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勝利……?


 この場に残った私とルシアとトワは、倒れている魔物の体を睨みつけている。胸から上を失った上に、空から注いだ光の柱で体に風穴があいているも、触手と風穴は肉が蠢いて再生し始めている。

 あと、地面に転がった頭にも変化が表れた。切断面から生えた触手によって、タコのように足を生やして地面を歩きだしている。ちょっとキモイ。


「ちょっとした攻撃じゃ、再生してすぐに元通りみたいね。どうするの、お姉ちゃん」


 鑑定のスキルで確認すると、HPも大して減っていない。というか胴体と首って同じ生物扱いなのだろうか。レベルもHPも全く同じで、ただ敵が増えただけの状態となっている。


「すぐに再生してしまうのなら、再生が追い付かないくらいに攻撃してぶった切れば良い」


 ルシアが頼りになる事を言ってくれる。一理あるんだろうけど、果たしてうまくいくだろうか。

 先程ルシアが巨大な腕を斬った後、再生したら腕が大きくなり、より強力な攻撃を仕掛けてくるようになったのを思い出す。

 もしかしたらなんだけど、再生を繰り返す程に攻撃力が上がっていくタイプの敵なんじゃないかなと思う。

 私が斬り離した首は別の個体として地面を這っているけど、私がくっつくのを邪魔して分裂したのはどういう事なんだろう。もう一度切り離してくっつくのを邪魔したら、また分裂してしまうのだろうか。そうして同じレベルの敵が増えて行くのも困りものだ。


 考えている間に、倒れていた魔物の身体が起き上がり始めた。


「……トワとルシアは、胴体を引き付けて。試したい事があるから、私は分裂した頭の方を相手にする。試したい事が終わるまで、魔物の体を斬り離すのは禁止。出来るだけで良い」

「……分かった」

「はいはい。じゃあ、あたしはルシアの援護をするわね」


 ルシアが起き上がり始めた魔物に突進し、魔物の足を斬りつける。立ち上がらせないように妨害を始めた。

 トワもルシアの後方から矢を放ち、魔物の体が引きはがされない程度にちまちまとした攻撃を仕掛ける。


 その間に私は、頭の方へと向かって駆け出した。


『ゴオォォ──』


 魔物の膨れていない方の、パッチリと開かれた目に魔力が集まった。そして次の瞬間、私に向かって目から黒色のビームが放たれた。


「……」


 避けようと思えば避けられるけど、この空間で下手に攻撃を避ければ関係ない人に被害が及ぶ可能性が高い。

 だから私は、そのビームを闇の剣で斬りつけた。少しだけせめぎ合うも、弾きつつ闇の剣が吸い込んで消し去った。

 でもこのビーム、ちょっとヤバい。弾けた際にビームの粒子が地面に触れたけど、その地面が黒色に溶けつつ腐っていっている。

 更にやばいのが、ビームを連発してくる事だ。蠢く触手で移動して角度をかえつつ、左目からビームを連射して攻撃して来る。そのビームの全てを闇の剣で斬り落としつつ、距離をつめようとするも距離は縮まらない。

 ビームが邪魔だし、頭自身も移動して私との距離を保っているからだ。


 なんと小癪な。そっちがその気なら、こっちにも考えがある。私は魔物の頭と距離を詰めるのをやめて、その場で剣を構えた。魔物の頭も私の動きに呼応するように、動きを止めた。そして次のビームが私に向かって放たれる。


「──闇夜(あんや)・黒滅虚界(こくめつきょかい)」


 私は魔法を放ちつつ、魔物が放ったビームを切り裂いた。ビームは私の闇の剣によって切り裂かれて霧散。まるで空間を切り裂かれたかのような黒い斬撃に吸い込まれるかのように、ビームは跡形もなく消え去った。

 同時に、私に向かってビームを放った魔物の頭がある場所に、たった今ビームに向かって放たれたのと同じ黒い斬撃が出現。魔物の頭を飲み込むようにして切り裂き、魔物の頭が一瞬にして無残な姿となった。


 ガ・リグレで遭遇した神獣の、遠くの対象を攻撃する技を参考にして作ってみた魔法だ。神獣のとは違い、私のは手元と対象の両方に同時攻撃を仕掛ける事が出来る。あくまで神獣の攻撃を参考にさせてもらっただけで、私のオリジナルだ。

 魔法の想像の仕方が、段々と分かって来た気がする。最初の頃と比べれば、手馴れたもんでしょ。


 と、それはさておき、今は戦いに集中しないとね。

 無残な姿となった魔物は、その場で蠢いている。まぁ頭だけの時点でけっこう無残ではあったけど。それが顎下と首から生えていた僅かな触手だけの姿となったので、更に無残だ。


 魔物が、斬られた場所の肉が蠢いて再生しようとする気配がある。

 でも私は魔物に向かってダッシュしていて、再生しようとしていた魔物を縦に一刀両断した。首から生える触手が私に攻撃を仕掛けて来るも、その触手も斬りつけて消し去る。

 そうこうしている内に、再生は止まって私に伸びて来ようとする触手も先端から腐り出し、黒い塊となって力なく倒れた。

 更には触手が生えていた僅かな肉体も腐り、その場に黒いシミを作って消滅。もう再生して来る気配もない。


 名前:ヒメノ

 種族:魔族

 レベル:58


 HP:51568 / 51568

 MP:523181 / 541784


 頭だけの魔物を倒して、レベルが上がった。本体の方を倒せば、更にレベルがあがりそう。


 で、試したかった事とは、分裂した魔物も再生するのかどうかだ。どうやら、再生はする。ただし数度斬りつけただけで再生しなくなり、腐り落ちた。どうやら再生にもエネルギーを使うらしい。たぶんMP的な物だろう。分裂した個体はMPが少ないのか、回復力も低い。

