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かわいい服


 そのまさかだった。


 私はメイドさんが持っている服を着せられていく。まず、黒色の下着を装着させられた。レースのついた、可愛い下着だ。でもちょっと大人っぽいと言うか、セクシーすぎる気がする。こんな下着、今よりもうちょっと大人だった元の世界でも着た事がない。

 その上から服を着る。黒色のワンピースなんだけど、ふりふりがついていてゴスロリっぽいデザインだ。前側が弧を描くように少しだけ短くなっており、露出した足にはニーハイを着用。靴も履かされたんだけど、ブーツだった。


 なんかこう……マニアっぽい服装だ。可愛いけどね。


 しかしながら、脱衣所の姿見の前で自分の姿を見て改めて思う。凄い美人さんだ。幼いながらもスタイルが良く、お風呂上りで体が赤みを帯びていて、色っぽい。メイドさんに手入れしてもらったおかげか、髪の毛は更にツヤツヤでキレイ。顔はカミに指摘された通り、無表情。自分でどうにか表情を作ろうとしても、変化はしない。でもそれがまたミステリアスな雰囲気を醸し出していて、イイ。気がする。

 どこからどう見ても、美少女である。

 姿見の前でクルリと回転して見る。いい具合にスカートがめくれ、下着が見えそうで見えないラインまで浮いた。


『ゴフッ!』


 すると背後でメイドさんが噴き出す声が聞こえた。声に反応して振り返るも、メイドさんは何事も無かったかのように済ました表情で前を向いている。

 なんだったのだろう。


『私に付いて来て下さい』


 怪しく思っていると、メイドさんが誤魔化すようにそう言って来た。

 私は頷いて、メイドさんと一緒にお風呂を出て行く。更にメイドさんは、こっちだと指さして歩き始める。私もその後に続いて歩いて行く。

 上層階へと続く階段を、3度程上がった。階層ごとに見張りの兵士がいるけど、メイドさんが顔パスなのかスルー。更に廊下を歩いて行って、木の扉の前で立ち止まった。

 扉を開いて中に入ると、そこは客室っぽかった。ベッドがあり、タンスがあって窓がある。広さは7畳くらい。更に別の部屋への扉があるけど、その奥にはトイレとお風呂があった。

 ちなみにトイレは、白色の陶器で出来ている。ただ、形はただの円形だ。水道設備もちゃんとしているようだ。トイレには管が繋がっていて、それが汚水として下水に流れて行く仕組みが出来上がっている。

 今までは野グソに野シャンだったからね。魔法で清潔は保っていたけど、こうして文明的で衛生的な設備を見ると安心するよ。


 おっと、口が滑った。私のような美少女がうんこやおしっこなんてする訳ないでしょ。今のは聞かなかったことにしてほしい。


「これは見違えた……どこの貴族の娘が来たのかと思ったぞ」


 部屋内を探索していたら、そこにゼルブロイドがやって来た。

 私達が元居た世界の言葉で、そう褒められた。


『──』


 やってきたゼルブロイドに対し、メイドさんが何か文句を言っている。魔族の言葉ではなく、この世界の人の言葉だったので意味が分からない。それを聞いたゼルブロイドはたじたじで、何やら謝罪したような仕草を見せてから私の方を改めて見て来る。


「なに?」

「いや、ノックをしろと怒られてしまった」


 確かに、女性がいる部屋にノックもせずに入って来るのはマナー違反だ。ナイスな指摘だ、メイドさん。


「服は気に入ってもらえたか?」

「……裸よりは良い」

「なら、よかった。さて、この世界で暮らしていくに当たって、君には早急にやってもらわなければいけない事がある」

「なに?」


 尋ねると、ゼルブロイドが話すよりも見た方が早いと言った様子で、部屋の扉を開いた。そこに丁度良く、別のメイドさんが数名入って来る。彼女達の手には何冊かの本が抱えられていて、その本達が机の上に置かれた。


「まずは人間語を覚えてもらう。魔族語は使えるな?」

「……」


 戸惑いつつも頷く。


「ならばこのメイドを君専属のメイドとする。身の回りの世話をしてもらいながら、早急に言葉を覚えてくれ。この本は全て、自由に使ってもらって構わない。魔族が人語を覚えるための資料だ。それから、この世界の事も載っている本がある。この世界の事を知るには必要だろう?読んで、世界の事を学んでくれ」


 私の専属メイドにすると宣言されたのは、赤髪の背の大きなメイドさんだ。こんな美人さんを専属メイド?どれだけ贅沢なんだ。

 そして言葉を教えてくれる?是非とも眼鏡をかけた上でタイトスカートをはき、女教師スタイルで言葉以外の事も色々と教えていただきたいね。


 何を隠そう私、キレイな女の子に目が無いのだ。前の世界ではテレビとかネットで可愛いアイドルや女の子のイラストを見て目の保養にする趣味があったくらいに。


「それからこの部屋は自由に使ってくれ。食事も自由にとってもらって構わない。身の回りの世話はメイド達がやってくれるので、なんでも言いつけてくれ」


 身の回りの世話は、メイドさんがなんでもやってくれる?この美人揃いのメイドさんが、なんでも?リリエさんだけでも贅沢だというのに、ハーレムじゃないか。


『おっと。そういえば魔族語は使えるんだったな。ならこっちの言葉で喋った方が良かったか。えーっと、今ヒメノさんに、君が彼女のお世話をすると紹介した。君も挨拶をしなさい』

