↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/71

勇者の剣


 私達は、崩れた教会の瓦礫に埋まった。でも下敷きにはなっていない。

 私が作り出した魔法の壁が、私達を囲んで瓦礫から守っている。


 聖鐘・護光──。


 ゲームの攻撃を防ぐ魔法の壁を想像したら、再現できた。

 光の壁は重たそうな瓦礫を防ぎ、私達が生き延びる事の出来る空間を作っている。その隙に、取り出した破軍滅珠で別の魔法を発動させる。


「闇夜・冥界黒刃」


 破軍滅珠から、黒い剣が伸びた。その剣で、私達にのしかかろうとする瓦礫を斬りつけた。

 振り抜いた剣は一瞬にして瓦礫を吹き飛ばした。私達に乗りかかろうとした瓦礫を振り払う事に成功。

 私は光の壁を解き、瓦礫で埋もれた教会の中から外へと飛び出す。

 外へ出るとそこには勿論巨大な魔物がいて、こちらを見つめていた。


「子供達はそこにいた方がいい。リリエが守ってあげて」

「お任せください」

「あいつを倒すんでしょ?あたしも手伝うわ」

「私にも手伝わせてくれ!先程は驚いて後れをとってしまったが、もう大丈夫だ!」


 私の後を追うように、トワとルシアも飛び出してきた。

 トワはともかくとして、ルシアはまともな武器を持っていない。あの魔物と戦うのに素手じゃ無理だろう。


「ルシアも下にいて」

「私も戦う!誰にも……私の家族を傷つけさせはしない!」


 そう言ってルシアが手を掲げると、ルシアの手に剣が出現した。

 長く太めの剣で、日の光に反射してか美しく輝くように見える。派手さはないけどとてもキレイな刀身で、それ自体が宝石のよう。


 その剣の形と、美しさ。それは勇者アルディスがゲームで愛用していた剣そのものだ。同時に、ルシアの身体から金色の光が発せられた。とても神聖で、眩い力。私の魔力噴出と同じように、何かのスキルが発動したのだと思う。

 ルシアにしかない力……スキル『勇者』と言った所だろうか。


 昨日感じた気配とは桁違いの力で、今の姿を見て改めて思った。

 ルシアは本当に、勇者の血を引く者なのだと。

 今の姿を見るとカッコ良すぎて、昨日よりも更に握手したくなってしまった。でもそれは先程手を引いて走ったので、したという事にして我慢しよう。


「コレが、勇者の力……!」


 トワも今のルシアの姿を見て、目を見張っている。


「行くぞ、化け物!」


 剣を構えたルシアが、魔物に向かって一直線に駆け出した。

 向かい来るルシアに向かい、魔物が大きな右腕を構える。そしてルシアに向かって突きだし、強力なパンチを繰り出した。


「ルシア……!」


 パンチを避ければ、教会に向かって再び瓦礫が飛んでくる事になる。分かっているルシアは、回避行動を取らなかった。

 剣を構えて自らも拳に向かっていくと、剣と魔物の巨大な右腕が衝突。すさまじい衝撃波が生まれ、大地が揺れた。


「はあああぁぁぁ!」


 ルシアは巨大な拳に対し、負けるどころか剣を振り抜いて拳を真っ二つに切り裂いて見せた。ルシアが繰り出した剣から生まれた斬撃は魔物の拳を真っ二つにしただけでは飽き足らず、そのまま腕を上がっていって魔物の腕を真っ二つに切り裂いて見せた。


『グガアアァァァァ!』


 叫び声をあげてバランスを崩す魔物。だけどすぐに斬り離された腕から筋肉の組織が伸びて来て、合体。ボコボコと膨れたかと思えば、先程よりも一回り大きな腕となって再生してみせた。

 再生した腕は、すぐさまルシアに向かって第二撃を繰り出して来た。

 巨大化したと言うのに、先程よりも速く、当然威力は増している。


「ぐっ!?」


 再び避ける訳にはいかず、ルシアがその拳を受け止めている。今回は振り抜く事が出来ず、せめぎ合っている状態だ。

 そこに私が参戦した。ルシアが受け止めている魔物の腕に飛び乗ると、腕を駆けあがって魔物の顔面に迫る。


「……」


 魔物の目が、私を見つめている。迫り来る私に、もう片方の手が伸びて来た。まるで身体に止まった蚊でも叩き殺すかのようにして平手が飛んで来るも、私は緩急をつけて攻撃を回避。

