うやむや
「そうだよ、なんでこの男と……?」
別にガイルは知りたいわけではなかったが、つい口に出ていた。
「彼は魔導師よ。邪眼で忘れさせたけどいつか今日のことを思い出すわ。長老に殺されかけたなんてなったら知ったら……。でも、私と体を重ねたことを思い出せばうやむやにできるでしょ? 『密かに魔導師様をお慕い申しておりました』って」
そんな上手くいくか?とガイルは思った。
「もしも、今日のことを思い出して、二回目三回目を迫ってきたらどうされるんです?」
侍女はミンの身を案じての発言だったが。
だがミンは笑って答える。
「望むところよ」
侍女はますます泣いた。
ガイルはうんざりしながら部屋から出た。
* * *
レファイ家の一室。
「俺、誰かに殴られた」
ダーリャ・レファイがそんなことをファウに打ち明けた。
ファウの表情が強張る。
泉の祈祷に出かけたクスナとダーリャが二人揃って熱中症で倒れてたという。
その二人はラテーシア家の家の者に送られ帰ってきたわけだが……
さすがにファウも二人同時に熱中症で倒れるなんて、おかしな話だと思っていた。
「まだ痛い。誰かに殴られて、気づいたらラテーシアの家にいた。なんか殺伐としてた。迂闊なこと喋れば何されるかってヒヤヒヤだったんだ。導師様は覚えてないそうだし、たぶんミンの邪眼だろうけど。どうすれば正解だったか……」
言い終えてから、ダーリャはほっと息を吐いた。ようやく一息つけた、といった心地だった。
ファウは神妙な顔になる。
「何があったか覚えてないの?」
ファウの質問に、ダーリャは首を振る。
「導師様に聞いてみましょう」
ファウは部屋にクスナを呼ぼうとしたが、ダーリャが止めた。
「邪眼って忘れてた記憶を思い出すと、自殺する暗示がかけられてたりとか、そういうことってない?」