 という事を、私は巨人の方の魔物を引き付けて戦っているルシアとトワに合流し、話した。


「なるほど、それじゃあ……先程ヒメノさんがやったように、切り離してくっつくのを妨害し、完全に分裂した所を叩けば良いという訳だな」

「そう」


 面倒だけど、これが一番確実な方法だ。


 ルシアは私の言葉に返事をしつつ、降りかかる巨人の拳を剣で受け止めるとそれに競り勝とうとはせず、威力を軽減させてから受け流してその場から退避。地面は抉れるも、威力は格段に弱いので周囲に被害はない。

 上手な戦い方だ。


「慎重すぎ。ここにはあたしと、ルシアとお姉ちゃんがいるのよ?分裂したのを攻撃し続けたらその内死ぬなら、本体も再生が追い付かないくらいの攻撃を繰り出し続ければ倒せるってことでしょ。だったら、そうしましょ」


 そう言うと、トワが弓を構えた。同時に強力な魔力の発生を感じる。


「ルミナスストレイル!」


 トワが放った矢が、巨大な光の柱となって魔物に襲い掛かる。光の柱は巨人の魔物の胸を貫通すると、空へと一直線に消えていく。

 胸に巨大な風穴が開いた魔物は、早速肉が蠢いて再生し始めている。


「面白い。私ものった!」


 トワに触発されたルシアが、魔物に向かって駆け出した。そして手に持つ剣が更に黄金の光を放ち、やがて黄金の光が巨大な剣の形へと変化した。


「オーラブレード!」


 ルシアが、黄金の巨大な剣を魔物に向かって縦に振り抜く。巨大な剣は魔物を縦に真っ二つに分断してみせた。


 ゲームの主人公、アルディスも使っていた技だ。見た目の派手さの割に、消費が少なくて連打できる技である。私も良く使っていた。それをまさか、生でみれるなんて……感動で泣きそう。


 でも泣いてる場合じゃない。

 君達ちょっと、脳筋すぎないか。時間はかかるかもしれないけど、分断していった方が確実でしょ。


 なんて言っている場合でもない。

 ここで再生を許せば、敵が強くなっていくだけだ。引き返せないのなら、やるしかない。


「……闇夜・闇風刃(あんややみふうじん)」


 私は破軍滅珠の闇の剣を媒体とし、闇の風を放った。闇の風は再生しようと蠢いていた魔物の肉をズタズタに切り裂き、更には無事だった肉も切り裂いて通り抜けて行く。


「アナイアレイト」


 さらに続いて、トワが矢を放った。矢は分裂した魔物の片方に命中。大きな白い爆発を起こして一部分を消滅させ、そこでくっつこうとしていた魔物がくっつくのを諦め、両者ともに倒れ始めた。


「ディバインスラスト!」


 ルシアが自らの体に黄金色の魔力をまとった。その状態で剣を突き出すと、ルシアが一直線に倒れかけの片方の魔物に向かって突進。


 ああ、この技も見た事がある。私もガ・リグレで参考にさせてもらった、勇者アルディスのとっておきの必殺技だ。

 剣を構えた状態で自らを弾丸として突進させ、敵を突き刺す技である。


 ルシアによってただでさえ分断されていた魔物の体が、更に分断された。更にルシアは、一度通り過ぎると戻って来て分断されたもう一方の魔物の体を突き抜けた。


「闇夜・崩星(あんやほうせい)」


 私は残った魔物の体に向かい、ブラックホールを放った。放たれたブラックホールは複数で、分断された魔物に襲い掛かっていく。

 ブラックホールによって、魔物の体が闇に吸い込まれて消え去った。他の細かい個体は、ルシアとトワが攻撃してやっつけている。


 私は最後に残っている大きめの魔物の個体に向かい、駆け出した。そして破軍滅珠の闇の剣を振りかぶる。


「……とどめ」


 私は大きな魔物の個体に向かい、闇の剣を振り抜いた。剣に斬られると同時に、魔物が闇の剣の中へと吸い込まれて行く。再生は勿論間に合わない。間に合わせない。剣から逃れて僅かに残っている魔物の欠片も斬りつけて、欠片も残さない。


 私とは再生の仕方が少し違うけど、私も『再生』のスキルを持っているので分かる。肉片を残したら、そこからまた再生してしまう。だから、徹底的に潰す。


 やがて魔物は肉片すら残さずに消え去った。


 私達の勝利だ。


「はぁ、はぁ……」


 ルシアは息を切らしてその場に膝をついた。無茶な戦い方をしたから、余計に疲れてしまったのだろう。私の言う通りにしておけば、ここまで消耗していないと思う。


 一方で私は念のため、周囲を見渡して魔物のつぶし残しがないのか確認する。

 その中で、トワが弓を構えているのを見た。どこかにまだ、魔物が残っていたのだろうか。

 弓を構えたトワが、矢をその指から離す。放たれた矢は真っすぐに対象に向かっていき、そして対象の胸を貫いた。


 トワが放った矢が貫いたのは、座り込んでいるルシアの胸だった。


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