 そのまま駆けあがって魔物の顔面を射程に捉えると、その首に向かって闇の剣を振り抜いた。首は思ったよりも柔らかく、簡単に魔物の首を跳ね飛ばす事に成功した。

 しかし先程のルシアの攻撃と同じく、すぐに体側と首側がひかれあうように組織が伸びあい、互いを引き寄せようとする。

 その組織を、私が再び闇の剣で斬った。更にもう一度伸びるも、また斬る。そうしていく内に、やがて互いの組織が届かなくなって首は落下を始めた。

 その代わり、首とくっつく予定だった組織が触手となって、私に襲い掛かって来た。何本もの触手が私を絡めようとしてくるので、私は闇の剣で撃退しつつ魔物の肩から飛び降りる。

 そこに飛んで来た一本の矢が、一本の触手に突き刺さった。そして爆ぜて白色の光の爆発をおこし、魔物の胸から上を消し飛ばして見せた。


「ふんっ」


 矢を放ったのはトワだ。魔物の足元で弓を構え、どうだと言わんばかりに誇らしげに笑っている。


 私とトワの攻撃を受け、魔物がバランスを崩した。後ろに向かって勢いよく倒れて行くと、尻餅をついてその場に仰向けになる。

 その際に魔物の質量によって、やはり大地が揺れ動いた。爆発音にも似た凄い音が響く。加えて周囲の建物が魔物の長い手に巻き込まれていくつか倒された。確かこの辺り一帯は買収されて、住んでいるのは教会の人達だけ。だから崩れた建物に人は住んでいないはずだ。


「ヒメノさん!助かった、ありがとう!」


 地面に着地した私の隣に、やや息を切らしながらルシアが並んで立った。そしてお礼を言われた。照れる。


「──魔物が倒れたぞ!突撃して攻撃をしかけろ!」


 そこへ、兵士達がやって来た。

 さすがにこんな巨大な魔物が出現して暴れ回っていたら、駆け付けるのが早い。だけど駆け付けた兵士達のレベルは高くて20台で、人数は10名程。レベル60代の魔物と戦うにしてはあまりにも心もとない戦力だ。


 そして一見すると首から上を失って死んだように見える魔物だけど、生きている。


「うおおおぉ!」


 魔物に兵士が斬りかかった。兵士の剣は魔物の太い右腕に突き刺さり、更には後方の兵士が放った矢が同じように右腕に刺さる。

 そこへ消し飛ばされた首から触手が伸びて来て、兵士達に襲い掛かった。


「なんだ!?この、はなせ──」


 触手に身体を巻き取られた兵士の身体が、触手によって握りつぶされた。鎧をまとっていた兵士の体が、まるでトマトのように簡単に潰されて血しぶきをあげている。

 仲間を助けるために触手に斬りかかった別の兵士も、触手に足を巻き取られて足を握りつぶされてから空から降って来た。


「ぐああああぁぁぁ!」


 こちらは生きてはいるけど、片足を失った状態だ。兵士達は怪我をした兵士を囲んで構えるも、魔物の相手にはならない。


「トワ」

「はいはい」


 見殺しにする訳にはいかない。私は遠距離攻撃が出来るトワに促すと、トワが空に向かって弓を構えた。


「この天穿(てんせん)のトワ様が、とっておきの攻撃を見せてあげる。刮目しなさい」


 トワが魔力を開放した。魔力によってトワが手に持つ弓が光り輝き、強烈な魔法が放たれようとしている事が分かる。


「ヘヴンフォール」


 トワが矢から手を離し、矢を放った。矢は一筋の光となって空へと消えていく。一拍置いて、空に消えていったトワの矢が降って来て、一筋の光となって触手に降り注いだ。強力な光の柱のようになった矢が、一瞬にして魔物の触手を消し去ってしまう。更に複数の光の柱が降り注ぎ、魔物の触手が浄化されて行く。

 やがて兵士達に襲い掛かる触手はいなくなった。しかし触手の再生はすぐに始まっている。すぐに逃げ出すという選択肢をとらなければ、兵士達は再び触手に襲われてしまうだろう。


「退け!退けー!」


 私の心配をよそに、兵士達はその場からすぐに撤退を始めた。これで心置きなく戦える。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。