったからね。MPも、もっと多かった気がする。

 種族差って奴だろうか。だとしたら、HPやMPが少ない代わりに蜘蛛より長けた物があるって事になる。


 見つめて警戒していたら、いきなりサソリが駆け出して自分の頭越しに尻尾の毒針を突き出して来た。

 勿論私は横に飛んで回避。私が今までいた地面が、サソリの毒針によって深くえぐれた。加えて毒針の先から、黒い霧のような物が噴出されている。その霧が毒って言うのは見れば分かるけど、私には毒の類は効かない。耐性持ちなので。


 というかこの洞窟、毒持ちの魔物が多いな。蜘蛛が私に放ってきた粘液も多分毒だったし、スケイル・デスロアが放ってきた霧も、たぶん毒だった。

 耐性持ってなかったら、私詰んでたかもしれん。そう思う。


 更にサソリは、避けた私に対してハサミでチョキンチョキンと切り刻む攻撃を仕掛けて来た。それらも私は華麗にかわして見せる。


 ただ、私は今素っ裸である。動きはカッコイイはずだけど、かっこうがつかない。


 更にもう一度、尻尾による毒針攻撃が飛んで来た。私は軽くジャンプして毒針を避けると、毒針の上に着地。そして手に持った『破軍滅珠(はぐんめつじゅ)』をふりあげて、サソリの胴体に向けて玉を思い切り振り下ろした。


「……」


 玉の紐は、私が頭で思うだけで自在に長さを調整する事が出来る。今は胴体に届く程度に伸びているので、けっこう長い。


 玉は、サソリにぶつかった。だけど硬い物同士がぶつかり合った時のような大きな衝突音が響いただけで、サソリの身体に傷が入った様子がない。勿論玉にも傷一つはいっていないのだけど、お互いにダメージがないんじゃあどうしようもない。

 実際HPを覗き見ても、1ダメージも入ってない。

 どうやらサソリのHPが割と低いのは、この防御力があるからのようだ。防御力が高いから、HPが多少低くても問題ないと。そう言いたいのだ。


 しかしレベル30代の蜘蛛は一撃で倒す程の威力だったのに、サソリの甲殻に1ダメージも与える事が出来ないとは……。君には失望したよ。やっぱりただのけん玉って呼ぼうかな。


 え?名誉挽回のチャンスをくださいって?


 しょうがないなぁ。


 と、私は一人芝居をしながらけん玉の紐を短くしつつ引っ張って、玉を引き寄せた。引き寄せた玉は、けん玉の先にさして回収。


「……炎獄・烈火刃」


 278のMPを消費して魔法を発動させると、玉が刺さったけん玉の先から炎の剣が出て来た。けん玉が、剣になった瞬間である。


 再生中に考え付いた魔法である。再生中の暇な時に既に試していたので、出来る事は分かっていた。

 そして消費MPを見て分かる通り、かなり強力な魔法だ。発動中は常にMPを消費し続けるも、各属性に対応した剣を作り出す事が出来る。


 そこにサソリが、尻尾の上に立つ私に両手のハサミで攻撃をしかけて来た。


 私は迫り来るハサミに対し、魔法で出来た炎の剣を横一閃に振り抜いた。


 炎の剣はいとも簡単にハサミを真っ二つに斬り落とすと、ゴトリと地面に落ちた。更に私は自分が立っている尻尾も斬り落とし、サソリをいくつかに分解してしまう。


 自慢のハサミの手と、毒針を一気に失ったサソリは、慌てて私と距離をとって落ち着かないように暴れ出した。ガシャガシャと足音をたて、騒がしくなる。

 というのも、炎の剣で斬られた個所から発火し、サソリの身体を覆い始めている。サソリは炎を消すために必死にダンスを踊るも、炎はどんどん燃え広がって身体を覆っていく。甲殻は硬くとも、高熱で燃やされたらその意味はない。やがて全身に広がった炎は、サソリを内と外から焼き尽くして絶命させた。

 いくら防御力が高くとも、この聖武具けん玉の力の前には無力であった。


 中々やるじゃん、けん玉。再び『破軍滅珠(はぐんめつじゅ)』を名乗る事を許可しよう。


 とまぁご覧の通り、レベル差はあれど『破軍滅珠』の力を借りれば、闇属性以外の攻撃も中々強い。破軍滅珠には魔法を強化する能力があるみたいなんだよね。けん玉が出て来た時はどうなるかと思ったけど、聖武具とカミが呼ぶだけあって強力な力をちゃんと持っている。


 私の見立てでは、神獣は闇属性に対する耐性がある。だから闇属性の『崩星』が効かなかったのだ。単純にレベル差があるからっていうのもあるかもしれないけど、可能性として考えておき、備えるために破軍滅数を用いたこの魔法を開発するに至った。


 魔法を試した結果は、大満足である。


 神獣と再戦する前に、試し打ちが出来て良かったよ。レベル52の敵を一撃で倒せるんだから、かなり使える。自信になった。

 でも滅茶苦茶強くなるようにイメージしたつもりなのに、これでも消費MPが278ぽっちなんだよね。私の総MP25万に全然見合わない。

 この膨大なMPをきっちりと消費するような大魔法が使えるようになれば、神獣だって一撃で倒せてしまうんじゃないか。


 そう思うけど、魔法のイメージってけっこう難しい。規模の大きな魔法を使おうとしても、イメージが漠然として発動する事が出来ない。たぶん、今までの経験とか知識でしっかりとイメージできるような物じゃないと、魔法として発動させられないんだよね。

 その点私はテレビやゲームから得た知識と映像があるので、その範囲内であれば大体は発動させる事が出来る。


 それ以上の事は、私の創造力次第っていう訳だ。


 おっと。目の前のご飯が冷める前に、食事を済まさねければ。


 ご飯というのはこの、『スコルヴェインの姿焼き』の事である。


 こんがりと焼けて、美味しそうじゃない。でもちょっと焦げてるかな?

 お料理失敗というにはまだ早い。


 あちち。手でサソリの甲殻をはがしたり、破軍滅珠で何度も甲殻を打ち付けて破壊し、身を取り出す事に成功した。

 外側は焦げ気味だけど、予想通り中身は焦げていない。むしろいい具合に火が通っていると思う。

 身はプリプリとしていて、白に少しピンクが混じったような色をしている。一見すると、やはりエビやカニっぽい。同じ甲殻を持つ者だから、きっと味も似ているに違いない。

 そう期待をこめながら、口の中へと運ぶ。


「……美味しいような、不味いような」


 というのが素直な感想だ。一瞬エビっぽい味がしたと思ったけど、苦みと臭みが後からやって来る。


 そして咀嚼しながらふと思い出したけど、サソリって確か蜘蛛の仲間だよね。なんか甲殻類っぽい見た目だから騙されやすいけど、エビやカニの仲間ではない。

 つまり何を言いたいかというと、私は蜘蛛を食べた事に等しい事になる。


「うっ」


 吐き気と目眩が。


 でもここまで食べてしまったんだ。もう遅い。

 それにこの世界に来てから、肉しか食べていないから飽きていたんだよね。味もまぁ……食べれなくはないし、食べますよ。食べさせていただきます。

 という訳で満腹になるまで食べて、食べ残しはアイテムストレージにストックしておいた。

 他にも『スコルヴェインの毒針』もストレージにいれる事が出来たんだけど、何かの役にたつのだろうか。分からないけど、ストレージは余っているのでとりあえずいれておく。


 食事を終えた私は、再び歩き出した。


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