『はい。申し遅れました。ご主人様からヒメノ様のお世話をするよう仰せつかった、リリエ・リリールンと申します。よろしくお願いいたします』


 魔族の言葉でそう挨拶をされ、私は頷いて応える。


『……ヒメノ』


 一応、頷きながらこちらも短く自己紹介をしておいた。もう知っているみたいだし、必要ないかもだけど一応ね。


『ヒメノさんは故郷を盗賊に襲われ、長年森の中を彷徨い歩いていたせいで世界の事をあまり知らない。時々おかしな事を言うかもしれないが、丁寧に教えてやってくれ』


 なんだ、その設定。

 まぁガ・リグレで7年間サバイバル生活をしていたから外の世界を知らないと説明されるより、そういう事にしておいた方がいいか。


『大変な目に合われたのですね。心得ました』

『とりあえず、今日は休みでよい。ヒメノさんにまともな食事をとらせてあげたいから、今日は豪華な食事を出してやってくれ』

『承知いたしました。シェフに伝えておきます』


 豪華な食事とは、今からお腹が唸る。


『──』


 本を運んできてくれたメイドさん達は、私とゼルブロイドとリリエさんが話している間に、持ってきた本を棚の中にしまってくれていた。本をしまった所でゼルブロイドが彼女達に人間の言葉で声をかけると、彼女達は私に頭を下げてから部屋を去っていく。


『明日から忙しくなる。今日はゆっくりと休め』

『……ゼルブロイド』


 私はそこで、ストレージの中にしまったままの存在を切り出す事にした。


『なんだ?ちなみに私の事は、ゼルで良い』

『じゃあ、ゼル』

『呼び捨てされるのは久しぶりだ……別に良いけどな』


 領主という立場の人間に、呼び捨てはまずかったかと言ってから思った。でももう遅い。本人も良いと言っているから、別にいいか。


『実は私、魔物使いというスキルを持っている。ストレージの中に、仲の良い魔物が入っている。その魔物を出して、自由に城内を散歩出来るようにしたい』

『ストレージは分かるが……魔物使いとはなんだ?聞いた事がないぞ。魔物を使役出来るとでも言うのか?』

『そう。出していい?』

『……分かった。やってみてくれ』


 許可を得た私は、ステータス画面を操作してハクをストレージから出す選択をした。

 すると、私の目の前に2メートル程の大きさの白い狼がどこからともなく出現した。


『バウ!』

『──ダイタルフォス!』


 出現したハクが、一吠えした。

 その姿を見たゼルが、殺気立ってどこからともなく剣を取り出す。剣は、私と同じ。ストレージから取り出した物だ。


 剣を構えようとしたその手を、私は素早く動いて掴んでやめさせた。


『大丈夫』

『し、しかしダイタルフォスは、狂暴な魔物だ』

『私は魔物使いで、ハクと契約している。とても良い子。だから大丈夫』


 ゼルの腕を掴みつつ、もう片方の手をハクに伸ばすと、ハクが頭を擦り付けてなでなでをねだって来た。すぐに出してあげると言ったけど、ちょっと長くなっちゃってハクには悪い事をした。


『本当に、魔物を手懐けているのか?それも、あのダイタルフォスを』

『バウ!』


 ハクが無害をアピールするように、お座りをしてゼルに吠えて答える。

 私が何も言わなくてもこの状況を理解してくれているようだ。本当に頭の良い子だと思う。


『……確かに無害そうではありますが、いきなりダイタルフォスを目の当たりにしたら、皆がパニックを起こしてしまうでしょうね』

『う、うむ。やはり城内を自由にというのは難しいな』

『クゥン……』


 ハクが、悲しそうに高い声で鳴いた。

 そんなハクに向かい、恐る恐ると言った様子でリリエさんが手を伸ばす。手はハクの身体を優しくなで、それに反応するようにハクが尻尾を振ってリリエさんに顔を向けた。


『い、いきなりは難しいかもしれませんが、少しずつ皆に周知していけば良いのではないでしょうか。それと、無害をアピールするために首輪をつけておくのも良いかもしれません』

『……本気で言っているのか?ダイタルフォスだぞ?』

『ゼルブロイド様も、撫でてみてください』

『……』


 リリエさんに促されたゼルが、ハクの頭に恐る恐る手を伸ばす。やがてその手がハクの頭に触れて、頭を撫でた。

 ハクは気持ち良さそうに手に頭を擦り、とても人懐っこい様子を見せる。


『……し、仕方ないな。良いだろう。少しずつ皆に周知して、パニックを起こさないと言う条件を守るなら、自由にして良い。ただし、自由に出来るのは城内でだけだ。基本的にヒメノさんやメイド達が傍にいる事という条件もつけさせてもらう。この条件を守れるか?』

『バウ!』


 通じたのか通じないのか、ハクが元気に吠えて答えた。

 

 こうしてハクの城内散歩の許可を得る事が出来た。条件はあるけど、問題ない。ハクは頭が良く、可愛いからすぐに皆がその存在を認めてくれるだろう。


 ちなみにその日のご飯は、なんかめちゃくちゃ柔らかいステーキだった。主食のパンも今まで食べた事がないくらいに柔らかく、なめらかで、感動した。

 この世界には、まだまだ美味しい物がたくさんある。この先も美味しい物をたくさん食べて生きていきたいと思う。


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