事後
*
ミンは、深く眠っているクスナの服を直しはじめた。
侍女は泣きながら、一緒に服を直す。
「ミン様、おいたわしい。こんなことのために……」
それを聞いて、ミンは複雑な気持ちになる。
「泣かないで。私もそんなに悪くなかったから」
ミンの言葉にガイルはうんざり気味に耳を塞ぐ。
意識のないクスナをちらりと見る。
魔導師という肩書きから貧弱でガリガリな男を想像していたのだが、なかなかたくましい体つきだ。
「男好きじゃなかったのか」
ガイルは思わずそんなことをつぶやいていた。
「そうでもなさそうよ」
ミンには、ガイルのつぶやきが聞こえていた。
「途中でキョウの名前を呼んでたわ。そういう関係なのかも」
「……は?」
ガイルは乾いた笑いを浮かべた。
その表情に怒りと嫉妬があったことにミンは気づかなかった。
「よかったじゃない。もしそうなら、ファウのこと、まだあきらめなくてもいいかもよ」
姉のミンは、弟のガイルが幼馴染の異性ファウにほのかに恋心を抱いていると思っていた。
「だから! ファウにそんな感情はないっていってるだろ!」
珍しくガイルは声を荒げた。
「ごめん」
ミンは話を変える。
「でも、彼には恋人か奥さんがいるみたい」
「なんで、わかるんだ?」
ミンは床からロケットペンダントを拾う。それを開いた状態にしガイルに見せた。
中には栗色の髪の女性の写真。
「こんなの持ってたくらいだから、たぶんそういうことでしょう」
ミンは服を直したクスナの首にペンダントをかけてやる。
「恋人の写真持ってる男とはする気になれないからね」
そんなことを言いながら、ペンダントを服の中に戻す。その時、長老に絞められた首の痣も魔法で治癒させる。
「まったく男が好きなのか、女が好きなのかよくわからない人だわ」
ミンがそうつぶやくと、侍女は激しく泣き出した。
「そ、そんな訳のわからない男にミン様は……」




